横浜聡子監督は、独特な映画を作るなあと感じたのが率直な思いだ。主人公のよし子は、容姿からゴリラーマンと周りから揶揄されてもまったく意に介さない。高校にも行かず、貧乏でも、仕事で無能扱いされても我関せずの体でいる。
よし子は、自分の置かれている境遇を悲観することなく、今の自分をまるごと肯定している。友人のまきも、よくよし子の家に出入りして仲がいい。同じ職場のドイツ人からも好かれている。笛を教えている子供たちからは、「先生」と言われ一目置かれている。そしてよし子は、子供たちのトラウマを聞き、歌詞にして曲を作り、将来はアーティストとしてデビューし、結婚し、子供を産む、という明確なプランを立てている。
自分を捨てた父親の病院に行く。よし子の表情からは、どのような感情を抱いているのか読み取れない。ただ死に行く者の姿を見て、よし子は驚くべき行動に出る。そしてよし子は変わる。唯一の財産である祖母の遺産を使い果たしたのだ。まさにすべてを捨てて身一つになる。「金がなくても死ねないな」という汲み取りのおじさんの言葉を受けて、よし子は驚愕の行動をする。
自分をまるごと肯定し、世の中の常識にも抗うよし子の生き様は潔い。無謀で突拍子のないことをしでかす、変な子ではない。世の中の既成概念に対して、全精力を傾けて戦う姿を、横浜監督はよし子の魅力として描いている。本作は、横浜聡子監督から、既存の映画に対する挑戦状のように感じてならない。それだけ自分を貫く強さと、周りを気にしない精神力を持つよし子の姿に、横浜聡子監督自身の映画作りへの姿勢まで重なって見えた。