ノーカントリーのレビュー・感想・評価
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【”生死を懸けたコイントス” 無表情の”人間とは別の種族の”マッシュルーム頭に戦慄した作品。】
ー 今作の原作「血と暴力の国」を書いた”コーマック・マッカーシー”の作品について、作品の日本語訳を手掛けた黒原敏行氏は述べている。
”「悪」は人間の本性に根差しているというのが、マッカーシー作品の基本的な世界観だ”ー
だが、私は”異常な緊張感が延々と続く”今作を観て、”そうだろうか?”と思う。
あの無表情のマッシュルーム頭、アントン・シガー(ハビエル・バルデム)は人間とは明らかに別の種族の生き物に見えるからだ。
<Caution!>
以下、ストーリーに”断片的”に触れています。未観賞の方は、一度ここ迄でお願いします。
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・ストーリーはシンプルだ。
”アントン・シガーの”ある行い”が冒頭に映し出された後”
・アメリカテキサス州の荒野で、ルウェリン・モス(ジョシュ・ブローリン)が偶然、麻薬取引が決裂したと思われる場に遭遇し、200万ドルの入ったアタッシュケースを持ち帰るところから物語は始まる。
・モスは一度、モーテルに戻るが、瀕死のメキシコ人の”アグア・・”という言葉が気になり、夜”アグア”を持って現場に戻る。
ー 彼の”人間としての”善性が残っている事が分かる。 -
・が、そこで追手に遭遇してしまい、”生死を懸けた鬼ごっこ”が始まる・・。
■印象的なシーンは数々あれど、
・荒野の店で、アントン・シガーと店主との噛み合わない会話と”異常な緊張感”の中での”コイン・トス”シーン。
・アントン・シガーの、普段は緩慢な動きだが、酸素ボンベを使った変な高圧空気銃を使用しての殺しの場面になると俊敏になる数々のシーン。
酸素ボンベをダラリとぶら下げながら”ターゲット”に近づく、アントン・シガーの無表情さの気味の悪さ・・。
・危険を感じたモスが、妻カーラ(ケリー・マクドナルド:個人的に、凄く心配になる・・。)をトレーラー・ハウスから一時避難させるシーン。そして、”リーガル・モーテル”でのクランク型の排気口にアタッシュ・ケースを隠すシーン。
・モスがアタッシュ・ケースの札束の中に潜ませてあったあるモノを見つけ・・。
ー 追ってくるアントン・シガーの影・・。ホラーか・・。
何度観ても”手に汗、びっしょりシーン”である。-
・新たな賞金回収屋、カーソン・ウェルズ(ウディ・ハレルソン)は負傷したモスの入院先を、粋なスーツを着こなし、見舞いの花束を持って訪れる。そして、アタッシュケースの在りかを自らの目で、確認して去る・・。
ー 彼も、イカレテはいるが、”人間としての”常識がある事が分かる。-
■この作品では、アメリカ、メキシコ間の”ボーダーライン”が”重要な場所”として、何度か登場する。
ー この作品の数年後、ドゥニ・ヴィルヌーブ監督の「ボーダーライン」が公開されるが、個人的に勝手に、今作の影響を大きく受けて「ボーダーライン」シリーズが制作されたと思っている・・。ー
ー メキシコ側から国境を越えようと、病院衣を纏ったモスが通過しようとするときの、国境警備員との”ベトナム戦争時所属部隊の遣り取り”も秀逸である。”この方を車でお送りしろ”・・。ー
・そして、アントン・シガーはモスが、妻カーラとカーラの母と待ち合わせをしていたモーテルでモスを殺しアタッシュケースとともに消える・・。
■今作では、重要な役割を冒頭からラストまで担っている、ベテラン保安官エド・トム・ベル(トミー・リー・ジョーンズ)の苦悩する姿も、効果的に随所で描かれる。
アントン・シガーとモスとの”生死を懸けた鬼ごっこ”を追跡する彼は、この作品の
”人間としての善性を持った”語り部であり、彼がアントン・シガーについて語る言葉も印象的である。
”幽霊みたいな奴だ・・”
<モスの妻、カーラの家に現れたアントン・シガーがカーラに要求した事。それに対して、カーラが答えた言葉・・。彼の”コインと同じ道を俺は辿って来た・・”という言葉。
アントン・シガーが始めて見せた”人間性”故か、重傷を負った彼にシャツを渡す無垢な少年の姿も印象的な”ダークテイスト極まりないが”不思議な余韻を残す心に残る作品である。>
<様々な媒体で複数回鑑賞>
すごい引き込まれるような映画だった。 この映画は詳細まで描かれてい...
これがアカデミー賞であることに驚愕、ただ、金のために殺人鬼が徘徊してるだけ
何かモヤモヤするけど、これがコーエン?
血と暴力の報い
原作はコーマック・マッカーシーの「血と暴力の国」。マッカーシーは、目を覆いたくなるほどの残虐性を強調することで、人間の本質は悪であると定義しながら、そうした世界の中でも失われない僅かな良心であったり、親子や家族への愛を描く。なんて言う類の解説を、よく目にします。世界の罪を告発しながら、それでも生きて行く意味を伝えようとしているのだと。
最初に読んだマッカーシーが「ブラッディ・メリディアン」。インディアンと、賞金や領土目当ての白人の間で繰り広げられる果てしない殺戮合戦。人の命の軽い事。なんの罪もない女子供が、双方の手によって集落ごと狩られて行きます。登場人物の悪行を見続けるのはあまりにも辛く、絶望感しか無く、感情を排した描写の連続に耐えるには、読者も感情を捨てるしか無くなります。
それが誰であれ、躊躇なく殺すシガーは、人類の罪を象徴している存在。妻との新生活を夢見るベトナム帰還兵モスは、アメリカ合衆国そのもの。ベルはストリーテラーとなる傍観者。
甘い夢が許されるものか。報いは受けるよ。人類の本質は悪だから。必ず、悪行は我が身に帰って来る。って言ってる様に思えてなりませんでした。
生きて行く意味なんて、感じられませんでしたし、希望を見出す事も出来ませんでした。多分、今、俺の心はささくれまくってるみたいです。
10年かかって
ようやくこの映画の面白さが理解できました。
初めてみた当時はごついオカッパがヒゲを追いかけ回す。
まあその通りなんですが、BGMもない、いつのまにか死んでる、トミーリージョーンズの存在意味がない。
地味に展開するし初見では⭐︎2.5くらいでしたね。
ふとまたみたくなり鑑賞したらこの映画、なんて面白いんだ!!と。
かつて、マイナス面でとらえてた部分は全てプラスに作用していたようで、オカッパ殺し屋、これはギミックからキャラから徹底している。コインの裏表なんてぶっささる設定。
酸素ボンベとか、血がつくのを嫌うとか個性一つ一つがたまらないです。
ジョシュ・ブローリンとの追いかけっこ、あっさりと終焉を迎える。
トミーリージョーンズの無力さと、無念。
地味にウディハレルソンでてたけど、シガーの引き立て役になってしまったり。
シガーは残酷だが人間味があるのが良かった。
無敵のシガーがあっさり事故ってしまうところ、あれは誰かに狙われたのかと邪推したよ、、
死神
怖ぇーよ、マジで。色々御託並べて引っ張って、その緊張感はただものではない。こいつの前では皆が欲まみれの俗物に堕とされ処刑される。悪役?なのかすらわからない史上に残るキャラクター、シガーをハビエル・バルデムが怪演する。
ベトナム戦争後のアメリカで、戦場での行動様式が国内に持ち込まれたような話で、ジョシュ・ブローリンとハビエル・バルデムのチェーシングはスリル満点。市街地での銃撃戦、死角を作ってわざと車を斜めにとめるくだりなどディテールが楽しい。
しかし、その追尾劇の結末がつく間際で視点が老保安官に飛んで、あっさりとなる。数字にこだわるハレルソンは雰囲気十分であったが、こちらもあっさり。原題の、評論ばかりしていて、現場に足を運ぼうとしない老保安官の話に転ずる。実に奇妙な流れである。しかし、後に引く。死神も最後は不条理に巻き込まれる。世界の一部となることの意味を考えさせられてしまう。
今頃地上波で見てしまった
主演の殺し屋が怖かった! なんかこう夢に見そうな、現実にもありそう...
ジョシュ・ブローリン!
この映画でジョシュ・ブローリンのファンになりました! 何か真似したくなる声と話し方ですよね・・・僕だけかな(笑) この映画を観るとショットガンが欲しくなります! ルウェリン・モスが武器を調達してお金を持って頭を使いながら逃げ続けるのがよかったです! モーテルのシーンがあるの好きなんですよね~、泊まってみたいです(笑) 自分だったら逃げ続けられる程のアタマがないからなあ(笑) 発信器はすぐにチェックしないとね!
NO MISSION NO COUNTRY
ハビエルバルテムの当たり役『シガー』は有名だが、
何故に「ノーカントリー」というタイトルなのか気になっていた。
保安官トムには坦々と殺しを重ねるシガーが理解できず、しかも殺人を防げない。
老人としての無力感だけが漂い、早々に退官しようとする。
大金と共に逃げるモス。色々な画策で追ってくるシガーを翻弄しようとするも、
結局は、居場所を突き止められてしまう。
トムもモスも、シガーにとっては「OLD MEN」で、
シガーに圧倒され「NO COUNTRY(居場所がない)」状態になってしまう。
そういう事かな?
意外だったのは、シガーは表情が割と豊かで、
でも殺す時は微笑みを浮かべながら殺すから怖さマシマシなんだけど、
痛さに顔をゆがめたり、ちょっとイラつく顔があったりする。
無表情で何人も殺していく殺人マシーンとか悪役でいるけど、
そういった架空の悪役よりリアルで怖い。
ガソリンスタンドのイチャモンシーンは、何気ない言葉で追い詰められる心理が怖い。
シガーは自ら殺人の手を下すが、このスタンドのシーンとか、電話での会話とかは、
「ダークナイト」のジョーカーさながらの息詰まる心理的圧迫を感じる。
もうそういうキャラ造形とか無しにしても、
ハビエル「シガー」バルテム、圧倒的な存在感。
彼の為の映画でした。
ハビエルが本当極悪。 最終的には誰かがやっつけてくれて気持ち良く終...
ハビエルが本当極悪。
最終的には誰かがやっつけてくれて気持ち良く終わるんだろうと思ったのに生存。
カウボーイも呆気なくやられたし、展開が予測できない。
偶然大金を手に入れた男と、それを追う狂人の対決ものだったらすんなり観れたけど、保安官の語りや意味がよく分からなかった。
最後のセリフもサッパリで、劇中でも保安官の必要性がなんなのか分からず。
結局色々と考察を見てみると、なんとなく意味は分かった。
この映画はタイトルをしっかり意識して観ないと自分のように保安官は何なのか意味が分からないかもしれない。
主役はカウボーイではなく保安官なのだと。
保安官の苦悩をきちんと理解しないと難しい。
徹底的に過剰演出を排除したことが逆にかってない緊迫感をもたらしている
一言で言えば、麻薬取引に絡む犯罪映画なのだか、凡百の作品と本作を分けるのは過剰な演出がないところだ
徹底的に過剰演出を排除したことが逆にかってない緊迫感をもたらしているのだ
そこが決定的に違う
誰も叫びも怒号もあげない
派手な撃ち合いも極力排されている
淡々と殺しが行われるその緊迫感は半端ない
そして殺し屋シガーの造形が素晴らしい
原題の意味「年寄りの居場所は無い」は、終盤のトミー・リー・ジョーンズ演ずる保安官の台詞で説明される
過剰な演出はなかった、しかし私達はそれまでの物語を通して、昔とは全く違う異常な物語を観てきたのだ
それにより私達は老保安官の引退の決意の重さを共有できるのだ
長いエピローグの様でそうではない
そこが本当の本編のクライマックスなのだ
モスの物語は老保安官がカフェで広げて読む新聞の近頃の昔では考えられないような事件の記事と並列していることなのだ
静かなるサイコ
アントンシガーを観たくなる病
たまに凄くアントンシガーが観たくなる病に犯されている。
コーエン兄弟作品でも特に見やすい映画だと思っていて、ストーリーも簡単でキャラクターと演出で引っ張ってくれるので馬鹿な僕でも素直に面白いと思える。
アントンシガーのキャラ造形がたまらなく好きで、気持ち悪い髪型に無表情な顔、キモいオタクのようなビジュアルに、見た事ない強力な武器と言うギャップ?そして、どんな人生を送って来たか、感情の動きが全く見えない不気味さが、一度観てしまったら何度も観たくなるクセになってしまう。
警察官が辞職したように、もはや想像を超えた現実と犯罪が、今もまさにそれこそ映画や小説を超えた犯罪が起こっていて恐ろしい世の中だなと思う。
"No Country for Old men"
コーエン兄弟の名作ということで鑑賞。
ストーリーは三人の男を中心としたお金を巡る追走劇であり、コーエン兄弟特有のやや難解な描写を交えたヒューマンサスペンス映画である。
映画は保安官のちょっと小難しいセリフから始まる。コーエン兄弟の作品はセリフ一つ一つが重いなといつも感じる。彼らのこだわりなのであろう。そのように本作では少し鑑賞者の想像力が必要であったり、セリフから流れを追ったりと少し難解な部分がある。
しかしながら、多少理解できない部分があっても、シガーとモスのスリル溢れる争いにハラハラするだろうし、案外ダークナイトのジョーカーばりに悪役としてシガーのキャラが好きになる人もいるだろう。シガーを演じたハビエル・バルデムの演技は見事だったと思う。俗に言う怪演というものであると思うが、彼の立ち振る舞い、セリフは本当に気味が悪い。最強で最悪な悪役であろう。
コーエン兄弟の演出も見事だった。鑑賞者の想像力を掻き立てるのが本当に上手いと感じた。最後のオチのつけかたも彼らっぽくてあれはあれでイイのかなと。
ヒューマンサスペンス映画として、かなり面白かった。こーゆう作品にもっと出逢いたいなと思った。
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