「若き日の彼をスクリーンでも見たいけど…。」ベン・ハー(1959) TRINITY:The Righthanded Devilさんの映画レビュー(感想・評価)
若き日の彼をスクリーンでも見たいけど…。
アカデミー11部門受賞の歴史超大作。
本作の最大の欠点は、とにかく長いこと。
随分前にTVで録画し頑張って全編見たあと、短い二箇所の場面を除きすぐ部分消去(というか大部分消去?!)。
保存した二つのシーンに共通するのは、子供の頃好きだった俳優がエキストラで出演していること。今でも時どき見返している。
彼はもともと主演のチャールトン・ヘストンのスタント(有名な戦車競走のシーン)として採用されたのに、身長が2インチ低かったためにエキストラに回されたという話が一般的に知られているが、そんなことは選考段階で分かってた筈。
その話が本当だったにしても、「悪いけど、ほかのスタント使うから」で済むことなのに、セリフこそないものの、彼は結構目立つ場面で登場する。
今のようにCGで顔だけ張り替える技術のなかった本作の製作当時、役者の顔を映さないのがスタント撮影の大原則。
あくまでも自分の勝手な想像だが、おそらくスタッフ(少なくともエキストラの起用に口出しできる立場)の誰かがこう思ったのでは。
「彼の顔を映さないなんて間違ってる。この顔を使わないのはもったいないだろう」と。
彼の最初の登場場面は、家族を捕らえられた主人公ベン・ハーが旧友の司令官のもとへ抗議に乗り込むシーン。司令官の護衛役を演じている。
もう一つはローマ史劇お約束(?)のローマ風呂のシーン。彼はここで器械体操や俳優デビュー前の肉体労働で鍛えた筋肉美を披露している。そして、のちに彼の代名詞ともなった100万リラのスマイルも。
彼には別に「マカロニの貴公子」というニックネームもある。
本作の五年後に始まったマカロニ・ウエスタンブームに乗って脚光を浴び、彼も一躍世界的な大スターに。
国内のロングセラー・スクーター、SUZUKIジェンマも彼、ジュリアーノ・ジェンマの人気にあやかったもの。
「午前十時の映画祭」の企画で全国の劇場で上映されているが、冒頭でも指摘したとおり、やたら長いことが作品の欠点。
戦車競走などスペクタクルシーンはあるものの、物語の骨格はキリスト教史観。
宗教的シンパシーや何らかのモチベーションがないと、4時間近く座って見てるのは結構しんどいと思う。単なるアクション・スペクタクルだと思って見に行くと、睡魔はあなたを容赦しない。
自分も若い頃のジェンマを劇場の大きいスクリーンで見てみたいけど、隣の知らない人に「ジェンマ出たら起こして」とお願いする訳にはいかないし…。
これから見に行かれる方はしっかり睡眠とって、体調を整えてご覧になることをお薦めします。
個人的には、かつて日本でも人気のあったジェンマの登場場面にも、是非ご注目を。