見えない恐怖

劇場公開日:

解説

人里離れた郊外にまきおこる一家惨殺事件の鍵を握る盲目の少女が追われるミステリー編。製作はマーティン・ランソホフ、レスリー・リンダー、監督はリチャード・フライシャー、脚本はブライアン・クレメンス、撮影はジェリー・フィッシャー・音楽はエルマー・バーンステイン、編集はセルマ・コネルが各々担当。出演はミア・ファロー、ドロシー・アリソン、ロビン・ベイリー、ダイアン・グレイスン、ブライアン・ロウリンスンなど。

1971年製作/イギリス
原題または英題:Blind Terror
配給:コロムビア
劇場公開日:1973年4月21日

ストーリー

その日、セラ(M・ファロー)はバークシャーにある叔父の家に帰ってきた。彼女は盲目だったが、邸内は何不自由なく歩くことができた。翌朝セラは、競争馬の厩舎を管理している恋人のスティーブ(N・エシュリー)に会いにいった。彼は元気になって戻ってきたセラとの再会を喜び、すぐ乗馬に誘った。彼女はすぐになれ、盲目になる以前のように一人で走らせることができた。夕方になって家に戻ってきたが、人の気配が全然しなかった。だが、朝でかけるとき、叔父一家が外出して遅くなると聞いていたので何も心配しなかった。一人でコーヒーをいれ、眠ってしまった。夜中に眼をさましたセラは同室にいるはずのいとこのサンディ(D・グレイスン)を呼んでみたが答えなかった。彼女は皆眠っているのだと思い、再びベッドに入った。翌朝早く、スティーブが馬を連れてやってきた。二人は草原まで馬をとばしぞんぶんに乗馬を楽しんで、家に帰ってきた。しかし家は誰もいないかのように静かだった。彼女は入浴するために、バスにお湯を入れようとして手を入れた途端、悲鳴をあげた。手にふれたのは叔父の死体だった。サンディはベッドで殺されており叔母も殺されていた。恐怖心がセラを襲い、彼女は気を失った。数時間後、気を取り戻したセラは、今度は庭師のパーカーの死体にぶつかった。その傍にはブレスレットが落ちていた。そのとき、誰かが窓をこじあけて入ってきた。男はブレスレットを探しているようだった。セラは隙をみて外にかけだし、馬に乗って厩舎を眼ざして走った。だが、木にぶつかり放りだされてしまった。盲目の彼女にとって方向は全くわからなかった。木にぶつかり、根元に足をとられながら傷だらけになってやっとジプシーのキャンプにたどりついた。しかし彼らは、セラが持っているブレスレットを見ると彼女を廃鉱の中にとじこめた。一方、馬だけが戻ってきたのを不思議に思ったスティーブは、車でセラを探して廻った。やっとのことでセラを発見したスティーブは、ジプシーのことを聞くと仲間を呼び銃を持ってキャンプに向った。唯一の証拠品であるブレスレットにはJACKOと彫られていた。犯人はジプシー仲間のジャッコ(P・ニコラス)だった。スティーブはすぐさま厩舎に引き返した。セラの面倒を見るようにジャッコを残してきたのだ。セラはジャッコに押さえつけられバスの中につけられて意識はもうろうだった。ジャッコは逮捕され、セラを恐怖のどん底につき落した恐ろしい事件も解決した。

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写真:Album/アフロ

映画レビュー

4.0見えない相貌

2023年7月21日
iPhoneアプリから投稿

サイコスリラーは夜という状況と相性がいい。殺人鬼が私を殺すかもしれないという主観的恐怖に、真っ暗な夜という客観的恐怖を意図的にダブらせることで受け手の恐怖が倍増するからだ。しかし本作はそうしたサイコスリラーの常道に自ら背を向ける。夜という視覚的な外連味を極力排し、主人公の感じる主観的恐怖だけを丁寧に描き出す。

主人公のミアは盲人、すなわち五感の中で最も権威的である視覚を封じられている。彼女の認識はもっぱら聴覚と感覚を通じて行われるため、健常な周囲の人々とはものごとの認識に大きなタイムラグがある。彼女にとってはサイドテーブルに並んだ瓶の中からワインを選び出すことさえ一苦労だ。恋人から馬をプレゼントされた際も、目の前に既に馬がいるというのに、実際に手を触れてみるまでそれを認識できない。

こうした一連の描写から、我々は彼女の置かれた状況の恐ろしさをなんとなく理解する。殺人鬼が彼女の前に現れたとして、彼女は往年のサイコスリラー映画の主人公たちのように、咄嗟の機転で物陰に隠れたりすることも、反撃を加えたりすることもできないのだ。

加えて本作が巧妙なのは、ミアの失明状態を受け手にも疑似的に体験させることで、ミアの感じる恐怖により深くコミットできるような仕掛けが施されていることだ。本作では星のマークがついたウエスタンブーツの男が殺人鬼なのだが、彼の相貌は最後まで判明しない。カメラは常に殺人鬼の脚部だけを映し出す。我々もまた、部分的にではあるがミアと類似の状況に置かれているわけだ。見えないということは恐ろしい。それは本作のリファレンス元であるスティーブン・スピルバーグ『激突!』に登場するあの身元不明のトラック運転手が証明している。

ミアと殺人鬼が繰り広げる白昼堂々の逃走劇には鬼気迫るものがある。殺人鬼が家の中にいることを知ったミアは家の外へ逃げ出そうとするが、途中で棚の上の電飾に衝突し大きな音を立ててしまう。普通のサイコスリラーであれば稚拙なギミックに過ぎない描写だが、目が見えないという彼女の窮状を鑑みれば、それが彼女のパニック具合を如実に表したものであることが窺える。家から飛び出たあとの描写にしても、普通であれば真っ先に隣の家に助けを求めに行けばいいものの、彼女は家の隣の馬小屋に身を潜める。感覚によって周囲の地理を把握している彼女にとっては、それが唯一の逃走線なのだ。

馬に乗って命からがら殺人鬼の魔の手を逃れたミアだったが、辿り着いたジプシーの村落でも一悶着が。ここではジプシーのジャックという男が殺人鬼であることが仄めかされる。ジャックの相貌がカメラに映し出されたとき、受け手はようやく真相が見えたことにひとときの安堵を覚えるが、ある程度勘の良い者は彼の脚部だけが映されていないことに気がつく。事実、彼は冤罪者であり、真実は再び闇の中へ。このときミアは息子が殺人鬼だと勘違いしたジャックの父親によって廃坑の小屋に閉じ込められてしまうのだが、盲人が周囲に何もない廃坑に放り出される恐怖は計り知れない。打ち捨てられた廃車を金属片で叩きながら「HELP」と叫び続ける彼女の心境は、さながら大洋の真ん中で旗を振り続ける海難者のそれに近かったに違いない。

以降の展開にはややドンチャンやりすぎな感じもあったが、主人公の主観的な恐怖だけに焦点を絞って丹念に描写を紡ぎ上げていく姿勢に概して好感の持てる一作だった。

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因果

3.5『シーフォーミー』と同じ盲目の設定

2022年12月18日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

『ローズマリーの赤ちゃん』や『カイロの紫のバラ』のミア・ファロー主演です。

盲目の女性が、一家惨殺の事件に遭遇しますが…。

今年、映画館で観た『シーフォーミー』と同じ盲目の設定。

『シーフォーミー』は、この映画の影響あるのかな?

緊張感や緊迫感は、あまり感じなくて、残念…

緊張感や緊迫感あふれ、ハラハラするのが、観たかった…

ガッカリ作…(笑)

『激突!』のオマージュ?は良かった。

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RAIN DOG

2.5見えても恐怖

2021年5月26日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

怖い

興奮

ミア・ファローが不憫で仕方がない、ガラスの破片にヒヤヒヤ、馬で脱出成功かと木の枝が障害物、元の場所に帰れる馬の従順さが可愛い、急なビンタと泥だらけの姿、絶体絶命のピンチにバッドエンド!?

星を象ったウェスタンブーツ、犯人は常に足下だけを映す演出は鈴木清順の「刺青一代」でも赤い靴の足下だけを描写する意気で斬新な手法か。

犯人が見えない恐怖心もあるが何処にいるのかすら分からない状況が怖い、目が見えていても知らない場所に取り残されたら絶望すら感じてしまう。

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万年 東一

3.0観客だけは知っている

2020年11月12日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 家に帰ると誰もいない・・・たしか出かけるときに「遅くなるから」と言ってた叔父。とりあえず従妹のサンディと一緒の部屋で寝てしまおう・・・だけど隣のベッドにはサンディの死体。朝起きて風呂に入ろうとバスタブに湯を張る・・・しかし、バスタブには叔父の死体が。盲目のサラにとっては見えない惨劇が観客にはわかる仕組みなのだ。

 ストーリーはワンシチュエーションだけど、緊張感を持続。事実を理解したサラの表情が素晴らしいのだけど、『ローズマリーの赤ちゃん』でミア・ファローの演技を知ってるので恐怖感はそれほど伝わってこない。どうしても実際に盲目だったらどうなの?と考えてしまうシーンが多いのかもしれない。

 犯人はジプシーの青年だと思わせておいて、実はそうではない。などとわかりやすい展開ではあるけど、執拗なまでに★がついた犯人のブーツばかりを追ったカメラなど、実験的手法がおもしろかった。

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kossy

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