ニュールンベルグ裁判のレビュー・感想・評価
全4件を表示
ドキュメンタリー「東京裁判」と双璧の軍事裁判劇映画
第二次大戦後の軍事裁判映画としては、
小林正樹監督のドキュメンタリー「東京裁判」
が有名だが、
一方、この作品は劇映画。
今回が3~4回目の鑑賞だったろうか。
しかし、前回観たこの録画版以前の鑑賞では
多分2時間程度の短縮TV放映版で、
裁判所の外のシーンはほとんどカットされて
いたような記憶がある。
また、「東京裁判」で描いたのが、
A級戦犯の裁判であるのに対し、
「ニュールンベルク裁判」の方は、
ゲーリングやヘス等の
主要戦犯相手の裁判ではない点も
設定としては大きく異なっている。
改めて観ることにしたのは、
昨年に鑑賞したクレーマー監督の
「招かれざる客」に改めての感動を覚え、
この後に「手錠のまゝの脱獄」と
「おかしなおかしなおかしな世界」を
観る予定にしているので、
この作品を先にと思った次第。
このタイミングでの鑑賞では、
どうしてもロシアによるウクライナ侵攻が
想起され、
もちろん一義的にはロシア・プーチンの責任
ではあるのだが、
侵攻を思い留ませることの出来なかったとの
意味合いでは、
この映画での弁護士の熱い語りからも、
全ての関連諸国にその責任の一端が無かった
だろうかとの思いも微かに頭をもたげた。
アカデミー主演男優賞を獲得した
マクシミリアン・シェルや、
沈黙を解いたかのような
広田弘毅的バート・ランカスター等の
名優による法廷での意味深い応酬に、
改めて戦争の罪深さを考えさせられた。
硬質な映画文体ながら、正義を貫く困難さを描いたアメリカ映画の良心
社会派監督で名高いスタンリー・クレイマー監督の代表作。第二次世界大戦のドイツの戦犯を裁く占領国アメリカの法の下の正義を題材にした法廷劇。堅苦しい軍事裁判の大作ながら、検察と弁護両方の分かり易い論説の攻防が、3時間の長尺を忘れさせ最後まで飽きさせない。名優たちの豪華キャスティングも適材適所の見せ所を持って、アメリカ映画の懐の深さを思い知らされる。興味深いのは、スペンサー・トレイシーの裁判長以外の裁判官や検察官が無罪の判決を期待している点であり、当時の占領政策に配慮した思惑があることだ。まして、被告であるバート・ランカスターの法学者は自らの罪を認めており、マクシミリアン・シェルの弁護人の雄弁かつ人道的な弁護にも否定的な姿勢を貫く。戦争の善悪に止まらず、裁判が行われる時代や国際状況の社会的損得の背景もあってのニュールンベル裁判である。どんな立場の人間でも、正義を貫くことの難しさを印象付ける作品である。
過剰に感じるけれどそれ故分かりやすい
演出に過剰さや偏りを感じたけれど、それ故に難しい問題・題材が分かりやすく理解することができた。しかも長い作品ながら、素晴らしいくらいに最後まで興味を引きつけてはなさないだけの吸引力があった。戦争裁判を題材にしながらも、その中身はヒューマンドラマになっているからか容易に受け入れることが出来たような気がする。
全4件を表示