「トランプ騒動のニュースを見ていると、この映画を思い出します。」ヒトラー 最期の12日間 よしさんの映画レビュー(感想・評価)
トランプ騒動のニュースを見ていると、この映画を思い出します。
第二次世界大戦のドイツ降伏迄の12日間を、ヒトラーを中心に描く群像劇。
日本で言えば「日本のいちばん長い日」になるのでしょうか?
私は、歴史知識を得る為に鑑賞しましたが、その期待に違わない多くのことを考えさせられた映画です。
既に正気を失い癇癪を爆発させるヒトラー。
正気を失っているヒトラーに気付きながら、『忠誠』の言葉に縛られる高官たち。
国民の命を無視するヒトラーや高官たちを横目に見ながら、それでも信じることを止められない秘書。
前線に出た事もないのに勇ましく闘うことを選択し、死んでいく少年少女。
目の前にある「敗戦」に動揺するドイツの様子が良く描かれています。
本来なら、栄枯盛衰の無常を感じる映画なのでしょうが、彼等に1mmも共感出来ないのが残念なところ。描かれている人たちは、総じて親衛隊として数多くの人を殺してきた人たち。
知的で冷静な将校として描かれたシェンク大佐にせよ、wikiで調べると「強制労働によりで100名を死に至らしめた」と書かれているのですから・・・共感しようがありません。
この映画の唯一共感出来る登場人物は、ゲッベルスの6人の子供たち。
無邪気に健気に笑い、歌い、そして両親が尊敬するヒトラーを愛します。彼女達は、モルヒネで眠らされた後に青酸カリにより殺されます。
(長女のヘルガのみ、両親を疑いモルヒネをしっかりと含まなかった為か、青酸カリを飲む事に抵抗したと言われています。ソ連軍の検視だと、顔にあざがあり、顎が破壊されている程だった)
あまりの無残さに、心が痛くなります。
また「ナチス体制以外で育てられない」という母親の言葉が、常軌を逸していて空恐ろしくなります。政治の話ではなく、文化でもなく、宗教染みた話。
最期に印象に残った二つの言葉。
ゲッベルス:『ベルリン市民彼等が選んだ運命だ。驚く者もいようが我々は国民に強制はしていない。彼等が我々に委ねたのだ。自業自得さ。』
(ソ連軍に無残に殺されている市民義勇兵を撤退させるべき、と言う提言に対して)
ユンゲ(ヒトラー秘書):『目を開いていれば気付けたのだと。』
(エピローグ。ナチスドイツの蛮行に気づかずに、忠誠を誓ってしまったことに対して)
近代史は、同じ間違いを繰り返さない為に学ぶのだと思っています。今の日本、今の世界はどうなのかと・・・考えさせられた映画でした。