「スリラー映画についての反省の一形態を、あくまで趣味良く。」ファニーゲーム HAPICOさんの映画レビュー(感想・評価)
スリラー映画についての反省の一形態を、あくまで趣味良く。
2022 555
2015 444
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書籍『ミヒャエル・ハネケの映画術』より、一部
(10分間を超える居間のシークエンスショットについて)もしこのシーンを伝統的な方法で撮影していたら、その緊張感は全て失われてしまっていたでしょう。このシチュエーションにシークエンス・ショットはぴったりだと思われました。それ以外のところはいつもと同じように撮影しています。何か恐ろしいものを映さねばならないときは、いつも遠くから撮影します。近くで見せられる苦痛は、私には猥褻に見えます。
あらゆる苦痛と死は撮影不可能だと考えています。とりわけ記録映画においてですが、大虐殺の犠牲者たちをクロース・アップで映しているものは耐えがたいと思います。そんなものは見たくありません。これは趣味の問題です。
ドイツ語で「Geschmack」という言葉は、趣味の良い人は倫理的でもあるということを意味しています。趣味は単に美学的な事柄ではなく、敬意をも含みもっています。この場合では、他人の苦しみに対する敬意です。
(冒頭の場面でオペラが突然ジョン・ゾーンの音楽に変わることについて)ジョン・ゾーンは純粋なヘビーメタルというよりは、むしろこの種の音楽についての反省のようなものです。『ファニーゲーム』がスリラー映画についての反省の一形態であるのと同じです。
学生たちに良く言うのですが、一番必要なのは、良い耳をもつことなのです。目で見るよりも耳で聞いた方がはるかに理解が速いからです。ロングショットでは、撮影中、何も見えません。演技が適切かどうかを見極めるには音に頼るしかないのです。
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