ゼア・ウィル・ビー・ブラッドのレビュー・感想・評価
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RADIOHEAD好きでなくとも必見
この男には不吉な音がついてまわる。時には言葉より雄弁に、その音がストーリーを推し進める。ただの効果音ではない。しかし映画音楽とも違う。なんて力強い音。この作品で強烈に印象づけられたのは、想像を遥かに超えた音と映像の相乗効果だった。映画を観るにあたって、これほど音に注目させられたのは初めての体験!
ダニエル・デイ・ルイスだから凄い!!!
富と名声の引き換えに、心の闇と孤独を抱き続けたダニエル。
この映画に男社会のドロドロを垣間見た気がして怖かったです。ついでに石油のドロドロも!!!これ、実際にそこに自分がいたら、さぞ、臭かろっ(>_<)そんな余計な感情を持ちつつ観てたから、映画の核心まで読み取れず、ちと残念でした。
やっぱり、大金持ちになるには、危険や妬みに疎外感・・・色々なリスクを背負わなけりゃならないのは仕方がないのかなぁ~悲しいことです。
宗教絡みは、ちょっと理解し難い。
何はともあれ、ダニエル・デイ・ルイスの名演技が観もの!!!それだけが、この映画の醍醐味のよ~な気がして・・・
7月1日イオン高崎にて観賞
満たされない「家族」への思いが男を欲にすがらせる!
<ストーリー>
ダニエルは石炭や金を掘る山師。時代は移り、石油の時代を迎えつつあり、彼は何人かの採掘仲間とともに石油を掘り当てるが、その中の一人を事故で失ってしまう。その息子を引き取り、彼を連れて次々と油田の眠る土地を買い広げていくダニエル。
ある日、ポール・サンデーと名乗る男が、油田がありそうな土地の情報を買わないかと持ち掛けてくる。ウズラ狩りを装いサンデーの土地を訪れるが、ポールの弟で牧師のイーライが、土地を売る条件として、教会への寄付を要求してくる。ダニエルは条件を呑むのだが・・・
<個人的戯言>
【♪レ~ジ~メ~♪】
オープニングから流れ続ける不協和音が、主人公のダークで飽くなき野望を表しているようです。そしてダニエル・デイ・ルイスの圧倒的な演技と存在感!わずかに覗かせる孤独と、その心が決して満たされないことを知っているからこそ、その欲望は尽きず、また誰も信用出来ない。目的のための見せかけはあっても、決してだれにも跪かず、屈辱を味わされた人間には必ず代償を払わせる。ラストの狂気の演技は、あまりにも凄過ぎて笑ってしまうくらい。
所謂「敵役」となる、ポール・ダノ演じる牧師とは、敵対しているようで、実は似た者同士なのかも。ポール・ダノの狂気の演技も素晴らしく、この二人の「対決」シーンは、この映画の中でも最大の見物の一つです。158分間、画面から圧力かかり放しの作品です。
【ぐだぐだ独り言詳細】
オープニングの鉱山が映し出される映像から、流れ出す現代音楽のような不協和音。そして鉱山の砂や石油で汚れた顔の中で、ギラついた眼差しのダニエル・デイ・ルイス。彼はもう最初から野望が溢れ出ていて、音楽も含め、これから始まる「石油王残酷物語」を既に予見させます。
亡くなった仕事仲間の子供を引き取る時点で、油田を買い集めるのに、彼を「利用」しようとしていたかはわかりませんが、子供を撫でるシーンにも、何か普通の親子関係の愛情表現というよりも、「俺の後継者としてしっかり学べよ」という部分と、「可愛く育って土地所有者をうまくだましてくれよ」部分があるように見えます。
順調に拡大していく油田開発。しかしサンデー家の長男からもたらされた情報で訪れた土地では、彼の弟で牧師のイーライとの対立が待っていました。まず「富」という餌で、住民から土地を安く買い上げようとする主人公ダニエル。しかし牧師イーライは、その常軌を逸したカリスマ性で、住民を掌握していきます。すぐにイーライが「敵」であると察したダニエルとの対決は、金欲とともに征服欲を満たすためのもので、二転三転しながら最後まで続きます。お互いに手段を選ばず、見せかけだけは相手の手に落ちたように見せても、すぐに「おまえの○○○○○○○を飲んでやる!」(映画の中の重要な台詞のためモザイク・・・)と虎視眈眈。何度も出てくるこの二人の対決は映画の最大の見所の一つです。特にラストの「対決」はあまりにも凄過ぎて、見ているうちに私は笑いそうになりました。そして決め台詞・・・これはオチなのか・・・
この「対決」以外にも、拡大してきた油田を買収しようとする石油会社に対する対応等でも表れる、主人公の征服欲。更にここには「息子」に対する思いも込められています。「事故」と「事件」がきっかけで、一度は遠ざけてしまう「息子」。しかし再び呼び寄せた時には、既にわずかな情も消え去り、「戦略」としての存在でしかなかったのでしょう。「息子」に最後に叫び続ける言葉には、わずかに見せた孤独も感じられるとともに、「誰も信じない」という結末しか見出せない悲しみさえ感じられます。
更に一切家族を持とうとはしなかったダニエル。それに近いものが「弟」の出現ですが、その「持ち物」に触れた時にわずかに見せる家族への郷愁も、その疑心暗鬼な心が、すぐに消し去ってしまいます。
結局全ての「情」は自身によって否定され、最後は征服欲を満たすことによってしか生きていけない男を、オスカー当然な圧力満載の演技でねじ伏せるダニエル・デイ・ルイス。158分間、体力は必要です。でも観ておくべき演技です。
トコトン貪欲だなぁ~
なんて貪欲な男なんだろう。自らの野望の為ならなんだって利用する。家族だろーが仲間だろーが、果ては自分のプライドまで。それらは彼にとっては野望成就の為の道具にすぎないんですね。
でもいくらこの男でも、どこかで「むなしさ」感じてるんだと思いますよ。それを周りに悟られたくなくて、また頑固に振る舞って。
結局のところ、実は彼も典型的な不器用男なのかもしれません。ここまでは彼に共感出来ました。
でも、最後のシーン。全てが終わったあの場面で彼は何を感じたのでしょうか?喪失感?はたまた解放感?それは今の僕には到底分りえません。いや、二度と分かることないかもしれません。
そんな色んなこと考えさせてくれた映画でした。
映画を汚してしまった音の渦
映画はにダニエル・デイ=ルイスが肉体のみで見せる演技でスタートする。これは傑作になるかもしれないと思った瞬間に大音響で流れる音楽がすべてを台無しにしてしまった。音楽が悪いのではなくボリュームが大き過ぎる。この映画はBGMが大きくなる数箇所ですべてが白々しくなる。ダニエル・デイ=ルイスの演技はこの映画ではあれ正解。彼に対抗するは牧師、息子、弟が束になってもかなわない。「俺にはむかう者はみんな潰してやる」と思いきや、息子(無表情に近い少年がいい)の運命が予想外、それについて考えると面白い。あれはロバート・アルトマン的な世界から旅立とうとするポール・トーマス・アンダーソンを重ねているのかもしれない。といわけで監督にとっては過渡期的な位置付けになるはず。
こんな作品見せやがって、アカデミーの馬鹿野郎~!
序盤の長く変化の乏しい展開に、苦痛を感じてしまった作品となりました。何しろ2時間38分の長編ながら、その大半は主人公が製油採掘で成功するまでが、淡々と描かれています。しかも台詞もあまりありません。黙々と穴を掘り進め、仕掛けをかけて油を救いだすシーンが続きます。さらにそのバックには不協和音の不吉な音楽が重なります。ホラー映画なら、こんな音楽が流れた後には何か起こるものですが、何も起こらず意味なく流れているようでした。
この前半部分は、死者も出るくらい石油採掘の危険さをとダニエル父子の親子の絆の強さを描いたものであったものと思います。ダニエルがどんなに危険な商売に手を染めていたかを見せることで、命がけの仕事にのめり込む裏側には、彼の強い人間不信があったのだと言うことをクローズアップしたかったのでしょう。
そして、後継者として賢い息子を愛おしむ姿を見せることで、そんな大切な息子でも、邪魔になると簡単に放り出してしまう身勝手さを強調したかったのでしょう。
しかし、この前半は長すぎました。アンダーソンの演技は、強烈なダニエルを迫真の演技で演じて、すごすぎるのに、編集でダメダメにされてしまいとても残念に思います。
さて後半には、物語がやっと動き始めます。
腹違いの弟を名乗るものの登場により、弟との対話のなかで、ダニエルは自分がいかに人間不信か、自分自身しか信じていないかを語ります。その話の中で、だんだんダニエルは普通の感覚の持ち主でないことが明かされていきます。
その普通でないことがハッキリしたのは、弟ということが嘘であったことがバレたときでした。ダニエルはそこで初めて、狂気を見せます。
狂気といえば、自分しか信じないのが信念のダニエルにとって、信仰者に対する態度も狂気じみていました。彼にとって信仰者は偽善であり、嘘つきでしかなく、この世においてもっとも忌み嫌うべき存在であったのです。
彼の狂気は徹底していました。土地取得において、現地の牧師が一家の一員のなっていて、教会への寄付を迫られていたとき、寄付を約束しておきながら平気で反故にするばかりか、寄付を求める牧師をボコボコにしてしまいます。
そして実はこの因縁はラストまで引っ張っていくことになります。
パイプラインを施設するルートの土地に、牧師の熱心な信者の所有地があり、土地取得の条件に、教会の信者となることを嫌々ながら飲まされます。
教会の牧師は、ダニエルを待ち受け、以前の土地取得時の寄付の履行と懺悔を求めます。牧師が命ずる懺悔はダニエルにとって大変な屈辱を味わう結果となりました。何しろ大勢の信徒の面前で、身勝手に息子を放り題したことを大声で懺悔されられたのです。
勧化の傍ら、「パイブライン」と口走り自分を納得されようとするダニエルのガマンする表情が可笑しかったです。このあと直ぐ彼は息子を呼び戻します。よほど悔しかったのでしょう。
20年後に、この仕打ちの仕返しをするタイミングがやってきます。
伝道の旅に出た牧師は、魔が差して投資に失敗。経済的にピンチを招いて、ダニエルの元に寄付を求めて尋ねてきます。対面したダニエルはわが意を得たりという顔つきで、予言がウリのおまえが何で投資に失敗するのかと、牧師に詰め寄るのです。そして寄付の条件として、かつて自分が教会で受けたのと同様な懺悔を牧師に求めます。
躊躇いつつも牧師は、ダニエルの求めるままに自分はインチキな予言者であり、信仰を冒涜していたものであるということを心ならずも大声で言わされるのです。
このとき牧師が自分に人を救うための方便なんだと言い聞かせながら告白するところが可笑しかったです。
しかし偽善と信仰を嫌うダニエルはそれだけでは牧師を許さず、狂気へと走るのでした。
以上この作品はひとりの人間不信な石油王の半生をリアルティを持って描いたものです。その中身は、所詮信じられるものなとないということ。特に信仰と神の救いに対する強い疑問が横たわっています。何らかの信仰をお持ちの人が見たら不愉快に思ってしまう作品です。
その背景には、アメリカのキリスト教においても堕落した牧師がいて、語っていることと実際の生活にギャップがありすぎで鼻持ちならないということがあるのではないかと思いました。宗教と縁がない人には、なかなか理解しがたい映画でしょうね。
最後にコ゜ーマンかましていいですか?
『こんな作品見せやがって、アカデミーの馬鹿野郎~!』
ダニエル・デイ=ルイスが本当に凄い。
アカデミー賞で、当然の如く主演男優賞を受賞したダニエル・デイ=ルイス。
素晴らしいの一言です◎
ダニエルのことは全く知らず、この作品で初めて知ったのですが、衝撃的でした。
恐ろしいほどの演技力です。
魅せられます。
2時間38分、すごい緊張感です。
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