劇場公開日 1990年7月13日

「いわゆる「潜水艦モノ」としては異色だが…」レッド・オクトーバーを追え! talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0いわゆる「潜水艦モノ」としては異色だが…

2023年6月16日
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鑑賞方法:DVD/BD

<映画のことば>
「モンタナに住めますか。」
「どこにでも、好きなところに住める。」
「よかった、モンタナで暮らします。アメリカ女と結婚してウサギを飼う。夕食はウサギ料理。ピックアップ・トラックにキャンピング・カーも買う。州から州へ旅行もする。許されますか。」
「ああ」
「許可証は?」
「要らない。旅行は自由だ。」
「冬は別の場所で暮らします、アリゾナです。…妻がふたり要りますね。」
「少なくともな。」

<映画のことば>
「静かに釣りをしたい。子供の頃のように。艦に乗って40年になる。海で戦ってきた。実戦なき戦争だ。無益だ。死傷者だけが…。妻は未亡人も同然だった。死んだ日も私は海にいた。」

ふつう「海の男」といえば、海軍軍人も含め、「七つの海を股にかけて生活する」という猛者として描かれることが普通でしょうし、まして、いわゆる「潜水艦モノ」「戦争モノ」なので、その方面を「カッコよく」描く作品かと思いきゃ、軍隊生活に嫌気がさした、ロシア軍人の亡命の話ということでした。
こんなに主人公が弱気な設定の軍隊モノ・潜水艦モノというのは、他にあまり例がないかも知れません。

本作はアメリカ側の視点から描かれたロシア側という話ですから、他のレビュアー諸氏が指摘するとおり「旧ソ連流に対するアメリカ流資本主義のブロパガンダ映画」という色彩は、やはり拭えないのかも知れません。
実際、コンピュータでの解析ではマグマの変動かクジラの交尾にしか聞こえないというロシア最新鋭潜水艦のキャタピラーの音を、アメリカ潜水艦のソナー員なら、優秀で、聞き分けられるという話でもあります。

いずれにしても、船乗り(海員)の労働は、離家庭性にあるといわれます。日帰りで家に帰れる船もないわけではありませんが、多くの船はいったん出港すると数ヶ月は船上(洋上)での生活を強いられる労働です。その点は、海軍の軍人だって変わらないということでしょう。

かてて加えて、軍用の船(や飛行機)には、いわゆる安全装置というものは積まれていない。そんなものを積むくらいなら、機銃の銃弾や爆弾、魚雷など、より多くの兵装を積んだほうが良いという設計思想なのでしょう。必然的に、操船・操縦を誤れば、すぐさま死傷事故に直結してしまうという「危なっかしい」乗り物になってしまうわけです(一頃は話題になったオスプレイだけでなく、軍用機は、おしなべて墜落しやすい)。

以前に、機会があって陸上自衛隊のヘリコプターに乗せていただくことがありました。
短い時間の搭乗でしたが、用務を終わって降機する際に、操縦の隊員から「乗り心地なんていうことは少しも考えられていないから、短い時間の搭乗でも、疲れたでしょう。」といたわりの言葉をかけていただきました。

本作も、勇猛果敢と一般には受け取られがちな海軍の生活のまた別の一端を垣間見せる作品と評したら、針小棒大という指摘を受けてしまうでしょうか。
少なくとも、普通の「潜水艦モノ」とは異色な作品として、そんなことにも思いを至らせる一本になりました。評論子には。

(まったくの余談)
<映画のことば>
感電しないように、このアース棒を。ヘリの静電気は、シカゴの街を灯すほどの量だ。

talkie