「マイホームパパが幸せ?価値観の押し付けが酷い。」天使のくれた時間 さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
マイホームパパが幸せ?価値観の押し付けが酷い。
あれ?こんな映画でしたっけ?
もしかしたら、ずっと勘違いしてたかも知れない。
主人公のジャック(ニコラス・ケイジ)は13年前、もしケイトと別れなかったら?な人生をおくることとなるのです。まだ幼い息子、おしゃまな娘アニー、プロボノ弁護士の妻ケイト、そしてジャックはタイヤのセールスをしています。
ウォール街の優雅な生活からは一転、所帯臭さ満載です。
誰でも長い人生の中で、何回かはあるでしょう?
ああしておけば良かった。
こうしておけば良かった。
あ、何回かというか、そんなことばっかりかもしれない。
こうするべきだった。ああするべきだった。
あんなふうに言うべきじゃなかった。こう言えば良かったとか。
ええ、全部私が悪いんです。本当にすみません!
しょっぱなから愚痴っぽくて、すみません!
でもパパがなんか変?とアニーが気付くんです。
「あなた本当のパパじゃないでしょう?エイリアンでしょ?私と弟の頭に変な装置をつけない?」
「つけない」とジャックが答えると、「地球へようこそ」だって。可愛いんです。
最初こそ、こんな生活やだ!なジャックなんですが、こんな子供の可愛さとか、奧さんの美しさとか、段々と情が芽生えてくる。
でもウォール街の優雅な生活も忘れられない。
タイヤ店で働いている時、元ボスが偶然現れます。元上司なので趣味趣向を理解し、上手く取り入り、前のような生活を手に入れることに成功します。
でもケイトは不満です。
「誰もが羨む生活を手に入れることができる」
というジャック。
しかし「今だって羨む生活」だと反論するケイト。
けれど最終的にはケイトは分かってくれて、ここでの生活(Address)よりジャックへの愛を選ぶ。
「I choose us」
っていうんです。ここで、愛、金、権力が手に入ったんです。勿論、ケイトの望みとは違うけど。子供は転校するけど。本当に「全部」揃った。
けれどジャックは、金と権力を捨てて家族の愛に生きると決心する。この時のアニーの台詞が可愛い。
「本当のパパが帰って来た」
けれど、皮肉です。やっと大事なものが分かったのに。それ一つで、全部と思えるものが見つかったのに、またコンビニで例の黒人青年に出会うのです。
「煌めきは、一瞬」
ジャックは、夢から覚めます。安易な夢オチ!とか思うけど、そもそも愛する女、愛する子供、金、権力を手に入れられる!って、やっぱり夢でしか叶わないのかな?と逆に切なくなったりして。あれ?こんな虚しさを悟る映画だったっけ?
でも、もっと納得いかない部分もあって。
かなり前に観た時は、そんなことは思わなかったんですけど。
ケイトがNYに行くことを反対する理由が、いまいち釈然としないというか。
ジャックがNY行きを断念する理由も、いまいち釈然としないというか。
ケイトがこの家で年老いたいって言ったから?娘が転校したがらないかも知れないから?
庶民的な生活が幸せで、裕福だと不幸せになるっていう考えの根拠はなんだろか?そこがいまいち分からない。
結局、幸せの基準は本人達がどう感じるかでしょうけれど。つまりケイトの独断と偏見による幸せの基準を、ジャックは尊重したってことですよね。夫は自分の夢を捨てて、妻や、子供を優先するべき!
だって原題が「The Family Man(マイホームパパ)」だから。なんだかちょっと、(男性に対して)強引で厳しい映画のように思えてきました。
結局、現実のケイトは成功した弁護士で、二人が再会した後に新たな物語が始まりそうな予感で終わります。
邦題では「天使~」と、あの黒人青年を勝手に天使ってロマンティックが止まらなくしてますけど。むしろ「トワイライト・ゾーン」のロッド・サーリング、日本なら「世にも奇妙な物語」のタモさん的ポジションの方だと思います。