U・ボートのレビュー・感想・評価
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TVシリーズのダイジェスト再編集版である事を凌駕した功績を刻んだ公開作
この作品を初公開時のロードショー劇場で当時鑑賞出来た時の衝撃は忘れられない。
海中の真っ暗闇の中から艦首が姿を現す冒頭のシーンには完全に度肝を抜かれてしまった。
特に当時から、世界中のほぼ全部と言える戦争映画作品でドイツ人側が“悪役”や非人間的“極悪人”とされて来た事にはとても不公平感とある種の不快な感情も抱いていたから、この作品の登場には溜飲が下がる思いだったことも。
それ程この作品の登場は自身にとって待望の作品でもあったし、当時としても画期的な出来事だったといえ、鑑賞後にも大いなる感動と満足感で劇場を後にした。
そしてその後も、一緒に鑑賞した友人などと未鑑賞の知人なんかにも吹聴したりなど暫くはこの作品の話題が続き、世間的にもマスコミも「無名のドイツ映画が異例の大ヒット」的に話題に登った。
またその当時、西ドイツ映画界の底力が世界に知らしめられたと言うことが、我が事のように誇らしく思えた瞬間でもあった。
この作品への愛着や興味は自身にとっても絶大すぎるくらいのものだったので、当然ながらサントラLPを入手して聴き入ったりしつつ、パンフレットの情報などから「オリジナルの原版は西独TVシリーズである」と知りその鑑賞への切望は高まるばかりで、叶わぬことと(国内TV放送など有り得ぬ)思いつつ、決して忘れる事などあり得ず時は過ぎていった。
この作品は上記のように、元々が劇場公開作品としての制作では無い、西独TVミニシリーズの抜粋編集版を劇場作品として世界公開した事で大ヒットし、監督キャスト音楽等の関係者を世界的に有名にさせた作品として、現在は認識されている。
この劇場初公開バージョンはUボート自体の活躍する見せ場シーンが少なく、沈没〜脱出、帰還するも無に帰すような、ほとんど悲惨な艦内シーンの人間ドラマを主にして反戦映画的要素を強めた構成となっていたため、繰り返し鑑賞していると可成り強引に端折ったために前後の繋がりに希薄を覚えるようになってしまっていたのも事実であった。
それを埋めるべく、後年発売が実現した本国オリジナルTVシリーズがLD・BOX化されて入手可能となったその時は遂にやって来た。
その際には迷う事なく即座に購入し、鑑賞を果たすことが出来た時にはその余りの生々しい感じや時間を追って進行して行く内容の濃密さに引き込まれて感動した。
そして劇場版はこれとは全く別物の、極く一部を切り取ったダイジェスト版に過ぎないことを改めて思い知らされた。
では、この劇場版の持つ意味が乏しいのかと言う事となるとそれは違っているだろう。
ただそれについては、当時の西独史上最大規模ともいわれる巨額の予算を投じて制作されたとされるこの映像作品を「劇場の大スクリーンに映し出されたのを鑑賞出来た」と言う事に一つの大きな意義があったろう。
更には前述のように、この劇場版作品の世界的大ヒットによって作品に関わった、監督、キャスト、音楽家といった関係者を世界的に知らしめた事で、ハリウッド作品に進出させる切っ掛けをもたらしたという功績は大きい。
それに続くその後の世代のドイツ系として、ローランド・エメリッヒ監督や、音楽のハロルド・フォルターメイヤーやハンス・ジマー等、‘80年代以降に目覚ましい活躍を見せるようになって、今日に至る感を覚える。
潜水艦は「サイレントキラー」か。
<映画のことば>
今からブローチを行い、浮上を試みる。
浮上しても、まだ試練が待っている。
祈るしかない。
ディーゼルが動けば、両舷いっぱいで海峡から脱出する。そして帰還。
成功したら、ビールを振る舞う。
音もなく忍び寄って、一撃(の魚雷)で相手を殺す…正に「海のサイレントキラー」と呼ぶに相応しい兵器なのだろうと思いました。
しかも、せいぜいは数時間で基地に帰投し、乗員は夜は基地の(それなりには心地よい)ベッドで休むことのできる飛行機(航空兵器)とは違い、いったん出撃となると数ヵ月は基地に帰投しない艦船(潜水艦)の乗員には、戦闘だけでなく、日常生活にも不便の多いことでしょう。
その不自由・困難な境遇で死力を尽くして戦いに挑む男たち…。その苦難の様が「潜水艦映画にハズレなし」とも言われるのでしょう。
本作も、そのご多分に洩れず、苦戦の中でも艦長と乗組員たちの深い信頼関係が素敵な一本だったと思いますが、困難な任務から何とか無事に戻っても、その帰投した基地が受けた空襲であっけなく沈没させられて、艦長も戦死してしまうということは、この時点では、Uボートの勇猛果敢な戦闘にも関わらず、ドイツ軍の敗色はもはや明らかということだったのだと思いました。評論子は。
緊張の潜水艦映画
この映画が評価されたものに価値を感じない
戦争の悲惨さ、皮肉さ!
観ているこちらも浮かんで沈んで
静まりかえった水中のU・ボート。
探知機の音が徐々に近づいてくる。
こちらまで息を止めてしまうほどの緊迫した船内。
どこへも逃げ場はない。
敵からの容赦ない攻撃をただただ耐え抜くしかない。
ディレクターズカット版。
第二次世界大戦中活躍したナチスドイツの潜水艦U・ボートの物語。
潜水艦モノというジャンルがこんなに面白いモノだとは知りませんでしたし、まだU・ボートしか観ていませんが、潜水艦モノの中でも傑作なんじゃないでしょうか。
戦争映画だとナチスは悪として描かれます。
勿論ナチスは悪です。
でも、ナチスとして戦ったドイツ人もやはり人間。
彼らも命がけで戦っていたということを痛感させられました。
戦争は戦っている側はどちらも悪いし、どちらも辛い大変な思いをしている。
魚雷を撃ち込んだイギリスの船から助けを求めて逃げ出す乗組員を見放すシーンのように、こちら側(U・ボート)の戦争中だからこその残虐さも見ることができました。
U・ボートの船内はとても窮屈で劣悪だということがしっかりと伝わってきます。
まさに男だけの世界。
まるで汗の匂いや海の潮の匂い、血の匂いがしてくるようです。
観ているこちら側の感情もU・ボートと同じように浮き沈みします。
敵の攻撃がいつ来るかもわからないながらも、ひと時の平和が訪れると仲間と一緒にどんちゃん騒ぎ。
助かったと思ったら、いきなり敵が攻めてくる。
そしてなんと言ってもラストが忘れられません。
全体的に静寂が多く、時間も3時間超え。
色々と考えさせられるし、役者さんたちの本気の表情がより臨場感を増幅させていて、自分の身になって考えて観られる素晴らしい戦争映画だと思いました。
ヨハン役のアーウィン・レダーという方がアングストの人に似ていると思ったら、同一人物でした。
普通のドイツ兵が被る過酷な運命
第二次大戦中、ドイツUボートの出港から寄港までの戦いを描きます。
「潜水艦映画に外れなし」の通り、緊迫感がある良作だと思います。ナチス親衛隊ではない、一般のドイツ兵の苦闘や恐怖が心を重くします。が、2時間を超える長編の為か、やや間延びしたシーンが多く感じたのが残念。
最後にハッピーエンドにしないところが、やはり敗戦国ドイツらしいのでしょうか?息詰まるような海底でのシーンを見せられた後だけに、「戦争の無残さ」や「意外性による驚き」よりは拍子抜けのような気分になりました。
あと、古い映画なだけに、VFXは残念に感じます。
135分版は以前観た事があったので大まかなストーリーはわかっていま...
諸行無常
潜水艦パニック。4万人いた乗組員の内、3万人が亡くなったというUボ...
音とカメラワークの演出が素晴らしい
戦争映画なのに敵の姿があまり描かれず、むしろそれが見えないことによるストレスや恐怖を描いている。特に、敵艦のスクリューとソナーの音が近づき、次に爆雷の爆発音と衝撃が伝わるとき、水中に隠れた潜水艦がいつでも一方的に洋上の艦船を視認できるわけではない厳しさが伝わってくる。
そして、深海へ潜行していくときに水圧で船体が軋む音、水圧に耐えきれずにはじけ飛ぶボルトの音は、観ている者も胸や頭を押さえつけられるような気になる。
潜水艦の内部構造は単純で、筒状の船室が前後に広がっているだけである。その一本の細長い空洞の中で、乗組員たちはそれぞれの持ち場で任務にあたるから、自然と彼らの動きは一本の線上に留まる。例外はというと、艦長ら限られたクルーが艦橋に上がることくらい。
映画においてはこの狭い内部での出来事が大部分を占める。このように被写体とカメラの動きにバリエーションがつけにくい場がスクリーンに長々と映し出されるにもかかわらず、観る者を飽きさせないどころか、どんどんスクリーンで起きていることに惹き込まれる。撮影における不利な条件を全く感じさせないフィルムである。
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