ペトラ・フォン・カントの苦い涙

劇場公開日:

解説・あらすじ

ニュー・ジャーマン・シネマの鬼才ライナー・ベルナー・ファスビンダーが1972年に手がけた、女性同士の愛を描いたメロドラマ。

ファッションデザイナーのペトラは、2度目の結婚に失敗して落ち込んでいた。助手のマレーネをしもべのように扱いながら、アトリエ兼アパルトマンの部屋で暮らしている彼女のもとに、友人が若く美しい女性カーリンを連れてやってくる。カーリンにひかれたペトラは、彼女と同棲を始めるが……。

1972年のドイツ映画賞で主演女優賞、助演女優賞、撮影賞を受賞。ペトラ役はマルギット・カルステン、カーリン役は後に「マリア・ブラウンの結婚」でベルリン国際映画祭の女優賞、「ピエラ 愛の遍歴」でカンヌ国際映画祭の女優賞を受賞するハンナ・ジグラ。2022年には、ファスビンダーを敬愛するフランスのフランソワ・オゾン監督が、本作を翻案して描いた「苦い涙」を発表。日本では2023年にオゾン監督の「苦い涙」の公開にあわせた特別上映企画「オゾンとファスビンダー」にて、劇場初公開となる。

1972年製作/119分/G/西ドイツ
原題または英題:Die bitteren Tranen der Petra von Kant
配給:セテラ・インターナショナル
劇場公開日:2023年6月16日

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映画レビュー

4.0退廃そして孤独

2025年3月13日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

知的

難しい

寝られる

序盤はやや退屈に感じてしまいましたが、中盤から終盤にかけて途方もないカタルシスを得ることができました。改めて名監督の作品には向き合う価値があると実感します

この作品は「権力を持つ女性(ペトラ)が若く美しい女性(カリン)を愛人にしようとし、結果的にその気紛れに振り回されて破滅する」という物語です。主人公を女性の権力者とすることで、ファスビンダーは支配と依存の関係を単なるジェンダーの問題ではなく、人間関係の普遍的な課題として描き出すことに成功しています

興味深いのは、ペトラのキャラクターがファスビンダー自身の自己投影と読み解ける点です。華々しい成功と裏腹の内面的空虚さ、支配と被支配の反転、その心の空白を埋めようと暴走する独り善がりの愛。まるで人間社会を檻の外側から眺めているかのような冷たい人間観察を経て、感情の爆発を経験し、解消しようのない破滅と孤独に着地する展開には一種の爽快感すら感じます
本作を監督の自省的な作品として捉えると、ファスビンダー監督の冷徹な観察眼が他者だけではなく自分自身にも向けられていることがわかります。彼が若くして自殺(諸説あり)してしまったのも、ある意味で必然だったのかもしれません

ファスビンダー作品特有のテイストと監督の個人史が色濃く反映されているので、特に彼のファンにお勧めしたい作品です

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フレンチクローラー

3.0オリジナルはシリアスに感じる不思議。孤独な人間の物語。

2024年8月6日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

泣ける

笑える

悲しい

1972年公開の西ドイツ映画。
当時、日本では公開されていない。

Wikipediaによると、
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーが1971年に書いた同題の5幕構成の戯曲を、ファスビンダー自らが監督・脚本を務めて映画化した作品、となっている。

出演は
【ペトラ・フォン・カント】:マーギット・カーステンゼン
【カリン】: ハンナ・シグラ
【シドニー】: カトリン・シャーケ
【マレーネ】:イルム・ヘルマン

実は、男性に置き換えてリメイクされた『苦い涙』を先に見た。
私には『苦い涙』のほうが、よりコメディ寄りに感じられ、本作はリアリティが勝っている。
演出の在り方なのか、演者の影響なのかは分からない。
両方かもしれない。

『苦い涙』でのカールの役どころは、オリジナルはマレーネとなっている。

『苦い涙』においては、
「カールは実在したのか?」
とまで思った存在だったが、本作のマレーネは、より存在感がある。
ラストシーンも印象的だ。

オリジナルを観てしまうと、先に見たリメイク版がパロディ作品に思えてしまう。
なぜだろう?

私自身が男性であるがゆえ、同性の煩悶が笑えてしまうからかもしれない。
女性劇だとシリアスに感じるから不思議なものだ。

誰でも良いから繋がっていたい、そんな孤独な人間の物語、と言ってしまうと身も蓋もないか。。。
☆は、3.0

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Haihai

3.5Ich liebe dich.

2024年5月30日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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共感した! 4件)
りか

3.0舞台演劇を観ているよう

2024年5月7日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

 助手のマレーネをいいようにこき使って暮らすファッションデザイナーのペトラは、離婚で落ち込んでいた。そんな時、モデル志望のカーリンと知り合い、彼女と同棲する。カーリンはペトラのおかげで成功していくが。
 全編ペトラの部屋だけで物語が展開するので、舞台演劇を観ているようでした。同性愛を扱っている点で、「ザ・ホエール」や「TAR」を思い出しました。1972年の作品であることから、だいぶ異色な作品だったと思います。そして、皆がずっと見入るのはマレーネではないでしょうか。

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sironabe

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