プライマー
劇場公開日:2005年9月24日
解説
エンジニアの経歴を持つ新人シェーン・カルースが監督・脚本・主演を務め、2004年度のサンダンス映画祭で審査員大賞を受賞したSFサスペンス。タイムトラベルによって生じる現実とのパラドックス、タイムトラベルの“タブー”に触れてしまったふたりのエンジニアの戸惑いを描く。
2004年製作/77分/アメリカ
原題または英題:Primer
配給:バップ、ロングライド
劇場公開日:2005年9月24日
ストーリー
アメリカ、郊外の平凡な街。エンジニアのアーロン(シェーン・カルース)は、自宅のガレージで友人のエイブ(デヴィッド・サリバン)たちとオリジナル製品の開発を行っていた。しかし、彼等の主力商品は大量注文の望めない代物でビジネスと呼ぶには程遠く、研究も次第に行き詰まっていった。そんなとき、エイブは起死回生のアイデアを思いつく。超伝導を利用して重力を軽減させる装置。もし成功すればノーベル賞も夢ではないうえに、大きな投資が見込める可能性もある。そんな“夢物語”の開発に仲間は反対するが、アーロンとエイブはこの研究をふたりだけで推し進める。開発費の調達もままならない中、ダクトテープに覆われた“箱”型の装置を作り出す。この実験の過程で、ふたりは思いもよらない発見をする。“箱”は一度起動するとバッテリーを外しても、自然に稼動し続けること。たまたま“箱”に混入したカビが、通常の数十倍の早さで培養されること。そしてアーロンとエイブは、ある驚くべき結論に至る。“箱”の中は、時間の概念が変わる“ワームホール”なのだと。つまり、タイムトラベルが可能になるのだ。アーロンは、人が入ることができる大きさの“箱”の開発をエイブに提案する。ふたりは“箱”の保管場所として、住宅地から離れた貸倉庫へ下見に向かう。しかし、エイブは車を、なぜか貸倉庫が望める空き地に止めた。そして、エイブに渡された双眼鏡でアーロンが見たものは、酸素ボンベを手に倉庫に入ろうとしているもうひとりのエイブの姿だったのだ! そう、既にエイブはタイムトラベルを経験し、未来から戻ってきたのである。ふたりが目にしているのは、タイムトラベル直前のエイブだった。貸倉庫に設置された、タイムトラベルのためのふたつの“箱”。エイブに促され、自らもタイムトラベルを体験するアーロン。ふたりは酸素ボンベを抱え6時間、“箱”の中で過ごす。6時間後、ふたりは“箱”に入った時点からさらに6時間前の世界へとタイムトラベルする。未来を知るふたりは株価の情報を事前に仕入れ、過去に戻り、大金を手に入れる。アーロンとエイブは、すべての欲望を満たす力を手にしたかのようだった。しかし、タイムトラベルには、絶対的に避けられない問題があったのだ。それは、分身(ダブル)の存在。タイムトラベルのタブーとされる“分身との遭遇”を避けるため、外界との接触を断ち、ホテルに身を潜める。だが、自らの欲望を実現するため、そして過去と現在との整合を得るために、倉庫とホテルの往復を繰り返す必要があった。その繰り返しの中で徐々にさまざまな矛盾が露呈し、アーロンとエイブの未来が歪み始める。公園で話しをするアーロンとエイブ。アーロンの耳から流れる、夥しい血。両腕が麻痺し、字が書けなくなるエイブ。ロバート(ケイシー・グッデン)のホームパーティに出かけ、レイチェル(サマンサ・トムソン)の元恋人と格闘するアーロン。自宅で食器を洗うアーロンとエイブ。どれが本来のアーロンとエイブで、どれが分身なのか?