「オードリー・ヘップバーン主演の英国階級社会を炙り出す奥の深い傑作ミュージカル」マイ・フェア・レディ Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
オードリー・ヘップバーン主演の英国階級社会を炙り出す奥の深い傑作ミュージカル
ジョージ・キューカー監督(ベストフレンズ、スター誕生等)による1964年製作の米国ミュージカル映画。
原題:My Fair Lady、配給:ワーナー・ブラザース
昔、高校生の時に名画座で見て相当に好きになって、ビデオもレコードも購入したお気に入りのミュージカル映画。
英国が徹底的な階級社会であることを、この映画で知った。そして、階級を分けるものとして、言葉及び発音の違いがあることも。
オードリー・ヘップバーンによる言葉使いが最低な下町娘から高貴な令嬢の演技分けが見事だった。そして、レックス・ハリソンによる貴族階級の学者の表現も実にお見事。
そして、名曲の数々。ヘップバーン演じる下町娘イライザが言葉矯正による変身を夢見て歌う「素敵じゃない?」、上品な英語発音をずっと話せず苦しんでいたイライザの“The rain in Spain stays mainly in the plain.”の初めての発声成功から始まる「スペインの雨」、そして舞い上がるイライザが今夜は嬉しくて寝られないと歌う「踊り明かそう」(実際はマーニ・ニクソンの吹き替え)。音楽も素晴らしいが、歌に入る導入設定もお見事。
イライザに恋する若者が歌いあげる「君住む街で」(大好きな娘が隣り町に住んでいて、当時の自分の行動と気持ちにピタリとハマった)、英国庶民を代表するイライザ父(スタンリー・ホロウェイ)のいい加減さと楽天さ・憎めなさが見事に描写される「運が良ければ」と「時間通りに教会へ!」等。
上流社会の競馬観戦(イライザが熱くなって、思わず下町言葉で叫ぶ)や舞踏会(あまりに綺麗な発音で、外国の王室令嬢と噂される)も、大変に興味深かった。
ラスト、イライザが出て行ってしまい教授が彼女の昔の悪い発音の録音を聞いていたとこ、イライザが帰ってきて過去の台詞を生で言い、それに教授が帽子を下げて嬉しさを隠して、「私のスリッパはいったい…どこ?」とプロポーズらしき言葉を言う、何てお洒落な終わり方と感動をした(今だと女性差別と言われそうだが)。
原作戯曲はジョージ・バーナード・ショウ(シーザーとクレオパトラ等)、脚本はアラン・ジェイ・ラーナー(巴里のアメリカ人等)。
撮影はハリー・ストラドリング、編集はウィリアム・ジーグラー、音楽はアンドレ・プレビン(サンセット物語等)及びフレデリック・ロウ(星の王子さま等)。
出演は、オードリー・ヘプバーン(イライザ)、レックス・ハリソン(ヒギンズ教授)、スタンリー・ホロウェイ(イライザ父)、ウィルフリッド・ハイド=ホワイト(ピカリング大佐)、グラディス・クーパー(ヒギンズ母)、ジェレミー・ブレット(フレディ)、セオドア・バイケル。