「血と暴力の報い」ノーカントリー bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
血と暴力の報い
原作はコーマック・マッカーシーの「血と暴力の国」。マッカーシーは、目を覆いたくなるほどの残虐性を強調することで、人間の本質は悪であると定義しながら、そうした世界の中でも失われない僅かな良心であったり、親子や家族への愛を描く。なんて言う類の解説を、よく目にします。世界の罪を告発しながら、それでも生きて行く意味を伝えようとしているのだと。
最初に読んだマッカーシーが「ブラッディ・メリディアン」。インディアンと、賞金や領土目当ての白人の間で繰り広げられる果てしない殺戮合戦。人の命の軽い事。なんの罪もない女子供が、双方の手によって集落ごと狩られて行きます。登場人物の悪行を見続けるのはあまりにも辛く、絶望感しか無く、感情を排した描写の連続に耐えるには、読者も感情を捨てるしか無くなります。
それが誰であれ、躊躇なく殺すシガーは、人類の罪を象徴している存在。妻との新生活を夢見るベトナム帰還兵モスは、アメリカ合衆国そのもの。ベルはストリーテラーとなる傍観者。
甘い夢が許されるものか。報いは受けるよ。人類の本質は悪だから。必ず、悪行は我が身に帰って来る。って言ってる様に思えてなりませんでした。
生きて行く意味なんて、感じられませんでしたし、希望を見出す事も出来ませんでした。多分、今、俺の心はささくれまくってるみたいです。
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