「凶器は屠殺用のエアガン」ノーカントリー odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
凶器は屠殺用のエアガン
あまりにも病的な殺人鬼映画、殺人鬼だから異常なのは当然だが演じた俳優(ハビエル・バルデム)がアカデミー賞を獲ることからも際立った不気味さであることは万人が認めるところだろう。
だが、この映画の恐ろしいところは、まるで社会派ドラマのような、ありそうなこととして受け入れられているアメリカの病巣の深さの方でしょう、だから賞を総嘗めなのかも・・。
この手の犯罪ものを作らせたらコーエン兄弟は実に巧み、殺し屋の凶器はなんと牛の屠殺用のエアガンだとか、それで人を殺すと惨いと思う、犯罪ものだから死体には抵抗ないが犬が死んでいると不憫に思う、この人間のご都合主義をあざ笑うかのような演出はほんとに怖い。
先の読めない殺戮の連鎖に耐えるのがやっと、それも2時間余りの長尺だからたまりません。
(ネタバレ)
観終わってみれば、多少気になるところも湧いてきました。
逃げる主人公に散々、感情移入させておきながら実は殺し屋の方がメインだったと言う肩すかし。それにしても思慮深そうな老保安官(トミー・リー・ジョーンズ)は何だったのか?、殺し屋を食い止めると期待したが間に合わず、せめて逮捕かと思えば野放し状態。これでは病的な犯罪増加を嘆く時代の生き証人、ドラマの狂言回し役で終わってしまいました、そう言えば原題はNo Country for Old Men、老人には住めない国でしたね。
逃亡劇に持ち込む為とは言いながら、一旦逃げた現場にわざわざ戻るのも解せません、死にかけていたドライバーに末期の水を飲ませてやりたいと言う設定なのでしょうがベトナムでのトラウマか何かあったのでしょうかね。
奪った金に発信器が仕込まれていたので居場所がばれるのは理にかなっていますが処分してからもやけに簡単に追われ過ぎのような気もします・・。
お国の事情の違いなのかもしれませんが賞を総なめするほどの作品とは正直思えませんでした。