「私の替玉な人」ローマの休日 KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
私の替玉な人
何と言ってもローマです。ここで過ごした時をいつまでも懐かしむでしょう。
アン王女のロマンスと成長。
新聞記者ジョーの思惑と目的、心情の変化、狂おしいほどの未練。
共に楽しい時を過ごし、昂ぶる気持ちをほんの少しだけ重ねた二人が選んだ、選ぶしかなかった形に大号泣。
決して振り返らないで。私もそうするから。
形式的なゴアイサツ、足を締め付ける靴、たたみかけるスケジュールにウンザリする少女。
王女としての生活は冒頭に少し描かれるのみだけど、ド庶民の私にも伝わってくるその窮屈さ。
羽伸ばしていいじゃない。好きなことしていいじゃない。ちょっと抜け出していいじゃない。
豪勢なドレスを纏う姿よりも、ボウ付きブラウスにサーキュラースカートを着た姿があんまりにも可愛くて、目を奪われてしまった。
オードリー・ヘップバーンの可憐な容姿についてはそりゃ承知していたけど、スクリーンで動く彼女はちょっと想像以上に"替玉"で。
普段はうだつの上がらない新聞記者のジョーが放つ、ダンディでユニークな空気も堪らない。
何だその若い渋みと色気とかっこよさは。許せない。好きすぎる、魅力的すぎる、替玉だ、替玉30丁、ヘイお待ち、いや違う。
協力者カメラマン、アーヴィングのコミカルな立ち回りと気の利いた行動も好き。
ジョーのごまかしで必ず飲み物をこぼされ転ばされる不憫さが好き。
写真のセンスはピカイチ。
ライター式カメラの種明かしのシーン、アン王女の「全く…!」みたいな表情も、いたずらっ子みたいなアーヴィングの表情も最高だった。
思うがままに遊んで回ってみる一日。
底にある計画が生む微かなすれ違いや小競り合いがまた面白い。
思い切ったヘアカット、日差しの下で食べるジェラート、ベスパでのお転婆、真実の口でじゃれ合い、願いの壁に想い、船上のダンスパーティー、王族にあるまじき弾けた反骨の行動。
ご丁寧に二回繰り返した王冠授与の時の弾ける笑顔よ。
楽しい時間を過ごす2人(+1人)を観ながら、頭の隅を常に掠めていた切ない予感。
それが爆発する終盤はもうだめだった。涙と嗚咽が止められない。
癇癪を起こしていた少女も天真爛漫にはしゃぎ回っていた少女もそこにはいなくて、ジョーの未練と私の未練が重なる。
煌びやかなドレスはやっぱり美しくて、凛とした顔つきに堂々とした振る舞いに感じる進化。
全て投げ出して2人台所のある家に引っ越しても良かったのに。
存分に遊んで、人を好きになって、逆に芽生えた義務の意識。
冒頭ではうんざりしていたゴアイサツも自ら丁寧にこなしてみせる、とても1日だけ挟んだとは思えない成長っぷり。
でもきっと、また嫌気が差す時もあるだろうし、知らない世界を見て回りたい気持ちだって無くなりはしないでしょう。
そうなった時、そうさせてもらえる環境であってほしいし、そうなるように彼女が縛りを変えてほしい。
そして、二人過ごした1日間を思い出していつまでもいつまでも大事に取っておいてほしい。
ジョーは最後、たくさんのたくさんの想いを抱えながら廊下を歩いていただろうな。
側で観ていた私でさえそうなんだから、きっと私の何倍も巡り巡る気持ちがあるだろう。
しばしの喪失感の後、記者の仕事に身が入っていくのかな。アン王女のように。
ままならぬ人生、映画が終わっても時間は進む。
いつかどこかでアンとジョーの邂逅があったりしたら嬉しいな、と思いつつ、そんな時が来なくても良いのかな、とも思う。
そういえばお金は郵便で返してくれたのかしら。
かしこまった「Thank you.」の発音が好き。
午前10時の映画祭にて、初見。
この作品をスクリーンで観られて本当に嬉しい。
昔の作品ってスタッフも演者も亡くなっていることが多くて、それを考えてしまうと気が狂いそうになるけど。
こんにちは😃、
共感していただきましてありがとうございました😊
そう、子供たちですらわかりませんね。
タイトル忘れましたが、父親役も母親役も有名、その娘さんが誘拐され、返して欲しければ精神病院に入院している女の子の記憶を取り戻させろ、という犯人たち。女の子二人がとても良かったので、wikiで調べたら、二人とも亡くなっていて驚きました。
本作、上手くジョーやアンの心情を書いていただいていますね。書いておられますが、万が一、二人が逃避行したらどうだったのでしょう?
本作ができた少し前イギリス🇬🇧王室でエリザベス女王即位があり、その何年か前、伯父さんの国王だった方が駆け落ちされているんですよね。
だから、諦めて戻るストーリー、になったかも。
お時間とりました。ありがとうございました😊
りかさん
子供たちですら元気かどうか…というところですよね。
昔の映画を観たときは必ずこの手の考えが頭をよぎります。
時間と死に対する恐怖を改めて感じると共に、映画という形であの時の時間を切り取って残されているのは良いなあとも思います。
こんばんは🌺
心に染み入るレビューをありがとうございます😊
お話したい事多々ありますが、
最後の3行、
70年前なのでいつも
スクリーンで動いている皆さん、もういらっしゃらないだろうな、ジョーのアパートの階段を走り回っていた子供たちしか生きていないだろうな、とか考えて観ています。他作品でも思ってしまいます