劇場公開日 1964年12月1日

「スタジオ・ミュージカルの傑作」マイ・フェア・レディ 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 スタジオ・ミュージカルの傑作

2025年12月24日
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ロンドンのコヴェントガーデンで籠に入れた花を行き交う人々に売って細々と生計を立てていた主人公のイライザが、言語学者のヒギンズ教授に研究対象として選ばれ、生来のコックニー訛りを徹底的に矯正される。発音もイントネーションも、とても同じ国の言葉とは思えないほど乖離しているのに、イライザは血の滲む思いをしながらヒギンズの特訓に文句を言いながら耐えている。最大の見せ場は2箇所、イライザが社交界デビューするアスコット競馬場のシーンと、その後に訪れる舞踏会のシーンだ。

特に、アスコット競馬場のセットをハリウッドのワーナースタジオ内に設営し、そこで社交界のマダムたちが思い思いの衣装を纏ってまるで機械仕掛けの人形のように動き回る様子は、華やかさとシュールさが入り混じった複雑な味わい。もちろん、アスコットと舞踏会でイライザ役のオードリー・ヘプバーンが着るコスチュームの豪華絢爛さは言うまでもない。後にオードリーは、『私は何もしなくてよかった。ドレスが演じさせてくれたのだから』と、その時に体験を振り返っている。

オードリーの歌の多くが吹き替えられていたことが必ず取り沙汰されるが、同じ時期に舞台でイライザを演じたジュリー・アンドリュースがハリウッドデビューしたことで、ハリウッドミュージカルは吹き替えの時代から本人歌唱の時代へとシフトして行った。時代の転換機に堂々と製作されたスタジオ・ミュージカルの傑作、それが『マイ・フェア・レディ』なのだ。

清藤秀人
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