慕情(1954)

劇場公開日:

解説

雑誌平凡に連載された富田常雄の原作より「鳴門秘帖 前篇(1954)」の舟橋和郎・棚田吾郎が脚色、「三代目の若旦那」の佐伯幸三が監督に当っている。撮影は「こんな別嬪みたことない」の板橋重夫が担当。出演者は「花のいのちを」の菅原謙二、沢村美智子、「舞妓物語(1954)」の若尾文子、「厳ちゃん先生行状記 処女合戦」の田崎潤などである。

1954年製作/97分/日本
劇場公開日:1954年6月6日

ストーリー

全日本柔道選手権大会の決勝で敗れた矢沢謙次は、その夜公園のベンチで、睡眠剤を飲み苦悶する西村マツを救い、病院につとめる兄達夫の同意を得て、自分達の下宿に引き取る事にした。戦災で両親を失い、唯一人の姉の行方を探しているマツの心は荒んでいたが、謙次の親切さに次第に素直になり、いつか謙次に対して愛情をさえ抱く様になった。併し謙次には某製薬会社専務の令嬢・佐々木知英子という恋人がいた。この二人の仲を中傷したのがマツで、彼女は謙次の会社の社長宛に匿名の手紙を出した。謙次の柔道の奨励者である社長は謙次を叱責した。その上謙次は、知英子から“新しい金持の恋人と結婚するから、貴方との事は水に流す”と云われ、自暴自棄に泥酔した末、与太者と乱闘をやり、見事な腕の冴えを見せた。それを見ていた山下という男に誘われた謙次はそれに応じて神戸に行き、山下の経営するキャバレーの用心棒となった。そこで謙次は麻薬患者の女給・伊佐子を知り、彼女を麻薬から救ってやろうと考えた。一方、マツは自分のいたずらを後悔し、遥々神戸を訪れ、謙次に本心を打ち開けた。だが、謙次と伊佐子の関係を誤解して再び帰京した。偶然伊佐子がマツの姉だと知った謙次は直ぐさま伊佐子を伴って帰京したが、既にマツは置手紙をして家出していた。謙次は伊佐子の治療を兄に依頼し、再び柔道に精進する傍ら、毎日マツを探し歩いた。新宿の飲み屋、草の穂に職を見つけたマツは、或る夜謙次の下宿に忍び寄り、神戸で見た伊佐子こそ自分の姉である事を知って驚いた。ようやくマツの居所をつき止めた謙次は、自分の許へ帰る様に促したがマツは拒絶した。明けて、再び巡り来た全日本選手権大会の日--草の穂を出たマツは誤って与太者の拳銃に倒れ、達夫と伊佐子の看護を受ける身となった。そこへ、大会で優勝した謙次も現れ、総ての誤解もとけ、ようやく謙次とマツは手を握り合った。

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