劇場公開日 2008年12月20日

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「ラッセル・クロウさん面白いよ。」ワールド・オブ・ライズ いきいきさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ラッセル・クロウさん面白いよ。

2008年12月13日

怖い

興奮



 到達しようとする目的は同じ筈なのに、どこかちぐはぐで、騙され、
 足を引っ張られるお2人さんが、大胆な大嘘を仕掛ける。

 中東に潜伏しているロジャー・フェリス(レオナルド・ディカプリオ)は
 CIAでも敏腕のスパイ。
 戦場で常に死と隣り合わせの彼の任務を決めるのは、
 遠く離れた安全な場所で命令を下す
 ベテラン局員エド・ホフマン(ラッセル・クロウ)。
 彼らの目的はテロ組織のリーダーである
 アル・サリーム(アロン・アブトゥブール)を捕まえること。
 イラクでの任務で重傷を負ったロジャーはヨルダンに潜入し、
 ヨルダン情報局長官のハニ・サラーム(マーク・ストロング)の協力を得て
 独自に作戦を遂行しようとする。

 巨匠リドリー・スコット監督が、
 レオナルド・ディカプリオとラッセル・クロウという2大スターを起用して
 イラク、ヨルダン、シリアなどを舞台に米国のテロとの闘いを描く、
 と言っても、考えさせられる要素はあるとしても、
 中東情勢に詳しい方がいいのは確かだろうが、
 エンターテイメント作品として仕上げてある。

 原題は“BODY OF LIES”で、邦題はワールド・オブ・ライズ。
“嘘”をテーマにした作品で、誰を信じればいいのか、
 敵も味方もない騙しあいに、情報を漏らさないためには手段を選ばず、
 現実でもそうなのかと、現実はそれ以上なのかと少し怖くなり、
 ハイテクを駆使して情報を頼りにしているCIAが
 アナログな繋がりを持つテロ組織に、
 大きな嘘を仕掛ける部分も、終盤の展開もある程度予想は出来たとしても、
 十分楽しめる。あの展開は、どのあたりで来るのかは悩んだだろうな。

 ただどうかなと思うのは、大きな嘘を仕掛ける前までは、
 ロジャーとエドの高度な頭脳戦を感じさせるような、嘘の応酬ではなく、
 ただ足の引っ張り合いをしているように見え、
 そんなんでよく今までやってこれたなと思い、
 どうしても抑えられない衝動というほどではなかった
 ロジャーの恋愛ドラマには、
 ロジャーのような性格の男が、仕事の出来る男が、自分の仕事の内容を、
 相手のことを考えたら、それはないんじゃないのかと、
 先を少し分からせてしまうなら、同僚でよかったんじゃないかと、
 思わないでもない。

 レオナルド・ディカプリオの眉間に力の入った
 泥臭く自らの手を汚す熱い演技も、
 子供とじゃれあっている様子もいいが、
 食事をしながら、子供をあやし、悪態をつかれながら、
 安全な場所から指示を出し、
 米国を体現しているような恰幅のいいラッセル・クロウの、
 指示の出し方にも、セリフにも、人柄のよさを感じさせる、
 感じさせようとしているレオ様に感情移入していると、
 カチンとくるはずなのに、何故かイチイチ面白くて、
 中年の余裕の演技にラッセル・クロウさん流石ですと、
 楽しくて仕方なかった。

 ハイテクとアナログ。飴と鞭。オイルマネー、グアンタナモ。

 2人の対比も、CIAとテロ組織の対比も、それなりに面白く、
 迫力のある映像も楽しめて、いや楽しいだけじゃなく、少し考えて、
 でも、正月向きじゃないよなぁ。

いきいき