冬の猿

劇場公開日:

冬の猿

解説

フランスを代表する2人の名優ジャン=ポール・ベルモンドとジャン・ギャバンの唯一の共演作となった名作ドラマ。

ナチス占領下のノルマンディーの海辺の町。アルベール・カンタンは娼館のバーで、海軍時代の話を肴(さかな)に飲んだくれていた。その夜、空襲で防空壕に避難したアルベールは妻シュザンヌに、戦争を無事に切り抜けられたら酒を止めると誓う。終戦から十数年が経ったある日、誓い通りに禁酒したアルベールとシュザンヌが営むホテルに、ガブリエル・フーケという青年が現れる。彼は町外れの寄宿学校にいる娘を引き取りに来たのだが、酒に酔っては先妻のいるスペインに思いを馳せる。アルベールはそんなガブリエルにかつての自分を重ねて親近感を抱くが、シュザンヌは彼の存在によって夫が再び酒に溺れることを危惧する。

監督は「地下室のメロディー」などの名匠アンリ・ベルヌイユ。2022年、ベルモンド主演作をリマスター版で上映する「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選3」(22年9月2日~、東京・新宿武蔵野館ほか)で26年ぶりに劇場公開。

1966年製作/104分/G/フランス
原題または英題:Un singe en hiver
配給:エデン
劇場公開日:2022年9月2日

その他の公開日:1996年12月21日(日本初公開)

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

スタッフ・キャスト

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(C)1961 GAUMONT - Tous Droits Reserves.

映画レビュー

5.0あら。あらら。なんなんだろう、この感動は?

2022年10月31日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館
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bloodtrail

4.0ジャン・ギャバンとジャン=ポール・ベルモンドだぞ

2022年9月17日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

萌える

若い頃の思い出に浸ることは誰にだってある。そこからなかなか脱け出せなくて苦しくなることもある。若い人の中に昔の自分を見つけて懐かしくなったり、時間を共有することで癒されたりするということもある。その若い人が人生とうまく折り合いをつけられていないとすれば、そっと寄り添ってみたくもなるだろう。そんな初老の男をジャン・ギャバンが演じ、若い男をジャン=ポール・ベルモンドが演じている。
街の外れの修道院にいる娘を引き取りにきた若い男は別れた妻にまだ未練があり、スペインで闘牛士をしていた過去が忘れられない。酔っぱらって酒場で大騒ぎをしたり、通行するクルマを相手に闘牛士のまねごとをしたり、周りの普通に生きている人達からは困った余所者として顰蹙を買う。そんな若い男に、投宿していたホテルの主人である初老の男が寄り添う。話を聞いてやったり慰めるというのではなく、行動をともにするのだ。酒場で大酒を食らって喧嘩をしたり、冬の海岸で大花火を何発もぶっぱなしたり。
最後に若い男は修道院から無事娘を引き取ることができ故郷に帰っていく。
中国の故事に"冬に街に降りてきた猿をもてなし森に返してやる"というのがあるそうだ。ベルモンドはまさしくこの冬の猿なのだ。
60年前のモノクロフィルムのなかで、伝説的二人の名優が素晴らしい演技を魅せてくれます。

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ゆみあり

5.0酔いと共に遠くへ過去へ行く

2022年9月7日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

幸せ

ジャン・ギャバンの声、台詞、演技に感動しました。そしてまだ20代のベルモンドが受けてたったきれいで自然な芝居は最高でした。ギャバンの台詞からは自分の目の前に広い広い揚子江が浮かび上がり、ベルモンドのフラメンコ・ステップと車相手の闘牛士ごっこからはスペインの太陽を感じることができた。台詞の一つ一つがすばらしかった。

戦争、ドイツ兵、空襲、地下室、ナチス占領下の海辺の町、雨が多くて曇りがちの寒そうな町。兵士としてでも旅した土地、遠い国での思い出や見たこと経験したことを作り話も含めて語ったり思い出すのは、お酒の酔いと共に。そこに同じお酒を飲む相手がひとりいてくれれば何時間でも語って飲み続けることができるだろう。翌朝は後悔したり恥ずかしい気持ちになるけれど。酔っ払い人間には悲しい黒い色が自分の中にポチッとある。酔っ払いの演技は普通に歩くのと同じ程難しいだろう。二人の酔っ払い具合は筆舌しがたい程うまかった。そして酒を飲む代わりに飴玉を口に放り込むギャバンから目が離せなかった。

猿顔と言われたというベルモンドが本当に可愛らしく美しくさり気なくお洒落で、そこに居るのはまさにフーケという、昔の恋人を今でも思い、寄宿舎で仲間はずれにされている10歳の娘を愛する一人の若い男以外の何者でもなかった。沢山の打ち上げ花火はモノクロであることで余計に頭の中の花火を美しくしていた。

おまけ
ベルモンドは運動神経抜群だがダンスはそうでもないのかもしれない。フラメンコ・ステップ場面ではベルモンドの上半身と下半身を別々に映していた。「アマゾンの男」でベルモンドがタップダンスを披露する箇所があって、その時も上半身と下半身分けての映像で当時67歳なので脚部分はダブル・スタントなんだろうと思った。「冬の猿」のベルモンドは28~9歳だから年齢の問題ではないんだろう、多分!

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talisman

4.0ベルモンドのノルマンディ人情夜話

2022年9月5日
iPhoneアプリから投稿

正確には、主演はフランスの国宝ジャン・ギャバンだけど、当時の新旧スターの共演が楽しい人情ものです。冬になると町に降りてくる迷い猿をもてなし山に返してやると言う、中国のお話しが下敷きになっていて、人生を迷っている青年ベルモンドを偏屈親父のギャバンが無愛想ながらも優しく接してやるのが、心温まります。一方で、ギャバン自身も迷いや悔いがあり、自分自身をベルモンドに投影している感じです。モノクロ映像も美しく、海岸の仕掛け花火の下を二人が去っていく余韻のあるシーンは素晴らしいです。役者では、主演二人の酔っ払いぶりが圧倒的で、演技と言うより芸に近く、重厚なイメージのギャバンの演技の幅に感心しました。ベルモンドの鬱屈した青年役もナイスです。

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シネマディクト