昼下がりの決斗のレビュー・感想・評価
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【老いた保安官と、且つての友と若きガンマンの関係性の変遷を描きつつ、最後は悪党達と共に戦う漢としての矜持を示す姿が渋い作品。今作は、ラストに余韻を感じさせる逸品であると思います。】
◆感想
サム・ペキンパー監督はバイオレンス映画で名を馳せたが、彼の名匠の西部劇も良い味を出していると思う。
ストーリー展開は一捻りはあれど、且つての名保安官とその友、若き未熟なガンマンの三人は、最後は弱き女性を護るためと、ガンマンとしての矜持により、悪漢たちに正面から向き合い、撃ちあう姿は漢である。
そして、且つての名保安官は敵を斃しながらも、自らも被弾し息絶える。
その姿を見ながら、且つての友と男として成長した若きガンマンは、護った女性と共に、何処かへ立ち去るのである。
今作は、ラストに余韻を感じさせる逸品であると思います。-
老ガンマンの男と男の友情をサム・ペキンパーがオーソドックスなスタイルで描く。
NHK BS の放送にて。
『荒野のガンマン』に続くサム・ペキンパーのデビュー2作目。
ランドルフ・スコットの俳優引退記念作品であり、先に引退していたジョエル・マクリーが一時復帰して友情出演している。
老齢の二人のガンマンが〝くされ縁〟で結ばれた友情と闘いを描いているのだが、かつて二枚目西部劇スターとして活躍した主演の二人は、この当時まだ50代だった。
カリフォルニアのとある町、自動車が通りを走っている時代の変わりめ。
金山から銀行へ金を運搬する仕事を請け負うために元連邦保安官のスティーブ(ジョエル・マクリー)は馬で町にやって来た。
彼はイカサマ射的ゲームで小銭稼ぎをしていた昔の相棒ギル(ランドルフ・スコット)と偶然再開し、金運搬の仕事に誘う。
やはりラクダと馬のイカサマ競争の賭けで稼いでいた若者ヘック(ロン・スター)をギルが誘い、三人で金山に向かうことになる。
途中、一行は金山の麓の小さな牧場に一夜の宿を借りる。
牧場には信仰に厚い主とその娘エルサ(マリエット・ハートリー)か二人で暮らしていて、エルサは厳格な父親に束縛された生活を送っていた。彼女は金鉱で働くビリーという男と結婚の約束をしていると言うが、それも父親は快く思っていない。
父親と言い争って家出したエルサが三人に合流し、四人で金鉱のキャンプにたどり着く。
キャンプに着くやいなやエルサはビリーと結婚式をあげることになるが、ビリーとその兄弟たちハモンド一家はならず者で、彼らに強姦されそうになったエルサを救ったスティーブたちは彼女を牧場の父親に送り届けるため連れ帰る。
ここからハモンド一家との西部劇らしい戦いが展開する。
本作ではまだペキンパーのバイオレンス描写は見られず、極めて正当な西部劇だ。
軽いユーモアも織り込まれている。
運搬人募集の広告には運搬する金は25万ドルだと書かれていたが、銀行の頭取から2万ドルの間違いだと言われ、金鉱に着いて実際に計量すると1万ドル余りしかなかった。
銀行で運搬仕事の契約を結ぶとき、スティーブは一人で契約書を読みたいと洗面所に行くが、老眼鏡をかけないと見えないからだった。
ギルとヘックは金を持ち逃げする企みで同行していて、その機会を狙っている。
エルサの父親とスティーブが聖書の引用の応酬で金と欲について議論したりする。
スティーブたちが牧場にやって来たとき、農作業中のエルサは慌てて家の中に駆け込むと野良着からドレスに着替えるというのが可愛い。
父親に切られたというショートヘアが西部劇のヒロインとしては珍しい。
エルサの父親は一人娘を守ろうとしているのだが、男尊女卑的な考えが根底にありそうだ。アメリカでもこの時代なら珍しいことではなかったのだろう。
勢いで家を出てしまったエルサは、金鉱にやって来て初めてビリーたちハモンド兄弟の粗暴ぶりを知る。ビリーは何度か牧場に来てエルサを口説いただけの関係で、ビリーのことはよく知らなかったようだ。
父親の庇護の下に暮らしていたエルサは、つまり世間知らずで男に免疫がなかったということなのだろう。
スティーブとヘックがエルサを連れて帰ろうとすると、ギルはエルサとビリーの結婚が成立していることにこだわる。そして、アル中の判事を脅して結婚証明書がないと証言させ、キャンプの住人たちと自分自身に折り合いをつけるのだから、法に厳格なのか無法者なのかどっちだ、という感じだ。
ギルとヘックが金を持ち逃げしようとしたことに気づいたスティーブは、ギルを決して許そうとしない。この旧友を心から信頼していたからだろうか。
途中でハモンド兄弟五人の襲撃を受け、なんとか二人を倒して切り抜ける場面で、ライフルと拳銃の射程距離の違いが語られる。
これはクライマックスの牧場での銃撃戦でも作用する。
牧場では、先回りしたハモンド兄弟にエルサの父親は殺されていた。
拳銃しか持たず、わずかな窪みに隠れただけのスティーブとハックは、家の中に隠れてライフルで撃ってくるハモンド兄弟に苦戦する。
スティーブとハックが負傷して万事休すのところで、前夜から姿を消していたギルが拳銃片手に駆けつけるという胸熱の展開となる。
スティーブはギルと二人でハモンド兄弟三人に決斗を申し入れ、ハックとエルサを救おうと考える。
スティーブが「あれでいこう」と言うだけでギルには全てが伝わるという、あ・うんの呼吸なのだ。
一方のハモンド兄弟は、決斗となると汚い真似をしてはハモンド一家の名折れだと、正々堂々と家の外に歩み出てくる。
これこそ、ならず者といえども西部に生きる男たちに息づいている誇りなのだ。
かくして2対3の決斗に突入する。お互い隠れる場所などなく正面から拳銃で撃ち合うのだから、西部の男たちは勇敢だ。
よくある一発の早撃ちで決着するのではなく、近距離で撃ち合い、双方とも何発か被弾する。
ハモンド兄弟を倒したものの、スティーブは致命傷を負った。
ギルが「お前の意志を無にしない」とスティーブに言うと、スティーブは「分かっている。ちょっと気が迷っただけだ」と言ってギルを赦す。
スティーブとギルとの間にあるのは盲目的な友情ではない。彼らには我々が知らない歴史があり、二人で修羅場を越えてきたのだろうけれど、いつか別れ別れになっていたのだから考え方も生き方も違っているのだ。
それでも二人には、俺とお前だから通じるものがあったのだ。
「若い者に死ぬところを見せたくない」と言ってハックとエルサを近づけないようギルに頼むと、ギルは若い二人の肩を抱いてスティーブから離れていく。
老ガンマンには、自分の命に代えても若者を守るという熱い侠気(オトコギ)もあったのだ。
もったいない。アクションだけ取れば、この程度の評価
見るのは『昼下がりのク◯眠い時でけっこう』別の話が4つ位にあって、それまでの決闘方西部劇と違うのは、殺す方も殺される方も何一つ生産性が無い事かなぁ。全員がマイナスで終了する。
68年のヒット作とは全く違う。理屈ばかりが優先してしまって、その頃の西部やアメリカを熟知してないと理解は不能。
女性の行動と厳格なキリスト教信者の父との葛藤を描いているわけでもなかろう。かと言って、ウマシカな兄弟の愚行は目に余るし。ゴールドラッシュの酒池肉林な社会も知らないので、何とも言えない。もし、集団で寄って集って女性を食い物にしていた社会が在るならば、こんな中途半端な表現はもったいない。もっと別にお話が作れると思う。
とにかく、パイ合戦ポルカの様な陽気な音楽をバッググラウンドさせて、ワンショットで撮ったほうが無難な映画に仕上がったと思う。まさか、同じ道往復するとは思わなかった。それもけっこう忠実に往復している様に思える。もっと景勝地を選んで、ロード・ムービーにすべきだ。まさか、往復のロード・ムービーとは!!!夢にも思っていなかった。
ジジイの矜持。二大スターの共演…らしい。さすがに生まれてないのでよ...
ジジイの矜持。二大スターの共演…らしい。さすがに生まれてないのでよく分からない。
荒くれ者と結婚すると嫁は兄弟みんなのもの、怖すぎる時代だ。父親は正しかった(笑)二大スターの活躍するラストより、そっちに目がいってしまった(笑笑)
まずまず面白かった。尺はこれくらいがちょうどいい。
なぜだか妙に2021年の日本のおかれた状況にとてもリンクしている西部劇です
サム・ペキンパー監督の出世作
確かな力量を大いに感じます
クライマックスの2対3の決斗は語り草になる程の迫力
被弾上等でズンズンと相棒と肩を並べて敵に歩みよりつつのガンファイト!燃えます!
西部劇の決斗シーンは数あれど屈指の名シーンです
ガンファイトの効果音もこだわりを感じます
ヘックが敵から奪ったライフルで岩山の高い位置から射撃した時、狙った相手の足元の岩に外れて跳弾となる音は、ライフル弾の威力を感じる素晴らしい効果音でした
時代は自動車が現れ、西部劇の世界も終わりつつある頃
元保安官の男と、かっての相棒もいまは年寄りとなってしまっています
若い者にはまだまだ余裕で勝てる力を持っています
かといってこの先はもう心細い
なにやら老人ばかりになった日本の21世紀のようです
そしてヒロインの野に咲く花のエルザ
厳格な父との二人だけの山の暮らしから逃げ出したいその一心だけで、良く知りもしない顔だけはハンサムなビリーと結婚しようと山奥の貧乏人のならず者ばかりの金鉱に主人公一行と向かいます
しかし彼女のその甘い考えが大変な事態を引き起こしてしまいます
悲惨な結婚式から続く彼女の後悔と絶望と悲しみ
実に哀れでした
最終的には父親までもが悲運にさらされてしまうのです
なにやら祝福されない結婚をして日本から駆け落ち同然にアメリカに移住される元プリンセスのことを思いださずにはおれません
ただただ、元プリンセスのお幸せを祈るばかりです
このような不幸な境遇に陥ることのないことをひたすら念じます
このやうに、なぜだか妙に2021年の日本のおかれた状況にとてもリンクしている西部劇です
不思議なことです
すごくよかった
女の子を金山に連れて行くと、彼女の抱いていた希望が木っ端みじんに打ち砕かれて、本当に気の毒。クライマックスに仲間が助けに来てくれるところに胸が熱い。銃撃戦がリアルでかっこいい。
聖書合戦
最初っから中華料理店が乱闘の舞台になっている。客は手で食べてるし、漢字もわけわからない。途中の教会での神父とスティーヴの聖書合戦も面白いし、金鉱の町の結婚式=乱痴気騒ぎも呆れかえってしまうほどだ。
結局はギルとヘックが金ほしさのためにスティーヴを裏切ろうとしてしまうのだが、ハモンド一家が嫁を取り返しにやってきて、また一致団結する。西部劇では異色とされるほど風変わりなプロットだが、予想のつかない展開ゆえにキャラクターの面白さが光って見えた。ラストの突撃もしぶい。
ある意味オールスター西部劇なのです
いやぁ、出てくるのが、酒場の体格の良い女主人、酔いどれ判事、ダメダメ悪党兄弟、生意気だけど喧嘩の弱い若造ガンマン、そして「野に咲く花」のような女性なんですよ? それでみんな輝いてるんですよ? そしてそこにジョエル・マクリーとランドルフ・スコットの鬱屈と友情が描かれていくんですよ? やっぱり西部劇って、こうじゃなきゃ!って感じますよね。しかも最後は「決斗」なのです。面白くないわけないじゃないですか?
少し哀愁漂うヒューマンドラマ調西部劇
総合:75点
ストーリー: 75
キャスト: 70
演出: 70
ビジュアル: 70
音楽: 65
カリフォルニアに自動車が走っているくらいだから、時代はもう20世紀に入ったころだろうか。ガンマンなどもう時代遅れの職業になりつつあって、そのうえ主人公たちも昔は名をはせたのだろうが歳をとっているしで、決して報われた生活を出来ているわけではない。
それでも意地と誇りをかけて危険な輸送任務の仕事をしようとする男。彼らは任務の途上で巻き込まれた問題にも直面しなければならない。またそんな境遇を変えようともがく男がいて、報われない仕事に対して新たな重大な問題が出てくる。
もう西部劇としても最後の時代なんだろう。時代の移り変わりとその時代に取り残されつつある男たちの哀愁も漂う。町を牛耳って好き勝手をする無法者と戦うようなお決まりの映画ではないし、単純な勧善懲悪ではない。完全無欠なスーパーヒーローが大好きだったころの古いアメリカ映画なのに、物事は善と悪だけの単純な世界ではないと劇中で言っているのもこの時代としてはとても先進的。物語は撃ち合いの西部劇としてだけでなく、開拓時代と近代社会の中間にいる男たちの犯罪物映画としても楽しめた。ひょっとしたら時代を先取りしすぎてこの時代の人にはあまり受け入れられなかったのか。でもこの物語は好きです。
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