「あなたの「生命」はだれのもの?」ブレードランナー ファイナル・カット シネマディクトさんの映画レビュー(感想・評価)
あなたの「生命」はだれのもの?
完璧なるヴィジュアルーー世界が地球がアメリカを超えたロスアンジェルスが蠱惑的に明らかに確かに存在する。
この作品はそれだけで存在価値を超越した「何か」を観る者に与える。
その「何か」とは、まさに言語で表現することのできない体験だろう。
この複雑怪奇な時空間では、物語は必要がない。だから、極めてシンプルなのだろう。
且つ、登場人物を演じる俳優群もまるで小道具であるかのように配置され動かされる。まさに「創造主」によって。
レプリカントは執拗に「創造主」を探し求める。
そして、信奉している。それは、タイレル博士を、ではない。
生命の創造主、限りある儚いからこそ輝く生命の創造主。
ロイ(ルトガー・ハウアー)は知っている。生命の起源を。
ロイの生命の起源は「無」である、彼が懸命に生きて「有」したものは生命、そして、また彼が死して「無」となるものは生命なのだろうか。
しかし、ロイはデッカード(ハリソン・フォード)の生命を救うことにより、彼が死す間際に生命を「有」へと転換する。
ロイは知っている。生命の行く末を。
ロイは知っている。デッカードもまたレプリカントである、と。
同胞であるのだ。自身より進化した仲間なのだ。
すべてを悟るデッカードはレイチェル(ショーン・ヤング)を連れて、跳び出す。
レイチェルもまたレプリカントである。
デッカードはレイチェルとともに姿を消す
ーー果たして、どこへ向かうのだろうか。
この世界に「生命」ほど大事なものはない。
それを身をもって顕したロイ。
それを受け取ったデッカード。
レプリカントに宿る「生命」
それこそが、私という人間に宿る「生命」を・・・
これは皮肉ではない。必然なのだ。
この作品は「生命」のひとつの在り方を提示する。
それを、どのように捉えるのかーーー
各人の真価が問われる。
私の本音を述べよう。
「生まれてきて良かった
ーーーいずれ死するとも」