ゼア・ウィル・ビー・ブラッドのレビュー・感想・評価
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主人公と結婚したいよ
欲望にまみれた男の人生??私には、ダニエルは最期までまともな、普通の父親に見えたよ。自分の息子が好き過ぎて、自分の息子を信奉し過ぎて。だから息子以外の他人は死のうがクソどうでもいいってだけで。最期に、幸せになった息子をわざと突き放してから 陰で別離の寂しさに苦しむ彼を見て自分は泣きじゃくったよ。ダニエルは、ごく普通の父親。
何を狂信するか
エンドロールに、ロバートアルトマンに捧ぐ
また、carbon neutral production
100% carbon emission offset とある。2007年の作品、ガツガツとアメリカが石油採掘しいまもと栄えるオイル大企業が自然破壊、人権侵害しながら大儲けしていく時代をゴリゴリに描いた作品ならでは、というアンダーソン作品。
やはり一人一人のキャラクターが突き出ていてよい。
石油掘削により得ることができる利益か
親族か
または疑似親族か
腹心の仕事仲間か
神か
神に帰依するフリの自分か
なにを狂信して拠り所にして罪を重ねていくのか。人は生きる中で罪を犯し重ね反省し赦しをこいたりさらに罪を重ねていくよ。
アンダーソン監督=この後の作品だがザマスターということが頭によぎり、サイコパスのようなダニエルとイーライの闘いがすごいのだが、結局石油、金儲け、今のアメリカ的資本主義の型についてより、宗教神の啓示と自分の関係、宗教への盲信と二世問題、詳しいことは言わずわずかな情報料を現金でせしめたポールは宗教二世というか家庭内宗教盲信活動が逃れるためわずかな金を逃走資金としてせしめたのではないか。ダニエルとイーライの讒言対決。
hwという子どもをめぐる葛藤。
なんでも自分独り占め誰も信じないダニエル、最後の自宅のボーリングレーンでの顔芸、、、なかなかすごい迫力と、クソぶり。
長いのですが、人のダメなところをこれでもかと見せてくれる、そしてhwが小さな時も大人になっても、間違いというときには強大なダニエルに立ち向かい殴りかかる様が、人間の良いところを思い出させてくれる。
世界観が分からなかった
全編通して、高尚過ぎるのか、伝わらず。長い割に史実でもないし、エンタメ性もない。主人公は金のために石油を掘るが愛する妻や家族がいるわけでもなく、金を得て、何がしたいのだろう。ただ単に、相手を打ち負かす、平伏させることに執念を燃やすが、結局何がしたいのだろうか分からず、全く共感はできない。ポール・ダノは不気味さが際立つ。苦手な映画でした。
〈怪物〉になることでしか、生きれなかったプレインヴュー
『スカーフェイス』(1983)も力任せでのしあがった男だけど、こっちのプレインヴューというのは、それより哀しいものを感じる。言うならば"喪失感から逃けることしかできない男"。それは三人を喪ったという"事実(一人は殺害だけど)"の対処からも見える。
ただ映画が素晴らしいのは、そんな欠点を抱えた男をあくまで"人間"らしくしたこと。下手したら人の心を持たない人間になりかねないのを、この監督はダニエルの中に巣食う"弱さ"を見ようとしている。突然死んだ仕事仲間、義理の息子のH・W、そして義理の弟・ヘンリー…彼らを"鏡"の役にして、プレインヴューが見なきゃならないものが何かを照らしている。
だけどプレインヴューは結局、孤独に埋もれる道を選んだ。疑心暗鬼に救いを求めて、すべての愛から目を瞑って、挙げ句大事な息子にさえ罵声を浴びせて、縁すら切った。そのあとの階段の隅で悔やむ場面は哀しかったし、そのやり取りを言わなきゃならない通訳の人も不運です。ただ不思議とその人からは苦笑じみたものを感じた(結構貴重な可笑しさです)。
イーライには徹底的な屈辱感を与えたあとで、殺害するという形で、地獄巡りに止めを刺した。イーライという同族嫌悪の象徴たる存在すらも、呑み干した彼の末路はまったくもって分からないけど、少なくともヘンリー同様、大地に埋もれて消えたと見る。まあ石油の温床地に、血と肉体とその魂が肥料みたいになれるんだったら、きっと本望だと思う(自分は御免被りたいが)。
とにかく体力必須なのと、非常に邪悪な結末なので、見る人を選ぶでしょうが、不思議と不快感は無いです。音楽も素晴らしいし、上映時間も気にならない(確か2時間38分)。間違いなく映画ファンなら見るべき名画の一本ですね。
あんなバケモノ役者に挑んだポール・ダノにもご注目を(笑)。
まあまあ良かった
割りと良かった、 まあまあ良かった、 くらいでしょうか。 面白い人物描写やシーンも多いものの、 退屈なシーンが随所に挿入されているため、 台無しになっている感じです。 特に序盤、 主人公が登場するまでのシーンは必要なかったはずです。 ほかにも、 なぜこんな無駄なシーンが延々と流れるのか、 という場面も多く、 せっかくの映画を薄めすぎて、 まずくしてしまっていました。 最後に主人公が牧師を殺すのも納得いきませんでした。 そういうせいかくではなかったはずなのですが。 作者としては、 [落ち] がほしかったのでしょうけど、 それは人格をゆがめるほど大事なことではないはずです。
好き嫌いがありそうだが、オススメ映画!
この映画、スゴイか、スゴクないか、と言われると、「カナリ、スゴイ!!」。でも、面白いか、面白くないか、と言われると、・・・「面白くない」 かなぁ。
ミドコロは、ハッキリしています。
それは、ダニエル・デイ=ルイス演じる「石油屋」。この「石油屋」が、どれだけ “人間らしい行動をとっているかというのが、最大のミドコロなんです。
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』 では、それが、かなり エグく描かれていて、ソコがスゴイ。
ってか、ヒドイ!ってか、悪魔!
人間てのは、基本的には、『理性が欲望をコントロールしている生き物』 だと思うンだけど、
それが、この「石油屋」は違って、
『欲望のために、理性を働かせている生き物』 なんです。つまり、「石油屋」は、一見、人良さそうなんですが、内心は常に、“虎視眈々”と狙っているのです。
欲望の強さと、時折みせる理性とのアンバランスさが、まさに絶妙!!人間の業の深さが、イヤらしい程に出ています。
それが、頂点を迎えるのが、クライマックスです。
クライマックスのボーリング場で繰り広げられる惨劇は、まさに映画至上に残る名シーン!!
人間って、マジで怖い生き物だな。 と、思わせてくれる、そんな映画でした。好き嫌いはあるでしょうが、私はオススメです。
濃いい。。。
主人公は石油採掘に取り憑かれた男で、ビジネスは成功するものの、その代償に自ら全てを犠牲にしていく感じ。
胡散臭い宗教家との駆け引きが何度も繰り返され、最後は"Finished"で突然映画終了。
偽弟・偽息子との間に何らかの絆を求めている面もあるものの、偽息子との決別で人生のエンディングを寂しく描くのではなく、宗教家との激しい争いを最後に持ってくることで主人公の自己中心・人間嫌い的な性格をより強烈に描いている。
主人公と宗教家が強烈過ぎて、印象は良くないが何か残る作品。
ダニエル・デイ=ルイスのアカデミー賞は納得。
ポール・ダノののっぺりした顔もやっぱり強烈。
とにかく濃いい作品。。。
この映画には悪魔が潜んでいる…
ダニエル・デイ=ルイスの世紀の名演が観られる本作。
石油によって富と名声を得た男と新興宗教の若き教祖の闘い、そして彼らの没落を描いています。
この映画に、もはや善も悪も存在しません。
ラストは、人は富という魔物には勝てない、と言っているように感じました。
それはまるで、神に悪魔が勝利するかのような結末です。
信仰の厚い欧米の人たちには、特に衝撃的なエンディングでしょう。
下手なホラーよりよっぽど恐ろしい、人間の本質をえぐった名作です。
いろいろな意味であり得ない映画
主人公が愛も情けもなく、狡猾で貪欲なパワーを放電させるのは、ダニエル&PTAの映画だから当然予想通り。でも、やっぱり釘付けになる。これだけ凄い男の一代記の結末が小物を罵倒し尽くして撲殺して終わりだなんて…あり得ない。あり得ないが故にPTAか。
ノーベル映画賞進呈!
僕は、この映画の主人公はポール・ダノ演じる牧師イーサンだと思います。
牧師と石油屋。聖と俗の両極端にみえる二人は、口八丁で世の中を渡り歩くという意味で同じアナのむじなです。
他人を出し抜いて生きてきた石油屋ダニエルは、牧師イーサンに自分と似たうさん臭さを感じます。
警戒する石油屋と対等にわたりあっていこうとするイ−サン。このふたりの交渉に対する構えのちがいは、ふたりの絶望の度合がそのまま反映された結果のようです。
石油屋は猜疑心のかたまりで、誰も信用できず、自分すら疑うような男です。対して、イーサンは、牧師という役目がまさに自分にうってつけだと思っているようです。
「人生とはチョロいもんだ」
イーサンは心のどっかでそんな気分をかかえた自惚れ屋なのです。
イーサンは聖職者でありながら、ひどく俗っぽい男です。彼がダニエルに興味があるのは、ダニエルが金持ちだからです。神のご加護を説き、ダニエルから財産のいくばくかを教会に寄付がイーサンの魂胆です。イーサンにとって、ダニエルは「金づる」に他なりません。
「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」は、裸一貫でのし上がった石油屋の半生記でもありますが、同時に金に魅入られた不埒な牧師の悲惨な顛末記でもあります。
ダニエル・デイ=ルイスの鬼演技が話題の本作ですが、牧師イーサン役をこなしたのポール・ダノにも僕は、手が痛くなるほどの拍手を送りたいと思います。
あんぐり
マイ・レフト・フットのダニエル・デイ・ルイス主演のこの映画ですが、正直、ラストに唖然としました。あんぐりと開いた口がふさがらないまま、劇場をあとにしました。
3時間弱の映画ですが、ダニエル・ディ・ルイスの演技に圧倒されつつ、ぐいぐいとエンディングまで持ってかれます。一言でいうと傑作には違いないのですが、私にとってはものすごくショッキングな映画でした。(何度も言いますが・・・)たぶん、多くの人にとってショッキングな映画だと思います。事前に、観る人を選ぶ映画という情報は得ていたので、ある程度予測はしていましたが、万人受けはしませんね。
内容はアメリカの石油王の成功までの怒涛の人生を描いたもので、己の成功のために、あらゆるものを犠牲にして、突き進んでいきます。映画好きの作家志望の友人C君と見に行ったのですが、タイトルのBloodには、あらゆる意味がかけられているんじゃないか、という結論に達しました。実際の噴出す「血」と、血縁の「血」、そしてキリスト教の中における宗教的な意味での「血」です。
主演のDaniel Day-Lewisは間違いなく素晴らしい演技で、ホラー映画とまでいえるくらいの恐ろしい演技を嬉々として演じていますが、オスカー受賞間違いないっす。昨年のForest Whitaker同様、ダントツの存在感です。共演のPaul Danoもなかなかいい演技でした。彼は2006年の名作Little miss sunshineで、色盲の兄役ででていましたね。
あと、音楽が、実に印象的で、最近の映画では音楽がすげぇと印象に残った唯一の映画です。冒頭の不協和音は、非常に不穏であり、胸をかきむしられるような不安感をあおられます。途中のとあるダイナミックな事件の最中の繰り返されるリズムは今でも耳に残っています。
どれをとっても、私にとって2007年最も強烈な怪作。間違いないっす。
ダニエルさん怖すぎるよ。
石油王?となって破滅していく男の人生、、、と聞くと、
すぐに大好きなJ・ディーンの映画「ジャイアンツ」の
ジェット・リンクを思い出します。
富豪ベネディクト家の使用人だった彼が、貰ったちっぽけな
土地から石油を掘り出し、一夜にして大富豪へ立場が逆転。
その、石油が一気に噴き出すシーン!!すごかったです。。
…と、思っていたらやっぱり!ロケ地が同じでした^^;
どっかで見たような景色だなーと思ってたらやっぱり(汗)
アメリカって…広いようで狭いような?不思議です。
で、今回もまたアカデミー賞をとってしまった靴職人(爆)
ダニエル・デイ=ルイスでしたが(劇中の役名もダニエル)
いや~スゴイ迫力!迫真の演技!彼のための映画でしたね。
これでとらなかったら(笑)履かないよ。ってほどでした^^;
だけど、この人が賞レースに出てくると、他の候補者は
イヤでしょうねぇ。だって絶対持ってかれちゃうんだもん。
あれだけ才能がありながら、本人は演技より靴作りに夢中、
たまに脚本がいいからと出てきてはアッサリと受賞☆って
…どうなのかしら^^; 本当の天才(天災?)がここにあり。
彼の演技がメインなんですが、そこに絡む神父イーライ役・
ポール・ダノもすごかった!この二人、性格がそっくり^^;
自身の欲のためには大いに他人を利用する鏡のような存在。
この子誰だろ?と思ってたら『リトル・ミス・サンシャイン』の
あの、変わり者のお兄ちゃん!だったんですねぇ。
あの時はぜんぜん喋らなかったのに~(爆)今回はスゴすぎ!
互いの狂気(?)がぶつかり合うさまは目を覆いたくなるほど。
かなり観応えがありました。でも…かなり気持ちは悪い~x
石油=黒い血。
ドクドクと溢れ出すその光景に、大地と人間の不思議な繋がり
が感じられます。その恩恵が私達に富と安らぎをもたらす反面、
奥底ではどこまでも溢れだす欲望にも火を点けてしまう。。。
秩序を無視してまで得たいもの。
どんなに頂点に君臨しても満足できる居場所はないんだろうな。
哀しい人間の性をあぶり出しているようでもありました。
彼の養子だった息子は、幼くして事故に遭いますが、
それがかえって彼を成長させましたね。彼には見えている。
父親と離れて(半ば捨てられて)暮らした日々が、彼を欲から
解き放ったのでしょうか。父親の哀れが引き立つラストでした。
とにかく怖い!(爆) 音楽からしてかなり怖いですので。
(引き際の大切さを学ぶ映画でもあります^^;ここだ!って…ね)
オイル、アメリカに流れる血
巻頭、金鉱堀りのシークエンスから生理的な痛みを伴うような映像。「ノーカントリー」もそうだったが、こちらの方が痛み持続する嫌な感じ。その後の物語の進行に伴い、痛みは個から全体へ、直接的なものから間接的なものへとシフトする。これを、暴力的な音で強力にサポートする攻撃的な音楽が印象的。
ダニエルの事業と状況の変化が様々なエピソードとして描かれる。土地の買収、事故、教会との確執、企業間競争、親子の断絶等等々、すべからくトラブルであり、ダニエルはそれを乗り越え、更に前進しなければなければならない。
地面から滲み出てくるねっとりとつややかなオイルと、掘削作業中の事故で流される血は混じり合い区別もつかず、掘り当てられた石油が噴出するのは歓喜すべき瞬間のはずだが、そのエネルギーによって一人息子は障害を負うことになる。事業の成功はダニエルに富と権力をもたらし、自我の肥大と同時に多くのものが失われて行く。
ほぼ同時代のテキサスを舞台にしたジョージ・スティーブンスの「ジャイアンツ」では、ジェームス・ディーンが成り上がりの石油王として登場し、巨万の富を得ても望むような幸せを得られない人物を演じていた。とはいえ、あの時代、石油はまだ富と栄光をもたらすものと位置づけられていたのだ。
しかし「ジャイアンツ」の50年前とは打って変わって、ベトナム、湾岸戦争から911を経た今日、ポール・トーマス・アンダーソンの石油には死と厄災の影が色濃い。ダニエル・デイ=ルイスがナビゲートするのは、オイルよって描かれたアメリカの現代史。結局のところ、アメリカという国体に流れているオイルという名の血は、この120年間アメリカ全土にどんな栄養を行き渡らせ、同時にどんな病を運び込んだのか。
俺は全てであり、全ては俺のものだとばかりに有無を言わせぬ迫力で押しまくる、アカデミー主演男優賞の栄誉に輝いたダニエル・デイ=ルイスのパワーが他を圧倒する。新興宗教の偏執狂的にエキセントリックな教祖ポール・ダノの不気味さも素晴らしく、この二人が要所でみせるガチンコ勝負からは最後まで目が離せない。20世紀初頭から説き起こし、贅を尽くした邸宅の床にThere Will Be Bloodな虚無が流れ、未来を問うラストシーンの秀逸。
どのシーンどの画面を切り出しても隙のない、とことんリアリティーにこだわった絵作りは本当に見事だ。どこのどんな場面も画圧が高く、絵の力がスクリーンから押し寄せてくる。アン・リー、クリント・イーストウッド、コーエン兄弟。優れた映像で語りかけてくる作家は少なくないが、P・T・アンダーソンは今や頭一つ抜けたところに立った。エンドロールに故ロバート・アルトマンへの献辞が流れるが、本質的には変化球投手だったアルトマン、球質の重さ球筋まっすぐのゼア・ウィル・ビー・ブラッドをど真ん中に放り込まれ、草葉の陰でさぞや肝を冷やしたことだろう。アメリカ映画史が特別の場所をもって遇すべき傑作。
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