「最高だ」ロボコップ(1987) 古泉智浩さんの映画レビュー(感想・評価)
最高だ
この映画の素晴らしいところは、何よりもストーリーが抜群に面白いところだ。死んだからと言って勝手に体をロボットのパーツにされた警官、マーフィがロボコップとして活躍しつつ次第に自我を取り戻し、自分を殺した犯人や組織と戦い始める。それは不正をただすためであり同時に自分を取り戻す戦いでもあるというとんでもなく高いドラマ性。ストーリー中心の浅い見方の者にとっても面白すぎる。
主人公は正義を愛するまっとうな家庭人で、あまり色のない男なのだが、そこがむしろこの物語には重要なポイントとなっている。そして敵は一見普通の頭の薄いメガネおじさんなのだが、とんでもない悪者で外見が普通だからこそ余計に怖い。四六時中怒っていてコブラ砲という超強力な銃で自動車を一発で大破させる。
ロボット警官などという子供向けの題材でありながら設定はあくまで科学的にハードであり、存在を社会的にハードに位置付けている。
記憶のない人間は果たして人間なのか、肉体のほとんどを失った人間は人間なのか、記憶があれば人間なのか、人間の存在とは一体なんなのか、廃液を被ってドロドロに溶ける人間の残酷描写といったブラックなユーモアを交えつつ、問いかけはあまりにハードである。
会社でお金を稼いでいる連中も、犯罪者も自分のことしか考えていないクズで、他人がどうなろうとどうでもいい。テレビのニュースキャスターも同様で、不幸なニュースを半笑いでレポートする。そういった表現は人間性の欠落に対する告発なのだろうか。そんな心のなさをポール・ヴァーホーヴェン監督はふざけて表現しているとしか思えない。彼らは元気いっぱいなのだ。この映画で暗いのはマーフィだけだ。他人のことなどお構いなしに元気に好き勝手に生きて、最悪の場合無惨に死ねばいいというメッセージが込められているように見える。我慢して生きても仕方がない、非常に見ると元気が出るのだ。