靴に恋して

劇場公開日:

解説

スペイン・マドリッドを舞台に、それぞれ悩みを抱えながら懸命に生きる5人の女性と彼女たちの履く靴をテーマにした5つの人間ドラマ。出演は、「オープン・ユア・アイズ」のナイワ・ニムリ、「オール・アバウト・マイ・マザー」のアントニア・サン・ファン、「欲望のあいまいな対象」のアンヘラ・モリーナら、スペインを代表する女優陣がそろった監督はスペイン期待の新鋭ラモン・サラサール。2002年ベルリン映画祭正式出品。

2002年製作/135分/スペイン
原題または英題:Piedras
配給:エレファント・ピクチャー
劇場公開日:2004年10月2日

ストーリー

盗んだ靴をはく女―23歳のレイレ(ナイワ・ニムリ)は、高級靴店の店員。夢は靴デザイナーになることだが、才能に自信が持てず焦りはつのるばかり。店からこっそり盗んだ真っ赤なハイヒールを履いて毎夜ディスコで踊る。ある日、画家の恋人クン(ダニエリ・リオッティ)と大ゲンカする。街角の公衆電話から彼に電話した。すると留守番電話になり、「レイレとクンの携帯電話です」と2人の声でメッセージが流れた。楽しかった頃を思い出し公園のベンチで泣くレイレ。クンはレイレに「夢をあきらめるな」と告げ、彼女が書き溜めていた靴のデザインブックを手渡し、部屋を出て行った。恋人と仕事を失った彼女は、盗んだ赤い靴を履いていつものようにクラブで踊る。靴のヒールが折れて彼女は倒れた。それで吹っ切れたレイレは、クンと共有の携帯電話を捨てた……。偏平足の女―アデラ(アントニア・サン・ファン)は49歳。キャバレーでマダムを務めている。娘のアニータ(モニカ・セルベラ)は知的障害を持つ。アニータの面倒は看護士ホアキン(エンリケ・アルキデス)に依頼している。ある日、客の高級官僚レオナルド(ルドルフォ・デ・ソーザ)からデートのお誘い。二人はタンゴを踊った。ずっと忘れていた女としての快感に満たされ、幸せに酔いしれる。しかし、レオナルドの知り合いから、彼に妻がいることを聞き、絶望するアデラ。悲嘆に暮れている彼女の元に娘のアニータが行方不明になったとの連絡が入った。アデラは母親としての自分に目覚め、大雨の中、娘を探しに飛びだした……。スリッパをはく女―マリカルメン(ビッキー・ペニャ)は、堅実で現実的な43歳のタクシードライバー。彼女は血のつながっていない3兄弟の母親だ。彼女に敵意を抱く次女ダニエラはヤク中、小学生の息子ビクトルは内向的でいつも赤い長靴を履いている。もう一人の娘はすでに家を出ている。夫が急逝して10年、自分の幸せは顧みずずっとみんなのために生きてきた。ある日家に帰ると、薬の過剰摂取でダニエラが倒れ、病院へ。医師から「お母さんですか?」と聞かれ、「母ではありません。一番身近な人間です。」と悲しそうに答える。いくら頑張っても本当の身内にはなれない。ビクトルをお風呂に入れていると、小さな声で言った「ママに会いたい…」今まで実の母親のように愛情を注いできたつもりだったのに…。涙があふれた。そこへ、家出していた長女レイレが突然帰ってきた……。スニーカーをはく女―アニータは25歳。知的障害者だ。いつも黄色いスニーカーをはいて、大好きな飛行機を見つめる。毎日世話にきてくれる看護学生のホアキンにひそかに恋をしている。得意の絵で思いを伝えようと一生懸命き、その絵を彼に渡した。彼は嬉しそうだった。ある日、彼に連れられていつもの散歩道とは違う道に出てみた。最初は怖かったが、大好きな空港に行くことができた。彼が新しい世界を教えてくれたのだ。毎日ホアキンの来る時間が待ち遠しくて仕方がない。心配した母アデラは、彼はもう二度と家にこないと、アニータに言った。泣きじゃくるアニータを抱きしめ慰めるホアキン。そんな二人を見たアデラは逆上し、彼に二度と来るなと言い放つ。傷ついた彼は慌ててアパートを飛び出し、道でマリカルメンの運転するタクシーにぶつかる。家に帰り、彼を優しくなぐさめた恋人はクンだった……。小さな靴をはく女―イザベル(アンヘラ・モリーナ)は、高級官僚の妻、45歳。夫婦の仲はとうに冷え切っている。1サイズ小さい高級靴を買いあさることで孤独を埋める。いつものように足専門医の元へ行き、足を見てもらう。小さなサイズの靴を履くことで彼女の足は悲鳴をあげている。ある夜のホームパーティ、肝心の夫は不在だ。バスルームで他人の夫と慌しいセックスをして、一人残され虚しい気分になる。後日、足専門医と食事した時、トイレに立つと夫が見知らぬ女と囲んでいるテーブルの前を通る…。ある夜、夫に「出て行くわ」と言ったが、夫は止めなかった。どしゃ降りの雨の夜、彼女は家を出て行くが……。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

5.0落ち込んだ時に見ます

2024年1月10日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

泣ける

幸せ

行き詰まってうまくいかない人生を生きてる女性たちの群像劇。
靴が印象的に出てくるけど、原題は石。

ナイワニムリのラストのモノローグの美しさは特筆ものです。
いろいろなものを失って生まれ変われるかわからないリスボンへ行った後で、長いつぶやきが始まります。

恋に疲れた女がひとり
きっと良いこと起きるから京都あたりに行きたいわ
そんな感じです。
昔も今も変わりません。
落ち込んだ時に元気にしてくれる映画です。

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ぼて

1.0意欲策ではあるんだろうけれども…

2023年10月18日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

本作に登場する5人の女性それぞれの「生きざま」を描いた群像劇というのが、本作の内容だと思うのですけれども。
そうして、邦題からすると、それぞれの女性が履いている靴が、それぞれの女性の「価値観」や、そういう価値観のゆえの「生きざま」と抜き差し難く結びついているかのような思わせぶりです。

以前に、法廷では帽子を脱ぐべきかどうかということで見解が分かれて、脱帽を指示した裁判所(裁判官)と、それを拒否して退廷命令にも従わなかったという傍聴人との間でトラブルにがあったというようなことを、新聞の記事でで読んだことがありました。
裁判所(裁判官)としては、屋外ではともかく、日本では室内で帽子を被るという習慣がないという常識から発した訴訟指揮だったとは思うのですけれども。
しかし、件の傍聴人の女性に言わせると、帽子もコーディネートされた服装の一部であり、帽子を脱いで裁判を傍聴せよと言うのは、洋服(の一部)を脱いで裁判を傍聴せよと言うに等しいと言いたかったのだろうと思います。

同じく身につけるものということでは、帽子も靴も、人によっては、選ぶところはないのだろうとは思います。
そして、身につける服装や履く靴は、ある意味本人の価値観というのか、ライフスタイルというのか、そういうものと無縁でない部分があることは間違いがないとも思います。
けれども、その女性が着用する靴で、その女性の「人となり」や「生きざま」のモチーフとしようとすることには、映画製作ということでは「意欲作」と言えるのかも知れませんが、少なくとも本作の場合は、結局のところ、その両者がちゃんとリンクしていないんじゃあないかというのが、偽らざる印象でした。本作を観終わって。評論子の。

いちおう本作中では、アニータ(スニーカーを履く女)、イザベル(小さな靴を履く女)、アテラ(扁平足の女)、レイレ(盗んだ靴を履く女)、マリカルメン(スリッパを履く女)と、それぞれ定位はされてはいますけれども。
しかし、それぞれの女性がそういう靴を身につけていることと、それぞれの女性の生きざまとを明確に結びつける(少なくとも暗示する)描写は、残念ながら、本作の中にはなかったように、評論子には、思われました。
作品の内容が、題名(邦題)に負けてしまっているといったら、それは酷評だと叱られてしまうでしょうか。

それぞれの女性が、問題の多かったそれぞれの現状を乗り越えて、明日への希望を掴みとったことは心の救いですけれども。

映画作品として残念な一本だったと思います。

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talkie

3.0群像劇だったんですね

2020年6月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 5人の女性が登場するのです。“盗んだ靴をはく女”、“偏平足の女”、“スリッパをはく女”、“スニーカーをはく女”、“小さな靴をはく女”。一組の母娘があるが、靴に関する性癖・特異性を除いては年齢もさまざま、職業も家庭環境もバラバラである。『オール・アバウト・マイ・マザー』や『ルシアとSEX』などスペインを代表する映画に出演している女優陣。しかし、途中まで名前と好きになる男を把握するのに一苦労した(そして眠気も・・・)。

 群像劇というのは、終盤に人間関係が一気に繋がってくる驚きがあるもので、この映画も例外ではない。靴に関して収集癖、デザイナーへの憧れ等々の面白さもあるのだが、「あれ?あんたたち親子だったの?」とか「え、あんたゲイだったの?」、「事故で繋がるのか・・・」などといった複雑な解決法をとってくるので頭が混乱しました。“Shadow of Your Smile”が心地よく、同時進行する痛手の失恋や大胆な演技にゾクゾクさせられました(しかし、幾分女性向に作られていると思う)。

【2005年1月映画館にて】

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kossy

3.5ちょっと力みすぎ

2007年1月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

舞台はスペイン・マドリッド。靴を軸に5人の女性のドラマで「監督はスペイン期待の新鋭」ということらしい。描きたいことがたくさんあるのだろうけど、正直な感想はちょっと力みすぎなんじゃない、というとこかな。
スペインの女性も同じような悩みを抱えていることを再確認。一歩踏み出すことがなかなかできないでいるのも納得できるし、環境を変えることで解消できることも多いのかもしれない。

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chocolate