眼には眼を

劇場公開日:

解説

フランス映画の社会派、「洪水の前」のアンドレ・カイヤットが、アルメニア生れの青年作家ヴァエ・カッチャの原作をとりあげた復讐劇。この二人が共同で脚本を執筆、「女と奇蹟」のピエール・ボストが台詞を担当した。撮影は「歴史は女で作られる」のクリスチャン・マトラ。「陽はまた昇る」のジュリエット・グレコが吹替えで一曲歌っている。主演はドイツ出身の国際俳優「眼下の敵」のクルト・ユルゲンス、イタリア出身、「大いなる希望」のフォルコ・ルリ。他にレア・パドヴァーニ、パスカル・オードレ、ポール・フランクール等が助演する。

1957年製作/フランス
原題または英題:Oeil pour Oeil
配給:東映
劇場公開日:1958年3月5日

ストーリー

砂漠の国シリアの小都市トラブロスの病院の、仏人医師ヴァルテル(クルト・ユルゲンス)はひょんなことから、一人の男につけ廻され始めた。--その男の妻の診療を彼が断ったため、病院へ向う途中、車が故障し、男は病妻を連れ、歩いてやっとたどりついた。更に悪いことに、宿直の若い医師が誤診し、手遅れになった。これらの不幸のもとは、みんなヴァルテルにあると、その男--ボルタク(フォルコ・ルリ)は思っているらしいのだ。深夜の怪電話。尾行。ヴァルテルの不安はつのった。彼が自分の立場を説明しようと、ボルタクを探し求めだすと、今度は逆に相手が逃げ廻る。ヴァルテルは彼を追ってアラビヤ人集落ラヤへ向い、途中、車が故障したボルタク父娘を拾った。ガソリンをきらせて、ラヤに泊った翌朝、ヴァルテルは奥地の村の怪我人の治療を頼まれた。その集落には白人への敵意が満ち満ちており、ヴァルテルは治療を断られた。その間に、彼の車のタイヤがなくなっていた。仕方なく泊った集落の喫茶店で、彼はボルタクに再会した。ボルタクは商用で来たのだという。ヴァルテルは病人の死について釈明した。翌日、ヴァルテルがラヤへ徒歩で向う途中、道端で休んでいるボルタクに出会った。ボルタクは後に残ると云ったのに。二度目に会った時、彼はボルタクのすすめで、ダマスクスへ近道の工事用ケーブルに同乗した。谷を渡っている時、彼の食糧と飲料の包がボルタクの身体にふれ、まっさかさまに落ちて行った。故意か? 砂漠--たまらぬ渇きが彼を襲い始めた。ダマスクスはまだか。あの山から見える。ボルタクはそう云ったが、そこからは何も見えなかった。山また山。草も木もない。罠だ。彼はボルタクに引っ張り廻されたのだ。一夜が明け、渇きはますますひどくなった。ダマスクスか井戸かと聞かれた時、彼は井戸を選んだ。井戸の方へ数キロ。が、それは空井戸だった。ついに、彼は倒れ、殺してくれ、死んだ方がましだと叫んだ。その時、ボルタクはやっと彼の本心を表した。俺も女房が死んだ時、そう思った。それを一度、おめえ、お医者様に言わせたかった。ボルタクは“復讐”を終えると、ヴァルテルにダマスクスへの道を教え、自分はそこでそのまま眼った。ヴァルテルはそのすきにカミソリでボルタクの手首を切った。ダマスクスへ十二時間以内に案内せねば、お前の傷はエソになる。ボルタクは泣き叫び、ヴァルテルを案内することを誓った。必ず治して下さいますな、お医者様。二人はよろめき歩き始める。ボルタクは傷の痛みに歩けなくなった。彼は倒れ、ヴァルテルにこの道をまっすぐ行けばダマスクスだと教えた。ヴァルテルは教えられた通りに歩み進んだ。ボルタクは倒れたまま笑いに笑った。蹌踉と歩くヴァルテルの行手は果てしない砂漠だった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

1.0「裁きは終わりぬ」は素晴らしかったが

2020年10月4日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

こういったリアリティの欠如した映画は、 劇中に入り込むことさえ難しく、 好きにはなれない。 復讐劇との予備知識で観たが、 そうとすると復讐者の行動が 余りにも不可思議で、 途中からひょっとしたら、 これは主人公が復讐と思い込んだ 幻想のドラマかと思ってしまった。 しかし、 結局は予備情報通りの復讐劇だった訳だが、 余りにもリアリティに欠けていないか。 医師を逆恨みするのは、 そもそもが冤罪に過ぎないし、 どんなに妻を愛していたとしても 娘や両親を残したまま、 己の命の危険を冒してまで、 このような行動に出るだろうか。 また、こんな復讐劇に至らなくとも、 この地に精通している彼なら、 いくらでも復讐の方法は有ったはずではないか。 人が人を裁く問題をテーマにしたという アンドレ・カイヤット監督だが、 個人的復讐劇に過ぎないこの映画では その目論見を余りにも矮小化していないだろうか。 「裁きは終わりぬ」が余りにも素晴らしい 作品だったので期待して鑑賞したが、 カイヤット監督に対する評価が一気に下がってしまう作品だった。

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KENZO一級建築士事務所

3.5答えのない難題に誘き寄せる罪深き映画

2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

「裁きは終りぬ」のアンドレ・カイヤット監督の、人種間に発生した怨念からの復讐をストレートに描いた問題作。後味の悪い結末に不快感を感じるより、作品が抱えたテーマについて深くため息交じりで考えてしまう力強いインパクトに、寧ろ感心してしまう。このような表現は、観る者の好悪が極端に分かれるだろうが、嫌いではない。観客がクルト・ユルゲンスと共に不安と恐怖の心境に追い詰められるサスペンスの、正当な罪深き映画。

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Gustav

3.0男の執念

2018年6月13日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

怖い

単純

妻を殺されたと思い込む男が医者を己の命もろとも執拗に追い詰める。ラストの街がもうすぐと言われた医者の目下に広がる広大な砂漠風景の絶望感が深い。

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mimiccu

4.0砂漠、砂漠、砂漠・・・

2016年8月17日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

怖い

噂に名高い心理サスペンスの傑作をTSUTAYAの発掘良品のおかげで初見出来た。 アラブの某国、非番のフランス人医師が急病の妻を診てくれと頼んできた男を邪険に断ってしまう。 結果妻は死亡、その日以来フランス人医師の周りで不可解な事が続き・・・。 常人には理解し難い男の徹底した復讐心とその手段が最大の見どころ。 アラブ社会と白人社会との延々と続く相互不理解の縮図とゆう捉え方も出来る。 またこの男が紳士的でムチャクチャ人の良さげなオジサンに見えるから余計に怖い。 見終えた後の感想はもう一言''絶望''。 もっと若い時期に、ましてやリアルタイムで観てたら、一生消えないトラウマ映画になってただろうな。

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マサミチ