恋の風景
劇場公開日:2005年3月26日
解説
亡き恋人が遺した絵の風景を求めて旅する女性を繊細に綴った、異色のラブストーリー。劇中に登場する絵は、台湾の人気絵本作家ジミー(幾米)の作品。監督は「金魚のしずく」のキャロル・ライ。主人公を演じるのは「カルマ」のカリーナ・ラム。共演に「小さな中国のお針子」のリィウ・イェ、「ツインズ・エフェクト」のイーキン・チェン。
2003年製作/100分/香港・日本・中国・フランス合作
原題または英題:戀之風景
配給:テレシスインターナショナル、ユーロスペース
劇場公開日:2005年3月26日
ストーリー
マン(カリーナ・ラム)は病気で死んだ恋人のサム(イーキン・チェン)が最後に描いた絵の風景を求めて、香港から青島にやってくる。画家だったサムは13歳で青島から香港に移住して以来、一度も故郷に帰ることなく死んでいった。海岸線に建ち並ぶ、古く美しい街並み。そのどこかにサムが最後まで求め、そして今ではマンの心を捕らえてしまった風景がある。サムの親戚のトンが経営する美容院を手伝いながら、マンはあてどなく、満開の花と木々が描かれた風景を求める。ある日マンは、郵便配達をしながら絵本作家を目指しているというシャオリエ(リィウ・イェ)と出会う。初めて青島に到着した時、道を訪ねたのが彼だった。トンの家で留守番中、ガス漏れ事故が起こり、意識不明になっていたマンをたまたま配達に訪れたシャオリエが助けたのだ。ガス漏れ事故は事故として処理されたが、マン自身はそれが事故だったのか、無意識のうちに故意に自分がしてしまったことなのか、それはもうどうでも良かった。郵便配達の仕事の傍ら、シャオリエはマンの風景探しを手伝う。風景探しを通じて少しずつ距離が縮まっていくふたり。サムの出身小学校に彼の埋めたタイムカプセルを掘り起こしに行き、過去の存在であるサムに夢中になるマンに、シャオリエは明らかに嫉妬の感情を示す。一方別の女性からマフラーをプレゼントされたシャオリエを見かけたマンも、穏やかな感情ではいられない。シャオリエは密かにマンの似顔絵を描いて、彼女への思いを募らせていく。ある日シャオリエは、ついに風景を見つけたとマンの元に飛び込んでくる。その場所は、シャオリエにとってはまさにサムが描いた場所に思われたが、マンは違うと言う。「あの風景が本当にあるのか、時々考えるの」と告白するマン。シャオリエとマンは待ち合わせして動物園に出かける。喜びを隠せないシャオリエ。彼がアイスクリームを買いに行っている間に、マンは幻影のように現れた少年についていってしまう。少年はまるで、幼い日のサムのようだったのだ。そしてシャオリエの元に戻ろうという気持ちを無くしてしまう。マンが家に戻っていたことを知った彼は、もうそれ以上彼女に声をかけることはできなかった。そしてまた時間が過ぎていった。「最近シャオリエを見かけないわね」と言うトンにマンは、「この街でサムの存在を強く感じるのに、彼を思い出す時間が減っているの。大切にしてきたものが消えてしまいそう。彼の街で別の人を思っている、それがつらいの」と言うのだった。春が近づこうとしていたある日、隣に住む老夫婦の妻がサムの描いた風景を見て、それはデンインの風景だと言う。白い梨の花が満開の、春のデンインの風景に違いないと。しかしマンは相変わらず、そこに向かおうという気持ちになれなかった。足を怪我して郵便配達の仕事をやめてしまったシャオリエ。それを知ったマンは彼の家を訪れ、風景が見つかったと報告する。しかし彼女は、その風景が見つかるのが本当は怖かったのだと告白する。現実に引き戻されて、サムが消えてしまうからと。思わず抱きしめるシャオリエ。しかしその抱擁をマンは受け入れることができない。シャオリエは自分が描いた、まだラストが描けていないという絵本をマンに手渡すのが精一杯だった。そして、春が訪れた。