「イチローが好きな映画ということですぐ観ました。」星の王子ニューヨークへ行く 植田仁さんの映画レビュー(感想・評価)
イチローが好きな映画ということですぐ観ました。
映画『星の王子ニューヨークへ行く』(原題:Coming to America)は、1988年に公開されたエディ・マーフィ主演のロマンティックコメディ映画で、多くの観客に笑いと感動を届けました。この映画は、アフリカの架空の国ザムンダの王子アキームが、真実の愛を見つけるためにニューヨークを訪れる物語を描いています。エディ・マーフィの個性あふれる演技と、時にシニカルでユーモラスなストーリー展開が見どころの作品です。
まず、この映画が素晴らしいのは、その物語の普遍性にあります。裕福で何不自由ない生活を送るアキーム王子が、親の決めた結婚に反発し、自分自身の価値観に基づいた結婚相手を探そうとする姿は、多くの人が共感できるテーマです。「愛は外見や財産ではなく、心からのつながりによって築かれるべき」というメッセージが、映画全体を通して一貫して描かれています。このテーマは、30年以上経った現在でも色あせることなく、観る者に新鮮な感動を与えます。
また、この映画のもう一つの魅力は、エディ・マーフィとアーセニオ・ホールが1人で何役も演じ分ける「変身芸」です。彼らは、主人公アキーム王子やその友人セミだけでなく、ニューヨークの床屋や教会のメンバー、さらには女性キャラクターまで演じており、これが映画の笑いの重要な要素となっています。それぞれのキャラクターが持つ個性的な性格と掛け合いが、場面を軽快に進め、観客を飽きさせません。この多重演技は、当時の特殊メイク技術と俳優たちの演技力が相まって実現したもので、映画の独自性をさらに高めています。
ニューヨークという舞台設定も、この映画の成功を支えています。ザムンダという絢爛豪華な架空の王国と、1980年代のクイーンズ地区の対比は、文化的なギャップをコメディの要素としてうまく活用しています。アキームが豪華な王宮生活から一転して、ニューヨークの質素なアパートに引っ越すことで起こるカルチャーショックや、その中で少しずつ地元の人々と交流し適応していく過程が、笑いと感動を生み出します。また、アキームとリサの関係を通じて、異文化間の理解や共感が重要であることも描かれています。
一方で、この映画が提示する社会的なテーマも見逃せません。1980年代のアメリカ社会における人種や階級、そして消費主義の問題が、皮肉とともに描かれています。特に、アキームがニューヨークで経験する様々な出来事は、アメリカ社会の複雑さや矛盾を反映しており、それが笑いの中にも鋭い社会批判として表現されています。これらのテーマが背景にあることで、この映画は単なるコメディ以上の深みを持っています。
さらに、音楽や衣装の素晴らしさも忘れてはなりません。特にザムンダ王国の場面で見られる豪華な衣装や装飾は、アフリカ文化の豊かさと誇りを感じさせます。また、ニューヨークのシーンでは、1980年代の流行を取り入れたファッションが観られ、時代性を感じることができます。音楽も物語を盛り上げる要素として秀逸で、特にラブストーリーの感情を強調する場面で効果的に使われています。
結論として、『星の王子ニューヨークへ行く』は、愛と笑いに満ちた物語で、観る者を心から楽しませる映画です。エディ・マーフィの才能や、文化や価値観の違いを超えた人間関係の描写、そして普遍的なテーマが、この作品を時代を超えた名作にしています。現在もなお、コメディ映画の金字塔として多くの人に愛され続けている理由がよくわかる作品です。この映画を観終わった後には、笑顔とともに、愛の力や他者を理解することの大切さを改めて感じることでしょう。