劇場公開日 2008年4月18日

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大いなる陰謀 : インタビュー

2008年4月17日更新

ロバート・レッドフォード、メリル・ストリープ、トム・クルーズという名実共にハリウッドを代表する3人のトップスターが、アメリカのみならず、世界が直面している問題に真っ正面から挑んだ社会派ドラマ「大いなる陰謀」。本作で、製作・監督・主演の3役を務めたロバート・レッドフォードに映画評論家の森山京子氏が話を聞いた。(取材・文:森山京子)

ロバート・レッドフォード インタビュー
「一人一人がそれぞれの責任について考えるような映画を作りたかったんだ」

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ロバート・レッドフォードは、映画がやるべきこと、映画にできることを考え続けてきた映画人だ。監督としての彼は、個人的レベルでも社会的レベルでもアメリカが抱えるさまざまな問題にフォーカスした作品を作ってきた。監督としては約7年振りの新作「大いなる陰謀」にもその姿勢が貫かれている。アフガニスタンにおけるアメリカの対テロ戦争を背景に、政治家、メディア、教育者の責任を問い、アメリカの将来に警鐘をならすチャレンジングな内容だ。

古希を迎えた永遠の反逆児 レッドフォード
古希を迎えた永遠の反逆児 レッドフォード

「わが国の行動が世界の多くに影響を与えてきたことで、ここ何年か心苦しい思いをしてきた。だからここに提示されたテーマは僕にとってかなり意味のあるものだ。今アメリカはこんなに混乱した状況に置かれているのに、誰もが、特に若者たちは、それを無視する傾向にある。どうすれば批判や積極的な行動が生まれるのか。我々一人一人がその責任について考えるような映画を作りたかったんだ」

脚本を書いたのは「キングダム/見えざる敵」のマシュー・マイケル・カーナハン。

「とても優れた内容で、一読して魅了された。ただ監督するかどうか、決断するには少々時間がかかった。というのも、キャラクターの議論が続く会話劇のスタイルになっているからね。そういう映画を観客が受け入れてくれるかどうか、確信が持てなかったからだ。でもこのテーマはチャレンジする価値がある。それだけは間違いない。だから難しい会話劇をドラマティックで楽しめるものに変えられるかどうか、トライすることにした。3つの物語にどうつながりを持たせるかが、ポイントだった」

この映画は、政治家トム・クルーズへのメリル・ストリープ記者のインタビュー、トムが立てた作戦に従ってアフガンで戦う兵士たち、その後輩に当たる学生に進路アドバイスするレッドフォード教授という、3つのシーンで構成されている。確かに口当たりのいい娯楽劇ではないが、この3つのシーンがシャッフルしながら、1時間半というリアルタイムで同時進行するアイデアはなかなか興味深い。

「僕がやりたかったのは、みんなに考えてもらうためにドラマティックな方法で質問を投げかけることだ。その質問の答えはない。答えを示すと映画が教訓的になるからやめたんだ」

ラストは、スターの離婚をトップに報じるテレビ・ニュースと、政治ネタに移ったとたんにチャンネルを変えてしまう若者のシーン。

レッドフォード教授が無気力な若者、 そして我々に責任を問いかける
レッドフォード教授が無気力な若者、 そして我々に責任を問いかける

「それが今のテレビなんだ。メディアがもっと懐疑的に積極的に行動していたら、ブッシュ政権がやってきたことのいくつかを、途中でやめさせられたかもしれない。でもメディアが4つの巨大企業に支配されている今では、戦うジャーナリストは本当に例外になってしまった」

この映画に出てくる、自分のサクセスにしか関心がない学生は、若い頃のレッドフォード自身によく似ているのだとか。

「学生時代の僕は、アメリカは何も問題がない完璧な国だと信じ込んでいたけど、パリに留学して自分がいかに無知であるかを思い知らされた。当時のフランスは学生の政治活動も活発で、アメリカについてもまったく違う見方をして論争を挑んでくるんだ。何も答えられない僕はすごく恥をかいた。その頃から物事を批判的な目で見ることに興味を持つようになったんだ」

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