「スペクタクルの全てが詰まっている!」ベン・ハー(1959) しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
スペクタクルの全てが詰まっている!
第32回米アカデミー賞作品賞受賞作。
Blu-ray(製作50周年デジタル・リマスター版)で鑑賞(吹替)。
親友に濡れ衣を着せられ、奴隷に落とされてしまったベン・ハーの復讐劇を、壮大なスケールで描いた超大作。
ハイライトの戦車競争の迫力たるや、何者にも負けない凄まじさを誇っていて、本物だからこそ醸し出せるスリルに手に汗握まくりの名場面だなと思いました。俳優もスタントマンも命懸けで挑んだのだろうし、その気迫と情熱がそのまま役柄の想いと重なって、画面から迫って来るように感じました。
それに、コロシアムのセットのスケールがえげつないなぁ、と…。今ならCGを使えばちょちょいのちょいなのでしょうけれど、実際につくり、観客のエキストラも用意して撮影されていました。これが大スクリーンに映し出されていた当時、映画館で観られた人がめちゃくちゃ羨ましいなと思いました。
そして、映画にこれだけ多額の資金を掛けられるハリウッドよ…。素晴らしいし、これまた羨ましい…。スペクタクルの真髄を見せられたようで感無量! 昔から培われて来た手法が連綿と引き継がれ、新たな才能と結び付いて進化しながら今日まで来ているのかと考えると、涙がこみ上げて来ました…
「モンテ・クリスト伯」しかり、どん底から這い上がって、自分を貶めた者への復讐を果たすという物語は、誰の心にも熱く語り掛け、主人公への並々ならぬ共感を呼ぶものだと思います。ガレー船の災禍を生き残り、戦車競争を征して復讐を果たしたベン・ハーでしたが、それだけで終わらないのが、本作のもうひとつの面白いところでございます…
原題の副題「イエス・キリストの物語」が示す通り、キリストとの邂逅を経て救いと赦しを悟る様が、宗教色が強いと難色を示す声が多いながらも、個人的にはとてもしっくり来るようで、心が洗われました。復讐に蝕まれていた心が浄化され、眼前に示された奇跡と共に、壮大なスケールを誇る物語を締め括るに相応しい叙事詩的な感動を覚えました。