リスボン特急

劇場公開日:

解説

銀行砲撃に端を発し、かたい友情の絆で結ばれながらも、対決の運命に向っていくパリ警察の鬼刑事と、夜のパリに君臨する顔役の二人の男と、その蔭で生きる哀しい女の運命を描く、フィルム・ノワール。製作はロベール・ドルフマン、監督・脚本・台詞・編集は「仁義」のジャン・ピエール・メルヴィル。撮影はワルター・ウォティッツ、音楽はミシェル・コロンビエ、美術はテオバール・ムーリッスが各々担当。出演はアラン・ドロン、カトリーヌ・ドヌーヴ、リチャード・クレンナ、リカルド・クッチョーラ、マイケル・コンラッド、ポール・クローシェ、アンドレ・プス、シモーヌ・ヴァレール、ジャン・ドザイなど。

1972年製作/フランス
原題または英題:Un Flic
配給:東和
劇場公開日:1972年12月16日

ストーリー

パリの町に夜のとばりが降りると、それを待っていたかのようにパトカーの赤いランプが廻りだす。そしてエドアール・コールマン刑事(A・ドロン)の一日が始まる。一台のダッジが海岸にうち寄せる波しぶきをかぶりながら疾走する。車の中では、四人の男が終始おし黙ったままだった。ハンドルを握るルイ(M・コンラッド)。その隣りに首領株のシモン(R・クレンナ)。後部にマルク(A・プス)と、ポール(R・クッチオラ)。四人は大西洋にのぞむある小さな町の銀行襲撃のために、パリから車を走らせてきたのだ。閉店まぎわの銀行に客を装って入るシモン。右手にはコルト45が握られている。続いてマルクが自動小銃を構え、行内へ。札束を手ぎわよくケースにつめ込むポール。一瞬、出納係が隙を見て床の赤いボタンめがけて札束を投げつけた。けたたましく非常ベルがなり、三人の注意がそがれた隙に出納係はピストルを取りだすとマルクを狙い撃った。マルクの自動小銃が火を吹き、出納係は倒れたが彼の腕から血がしたたり落ちていた。現金奪取に成功した四人はパリへ戻ったが、負傷したマルクは病院へかつぎこまれた。その夜、現金はひとまず空地に埋められた。その頃コールマンは警察のいぬであるギャビーから、ある組織が税関とグルになって、麻薬をリスボン特急で運ぶという情報をキャッチした。夕刊の第一面はトップで銀行襲撃事件を報じていた。シモンがその夕刊を手に、彼の経営するナイト・クラブに姿を見せたのは、夕方だった。人気のないホールでコールマンが弾くピアノを、片隅で静かに聞き入るブロンドの美女がいた。カティ(C・ドヌーブ)といい、シモンの情婦である。マルクをいつまで病院におくのは危険だった。警察は病院から病院へと、しらみつぶしに捜査を続けている。シモン、ポール、ルイの三人は看護人に変装して、マルクを病院から連れだそうとしたが、うまくいかず、非常手段として看護婦になりすましたカティが昏睡状態のマルクを注射で絶命させた。やがて、ギャビーの通報どうり、午後七時五九分、リスボン特急は運び屋マチュを乗せて定刻にパリのオーステルリッツ駅をでた。同じ頃、シモンら三人を乗せたベンツが夜の間をぬってボルドーに向っていた。麻薬の横取りにはヘリコプター作戦が用いられた。ヘリ作戦は見事功をそうした。パリでは死亡したマルクの身元から犯人を割りだしたコールマンは、仕事を終えてパリに戻っていたルイを逮捕した。再びナイト・クラブで再会したコールマンとシモン。しかし、二人はお互いの心中を察したかのように多くは語らなかった。クラブをでたコールマンはポールのアパルトマンに何った。最早、高飛びする時間はなかった。ポールは観念したようにピストルをこめかみに当てた。残るはシモン一人。翌朝、エトヮール広場の前のホテルの入口に立つシモンを乗せるために、カティの運転する車が近づいてきた。シモンが歩みだした瞬間、コールマンの声が沈黙を引き裂いた。「動くなシモン!」スーツケースを下したシモンは、微笑をたたえてコールマンに近づき、手をふところにすべらした。次の瞬間、コールマンのピストルが火を吹き、シモンの体が折れるようにくずれた。呆然と立ちすくむカティ。シモンは拳銃を持っていなかった。「死ぬ気だったのか……」

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.5使い古されたサスペンスの文法からは解き放たれた巨匠最期の作品

2019年11月29日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

フランスの巨匠ジャン=ピエール・メルヴィルが遺した最後の作品。これをきっかけにアラン・ドロンと袂を分かったとも言われるが、確かにそう言われると、サスペンス映画としてはちょっと一筋縄ではいかない作風が貫かれている。まずもってその時制が警察側と犯行グループ側とでやや異なるスピード感にて紡がれ、予測していたスムーズなリズム感とはいかないところが厄介であり、逆にそこがイイという声も根強い(私もそこが面白かった)。 海辺の銀行のビーチ・パラソルのような外観に始まり、車から列車への舞台転換に至るまで、絵作りはいつもながらに完璧。タレコミ屋をめぐる人間模様など、決して線形には進まぬ奇妙な語り口がここにはある。終盤に登場するヘリからリスボン急行の背中へと降りたつ描写は、後の「ミッション:インポッシブル」のクライマックスを思わせるところもあり、実際のところ、少なからぬ影響を与えているのではないだろうか。

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牛津厚信

フランスのVシネマ!

2024年7月9日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
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When I am 75♥️

2.0それでもアラン・ドロン

2021年8月20日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 アラン・ドロンが珍しく警察の警部だ。いきなり銃撃戦か?と思ったら射撃訓練場だったりして、かなり私生活の雰囲気も出しています。犯人側の動きでは、一人が肩を撃たれて重傷になるのですが、「どうせ非情な奴らなんだから、殺すんじゃないか」と考えてみたけど、カトリーヌ・ドヌーヴが頑張ってくれました。  いや、まぁ、ほんと台詞が少ない映画ですわ。ブルーがかった映像で、苦渋の表情や夜の雰囲気がとても良かったのですけど、終盤へと進むにつれ、面白くなくなっていきます。一人の密告者の言葉だけを信用して大掛かりな捕り物を計画するのもおかしいし、簡単に自殺するというのもおかしい。現実には出会ってから撃つまでがこの映画のように短いんだろうけど、葛藤する心理描写がほしいところだ。なんといっても、アラン・ドロンは悪い奴のほうがよく似合う・・・ラストは『サムライ』と逆になってるのが面白いかも。

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kossy

5.0疑いと嘲り 疑いとは、ドヌーヴを配役すること 嘲りとは、大味な犯罪を描くこと メルヴィル監督は、この問題点を自覚して撮ったのかもしれない

2020年10月16日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

メルヴィル監督作品恒例の冒頭の散文 警官は人に対して持つ感情は二つしかない 疑いと嘲りだ フランソワ・ウジェーヌ・ヴィドック この人物を調べてみるとこうあった 18世紀末から19世紀前半に生きたフランスの犯罪者で、パリ警察の密偵となり、国家警察パリ地区犯罪捜査局を創設し初代局長となった伝説の人物 彼が作った捜査局はパリ警視庁の前身にあたる ヴィクトル・ユーゴーの「レ・ミゼラブ」のジャン・ヴァルジャンとジャヴェールは彼がモデル 後に探偵となり、彼が書いた回想録に記された異常犯罪の記録の数々が探偵小説を創始したエドガー・アラン・ポーやコナン・ドイルに多大な影響を与えたという アラン・ドロンは珍しく警察署長の役 警察署長と言っても、日本でいう捜査課長のようだ コールマン刑事役の彼は、正にその疑いと嘲りの感情しか持たない冷徹な人物 酷薄な雰囲気がアラン・ドロンにピッタリだ 本作はジャン=ピエール・メルヴィル監督の遺作 本作のフランス公開の1969年10月の10ヵ月後の1970年8月、心臓発作で55歳で亡くなった まだまだこれから何本も傑作を撮れる歳なのに残念過ぎる サムライ、影の軍隊、仁義と来て本作だ しかも主演はアラン・ドロン、共演はカトリーヌ・ドヌーヴ! 期待しない方がおかしい 冒頭の銀行強盗が始まる前のシーンからもう心を鷲掴みにされる しかし大傑作として、手放しで誉められるかというと実はそうではない いろいろと言いたいことがある それでもなお傑作だ 素晴らしい! 星5つを付けて当然だと思う 不満点は大きく二つある まずカトリーヌ・ドヌーヴの出番が少ない 重要な役ではあるが結局端役にしか過ぎないのだ アラン・ドロンとのキスシーンはあるものの欲求不満が残る もっともっと美しい彼女を観たかった しかし、このような目の覚めるような美女はメルヴィル監督作品の世界にはそもそも似つかわしくないのだ そうもっとそれなり程度の美しさであるべきだった それでもドヌーヴを出すなら、凄惨な死に方をするべきキャラクターだったと思う そして最大の問題点はリスボン特急襲撃のシークエンスだ こんな大味の犯罪はメルヴィル監督らしくない ケレン味が有り過ぎる メルヴィル監督作品は、もっと地味に静かにやるべきものだ こんな黄金の七人みたいな犯罪はらしくない 第一、ヘリと特急列車の特撮が日本映画みたいなチープさで情けなかった 冒頭の一節 疑いと嘲り 疑いとは、ドヌーヴを配役すること 嘲りとは、大味な犯罪を描くこと メルヴィル監督は、この問題点を自覚して撮ったのかもしれない しかし問題点があっても傑作であることは間違いない

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あき240