冒険者たち(1967)のレビュー・感想・評価
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【今作は、一度は夫々の夢破れし男女三人が南の海で沈んでいた宝を引き上げる所から始まる、愛と絆を描いた粋な冒険譚であり、後世の作品に影響を与えたと思われるシーンが多数有る作品でもある。】
■巴里に住みながら、
1.レーシングカーのエンジン開発に取り組むローラン(リノ・ヴァンチュラ)
2.パイロットを目指すマヌー(アラン・ドロン)
3.芸術家として名を上げたい紅一点レティシア(ジョアンナ・シムカス)
は、貧しいながら夢を目指すが、夫々挫折する。
だが、マヌーを凱旋門の下を括らせる飛行をさせた男ヴェルタンの嘘がバレ、逆に3人は彼からコンゴの沖合に沈んでいる飛行機に財宝があるという話を聞き出す。
三人は新たな夢のために、コンゴに行き飛行機の生き残りの男(セルジュ・レジアニ)から、飛行機の位置を聞き出し見事に財宝を見つけるが、その事を知っていた男達に襲われてレティシアは銃弾に斃れてしまう。
フランスに戻った二人は、レティシアの故郷を訪ね、自分達と仲良くなった少年と彼女の事を悪く言う叔父夫婦に1億フランを渡し、叔父夫婦ではなく少年が成人したら手に出来る様にする。
少年の案内で沖の要塞島に渡った二人。マヌーは巴里に戻り財宝により派手な生活を送るが、ローランは残りレティシアが語っていた”海に浮かぶホテル”を実現させる夢を持つのであった。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作では、男女三人の夢と破綻と新たなる夢と、三人の絆と粋な心意気が瑞々しく描かれている。
1967年の公開だそうだが、古さは感じさせない映像である。
・アラン・ドロンもジョアンナ・シムカスも、若く美しい。そして名優リノ・ヴァンチュラはチョイ、オジサンだが抜群の存在感を放っている。
劇中で、ジョアンナ・シムカス演じるレティシアは、マヌーではなくリノ・ヴァンチュラ演じるローランに、恋心を告げているのだが、ここが良いのだなあ。
【見る眼がある美しき女性は、若きイケメンよりもイケオジを選ぶんだよなあ・・。】(ココ、強調!)
・凶弾に倒れたレティシアを、潜水服に入れて南国の海に水葬するシーンの哀しくも美しき陽光が降り注ぐ海中からのアングルが素晴しい。ローランもマヌーも、粋なのである。友情を分かち合った友を、敬意を持って葬る姿。
・そして、飛行機の生き残りの男を脅してマヌーの所に来た男達に口を割らない姿も粋である。
とにかく、この映画は随所で粋なのである。例えば、ローランもマヌーがレティシアの悪口を言った叔父夫婦ではなく、彼らの子で二人に親切にしてくれた少年に1億フランを渡すシーンや、ローランがレティシアが生前に語っていた”海に浮かぶホテル”を実現させるべく、巴里に戻らずに彼女の故郷に留まる姿など。
■私が、この映画に影響を与えられたシーンの中で、これは間違いないのではないかと思ったのが、グレイグ・ボンドの007の「スカイフォール」での軍艦島でのハビエル・バルデム演じるラウルとボンドとの戦いのシーンである。
あと、幾つかあるが、この映画の宝物を見つけるという究極の冒険譚の流れの描き方は素晴らしい。
<ラストも、哀しいが粋である。男達の凶弾に倒れたマヌーに対し、男達を全滅させたローランは”レティシアはお前と暮らすと言っていたぞ。”と言うのに対し、マヌーは”嘘つきめ”とニヤッと笑って息絶えるのである。クー!粋だなあ、二人とも!
今作は、一度は夫々の夢破れし男女三人が南の海で沈んでいた宝を引き上げる所から始まる、愛と絆を描いた粋な冒険譚であり、後世の作品に影響を与えたと思われるシーンが多数有る作品でもある。>
あの1967年、映画好きな青年は誰もがジョアンナに恋をしたんだよ
NHKのBS4Kで放送されたのを録画して久しぶりに鑑賞。
やっぱり大好きな映画です。
この映画が公開された年は、私が大学受験予備校生として北関東の片田舎から東京へ上京した年であり、あの3億円事件が発生した年でもあるわけで、後期高齢者のジジイになった今では信じがたいほど都会で観るもの体験するものがどれも新鮮に思えて、町並みを歩くだけで高揚感にうきうきしていたものです。
そんなときに観た、この映画は理屈抜きで若い田舎者を魅了しました。
二枚目として油の乗り切ったアラン・ドロン、主にノワール映画で活躍して大のファンだったリノ・ヴァンチュラ、そしてなによりもニューフェースでヒロインのジョアンナ・シムカスに魅了され、5,6回は映画館通いを繰り返したものです。
映画批評になんか関係なく、間違いなく当時、多感だった若者の心を射抜いた、私の永遠の青春映画ナンバーワンです。
意外に奇怪!
財宝を得る代わりにかけがえの無い存在を失う
ラ・ロシェルの沖合に浮かぶ要塞フォール・ボワイヤール
なんて、素晴らしい映画だろう!中学生の時に見た「サムライ(学校からよく許可が出たものだ)」高校の文化祭の時の「太陽がいっぱい(映画研究会のドル箱)」、あの頃、ちょうど封切りだったこの映画も見ていたら、何と思ったことか。
3人の俳優が魅力的だった、アラン・ドロンの扮するパイロット、マヌー、リノ・ヴァンチュラの演じるローランドに、可憐なジョアンナ・シムカスのレティシア。
筋立ては、どうということはない。マヌーの操縦はうまいが、チャレンジングで、やや騙されやすいか。ローランドは、レーシングカーのエンジンの設計に打ち込み、特許の取得を目指している。一人でやっているからか、なかなかうまくは行かない。レティシアは、モビールなどに挑む新進の前衛彫刻家、個展を開いて注目は集めるが、新聞での評論は散々。
滑走路に近いローランドの仕事場で一緒になった3人は、リスクを承知の上で、コンゴ動乱の際、混乱の中で海に墜落した小型飛行機に積まれていた財宝を探しに行くことになる。
コンゴの海岸で捜索中に無理やり加わってきた墜落した飛行機の操縦士は、確かに財宝を探す上では役に立ったかもしれないが、余計な闇社会の男たちの介入を招いてしまう。
マヌーとローランドは、やっとのことで財宝を手に入れて、リティシアゆかりの港町ラ・ロシェルにゆき、沖合に浮かぶ要塞フォール・ボワイヤールを目にする。そう言えば、以前、フランスのテレビで、ラ・ロシェルの要塞を舞台にしたアドべンチャー・バラエティ番組があった。今でも放映されているだろうか。
この映画からは、撮影時のアラン・ドロンの日本での人気ぶりがうかがわれた。2度も日本に関連した場面がでてきた。日本の映画会社のパリ事務所と、パリの和食レストラン。その頃、既にサントリーレストランはあったのだろうか。ホテル・ニッコー・ド・パリができたのは、もう少し後だったろうから。
男同士の友情、男女の愛と並んで、パリの郊外の滑走路や曇り空の凱旋門、コンゴの海岸のあくまで青い空と海、それからラ・ロシェルでの空撮を含めた爽快な情景が心に残る。
この映画を観たら、心を完全にリセットすることができた。映画を見る一番大事な理由を想い出させてくれた。
何時に見ても色褪せない生涯BEST2位作品。
ローランとマヌーの友情をレティシアが絡むことで更に熱いものにしている。この作品には若きアラン・ドロンの全てが詰まっている。クールでダンディでワイルド。そして儚さ。ドロンの歌うドルーべのレティシアのテーマがまた聴きたくなりました。★−0.5点は自身が中坊の時にラストの要塞城を延々とカットせず見せてくれたTVのロードショーが一番感動した為。
最初から最後まで美しい
レティシアが美しかった
新型レーシングエンジンの開発に取り組むローラン(リノ・ヴァンチュラ)と、その友人でパイロットのマヌー(アラン・ドロン)、そして、ローランの工房に材料探しにやってきた芸術家レティシア(ジョアンナ・シムカス)と、それぞれの夢を持った3人。
しかし、マヌーは所属する飛行クラブから請け負った凱旋門の下を飛行機でくぐり抜けに挑むがフランス国旗を立てられ失敗し、危険な行為だとパイロットライセンスを停止されてしまった。一方ローランは完成したエンジンのテストを行うが、走行中にエンジンが爆発し失敗。さらにレティシアも、ようやく開いた個展を批評家たちに酷評された。
傷心の3人は一路コンゴの海に向かった。そこには数年前のコンゴ動乱の際に国外脱出を図って墜落した飛行機が、莫大な財宝を積んだまま沈んでいるとのことだった。そして・・・どうなる、という話。
アラン・ドロンは相変わらずの長身でイケメンだけど、本作の主役は美しいレティシア役のジョアンナ・シムカスだと感じた。
そんなにエロくは無かったが、溶接機持って車のドアパネルで作品を作ったり、飛行機やバイク、船に乗っての可愛い笑顔など魅力的だった。
大金が入った後の夢も良いな、って思ったし、そんなレティシアに惚れた2人のその後の行動も良い。
軍艦島のフォート・ボワヤールに行ってみたい、って思った。
☆☆☆☆ そうか、劇場鑑賞は初になるのか! テレビで軍艦島の特集を...
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そうか、劇場鑑賞は初になるのか!
テレビで軍艦島の特集を見る度にこの作品を思い出す人は多いはず。
先日、94歳で亡くなったシドニー・ポワチエの追悼作品鑑賞を。奥さんのジョアンナ・シムカス作品のこちらを鑑賞して、間接的な追悼鑑賞とする悪あがき(^^;)
最近はテレビでも放送されなくなっちゃったけど、随所に60年代の香りが漂っているところは捨てがたいモノがある。
今だと、色々な整合性を持たせる為に、1つ1つのショットを必要以上に見せ。尚且つ、そのショット自体が長くなりすぎるきらいがある作品が多い。
それに反し、60年代のこの作品だと。そこまで詳しくは描かずに、ある程度のところでぶった斬る編集が、今の若い人達が観るとどうなのだろう?…と、少しばかり不安にはなる。
当時から熱狂的なフアンを獲得した、ある意味では《カルト》映画のはしりの作品ですが。後半に登場する【殺し屋軍団】の存在感の薄さが、悲しくなる程に情けなく見えてくるのがどうなんだろう?
ラストシーンが神格化した作品でしたが、今では簡単にドローンで撮影出来る。
昔は機材をヘリコプターに詰め込んでの撮影自体が大変な苦労だっただろうから、「凄いな〜!こんな撮影が出来るんだ!」…と思った人が多かったんじゃないだろうか。
2022年1月26日 シネマブルースタジオ
今日のブルースタジオで鑑賞した回での観客は、自分を含めて安定の4名(u_u)
捨てがたい味のある映画
男のロマンチシズムと永遠のヒロインへの思慕
いろいろと思うこところはあるが、恋とか友情とか。この三角関係に最後...
いろいろと思うこところはあるが、恋とか友情とか。この三角関係に最後まで持っていかれた。
マヌーから一緒に暮らしたいと言われても、レティシアは3人で楽しく暮らせたら...とかいう感じで、けっこう気持ち出してる。
ローランはマヌーの気持ちを察してる。だから、答えない。
マヌーはレティシアがローランに惹かれているのがわかる。ローランに対して、だからレティシアの夢を叶えようとしてるんだろう?的なことを言ってみたり。
そして、このラスト。2人とも情が深いから、じんわりとなる。泣けるよりも熱く。
『明日に向かって撃て』のフランス版だ
通俗のギャング映画の形で表現された、ロベール・アンリコ監督の映画愛溢れる青春映画
端的に言えば、映画として成立していればどんな作品でも、名画、名作、傑作、秀作、佳作、力作、大作などの称号を与えられれば格好が付くものだ。しかし、このロベール・アンリコ監督の「冒険者たち」という映画は、そんな概念を問題にしない。青春の挫折と夢への挑戦の冒険活劇という大人気無い世界観にある、誰もが通過する純真な時代への郷愁を刺激して、これこそ自分たちの映画だと言う気高さがある。ストーリーの表面上の深刻さとは別に、アンリコ監督の優しさに溢れた世界観に魅了されて、いい映画に出会えた感動に包まれるのだ。
いい加減大人になっていい男二人と女一人が好きな道で失敗する前半の面白さ。実際には、好きな道での挫折は大きな打撃であり心身ともに堪えるものだが、1970年代のニューシネマ以前の青春映画に位置するからなのか、社会に対する怒りより自分の不甲斐なさに苦悶する姿が共感を呼ぶ。そして、この三人が一つの大きな希望に向かってアフリカの海に臨むロマン。映像は、それを何と美しく鮮烈に捉えていることか。海風と潮の匂いが漂うアンリコ監督の演出が素晴らしい。都会の雑踏を遠く離れ、飾りを捨てた三人のありのままの姿、その自然に溶け込む主人公たちの人間らしい、愚かさ、律義さ、欲望、正義感などの思いが、海に浮かんでいる。
そして、お決まりの嫌な奴の登場。安直なギャング映画のコントラストを加えて、俗っぽい魅力が引き立つ要因になっている。続くヒロイン・レティシアの死。この水葬シーンの美しさをなんと表現しよう。神聖な美しさにしばらくただ息を呑むしかなかった。
男二人は、大金を見事探し当て大金持ちになるが、けして贅沢をしない。ジョアンナ・シムカス演じるレティシア(なんて奇麗な名前だろう!)の従弟に財産を分け与える挿話は、挫折から続く同じ仲間意識の極自然な流れがいい。最後は、三人の夢の象徴である、海に浮かぶ要塞跡を舞台に、大金目当ての大人が登場してギャング映画らしく結末を迎える。アンリコ監督の映画好きが痛いほど伝わるラストシーンの切なさが、堪らない。
「太陽がいっぱい」のアラン・ドロンのもう一つの代表作であり、その対比で渋い男の魅力が更に増したリノ・ヴァンチュラの紛れもない代表作の一本。そして若くして引退したシムカスの貴重な代表作。映像の世界観と調和したフランソワ・ド・ルーペ作曲のテーマ曲「レティシア」の素朴な美しさも忘れ難い。
1978年 5月3日 高田馬場パール座
ロベール・アンリコ作品では「ラムの大通り」「追想」があるが、やはりこの「冒険者たち」が最もいい映画だと思う。映画が好きで好きで堪らないアンリコ監督の映画青年のような演出の繊細さと瑞々しさが感じられて、特別な存在にあるフランス映画になっています。
レティシア
制作当時、アラン・ドロン31歳、リノ・ヴァンチュラ47歳、決して若くはない二人の男に、何とも可憐で瑞々しいジョアンナ・シムカス、この3人の男女が夢を求め、野望に満ちた冒険に挑む、どこか無器用で不得要領の3人による、痛快で、ほんの少しセンチメンタルな名作です。
少しは人生経験を重ねて世事人情に通じた中年の男、己の野心へ一直線に猛進する若者、自らも夢を求めつつ彼らを優しく包容する女、この絶妙な組合せは、本作の2年後、『明日に向かって撃て!』でも踏襲され、寧ろ邦画で多くのオマージュ作品を作られたパターンですが、全て本作が起源です。
やはり、それはジョアンナ・シムカス演じるレティシアの、愛くるしい温雅な存在感に起因します。
若者の夢と野望を追い求める直向きさ純粋さ、そしてそれが挫折した後の空虚感と脱力感。でも青春は常に新たな冒険を見出し全力疾走する、若さゆえのその不屈の勇猛心と果断さ。そこに立ちはだかり阻害する邪な大人たちを撥ね退け、一途に突進するその逞しく美しい若者像には、遥か遠い過去に失ってしまった覇気と膂力への憧憬を心から感じます。
エッフェル塔を目指すパリ市街のスリリングな俯瞰映像、熱帯の太陽に眩く照り映える海の美しさ、そして不安と緊張によるトランス感を高める要塞島廃墟、印象的な情景が数多いのも本作の魅力ですが、何よりレティシアが滄溟の海中に沈んでいくシーンの、モノトーンの蒼い陽光に包まれた凄絶なまでの壮美は、いつまでも記憶に残ります。
男女3人の奇妙で微笑ましい友情と愛情、心地良いその関係が呆気なく破綻した後、夢に辿り着いたにも関わらず二人の男に去来する虚しさと遣る瀬無さは、レティシアの沈むシーンが強烈に効いて大いに共感させます。
本作を彩る、今一つの大きな要素は、口笛で奏でられる、いみじくも「レティシア」と命名されたテーマ曲でしょう。あの哀愁に満ちつつもリズミカルで流麗な旋律は、青春のロマンを感じさせつつ、切なく儚い本作のラストを想起させ、今聞いても胸が熱くなります。
たまに見たくなる映画
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