モロッコ
劇場公開日:1931年2月25日
解説
ドイツに赴いて「嘆きの天使」を作ったジョセフ・フォン・スタンバーグが滞欧1ヵ年の後、再び帰米して監督にあたった映画。ベノ・ヴィグニー原作の舞台劇「エーミー・ジョリイ」より「女の一生」「非常線(1928)」「紐育の波止場」のジュールス・ファースマンが改作脚色し「煩悩」「彼の捕えし女」のリー・ガームスが撮影した。主なる出演者は「嘆きの天使」のマルレーネ・デートリッヒ、「掠奪者」「テキサス無宿」のゲイリー・クーパー「虎御前」「コンサート」のアドルフ・マンジュウ、「快走王」「危険なる楽園」のフランシス・マクドナルド「鉄仮面」「グリーン家の惨劇」のウルリッヒ・ハウプト、ジュリエット・コンプトン、アルバート・コンティ、イヴ・サザーン等で、パ社は本誌の田村幸彦氏をニューヨークに招きその翻訳になる邦文字幕を最初の試みとしてこの映画に挿入している。
1930年製作/アメリカ
原題または英題:Morocco
配給:パラマウント支社
劇場公開日:1931年2月25日
ストーリー
モロッコ駐屯の独国外国人部隊の一兵卒にトム・ブラウンという米国人がいた。彼は人を人とも思わぬ不敵の男で、女なんかは一時の慰み物くらいにしか心得ず、飽きれば弊覆のごとくに捨てて省みないという風だった。彼の最近の情人、外国人舞台の一士官の妻君、がそろそろ鼻について来た矢先に、彼はエイミー・ジョリーという妖艶なキャバレーの歌姫と相識った。エイミーは金持ちの優男ラ・ベシュールをはじめ、自分に言い寄る許多の男達の騒ぐのを尻目にかけて、人々の注意をひくために、ことさらトムに特別の好意を示し、密かに彼女のアパートでトムを逢い引きした。トムは彼女が海千山千のしたたか者で、男なんかへをも思っていないことを知り、彼女に異常の興味を覚え、じりじりと彼女の魅力にひきつけられたが、彼女の虜となることをおそれ、すげなく彼女の許を去って街に出た所、そこには例の士官の妻が彼を待ち受けていた。エイミーも彼の後を追って街にやって来た所、彼が他の女と逢っているのを見て嫉妬を感じこれを邪魔しようとしたので、士官の妻が立腹し、野次馬や乞食共を買収してエイミーに襲いかからせた。彼女を庇おうとしたトムは街を騒がせたかどで軍隊に捕らえられ、懲罰の意味で危険な使命に服することを申し渡された。任務に赴く日トムは別れを告げるために彼女のもとを訪れたがラ・ベシェールが彼女に求婚しているのを立ち聞きし、ラ・ベシェールとの結婚が彼女を安楽と幸福に導くべきことを悟って彼女に当てた一通の手紙を残してこっそりその場を立ち去った。やがてトムは無事に危険な使命を果たしたが今更エイミーに会うことを欲せず、そのまま砂漠の中にある淋しい分遺所に留まる決心をした。一方エイミーは彼が負傷したことを聞き、ラ・ベシェールにせがんでとうとうその分遺所に連れて来てもらった。ラ・ベシェールはとうてい自分の恋が遂げられないことを知り、トムに力を貸して脱走させようと提議し、エイミーもまた彼と一緒に逃げることを希望した。しかしトムは若し真に自分を愛してくれるなら、彼女もまた立派な兵士の如く勇敢でなければいけないと行って脱走しようとはしなかった。やがて彼が部隊と共に砂漠に向かって行軍を起こした時、部隊の後に付き従っていくボロをまとい髪ふり乱した女軍の一隊があった。それは兵士達の赴くところどこまでも行こうとする彼等の妻や愛人達の一隊で、エイミーのけなげな姿がその中に見いだされたのはもちろんであった。
スタッフ・キャスト
- 監督
- ジョセフ・フォン・スタンバーグ
- 脚色
- ジュールス・ファースマン
- 原作
- ベノ・ビグニー
- 撮影
- リー・ガームス
- 字幕
- 田村幸彦
受賞歴
第4回 アカデミー賞(1931年)
ノミネート
監督賞 | ジョセフ・フォン・スタンバーグ |
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女優賞 | マレーネ・ディートリッヒ |
撮影賞 | リー・ガームス |
美術賞 |