■5年の刑期を終え出所した老ギャング・シャルル(ジャン・ギャバン)。妻は彼を長い間待ち、出所した彼に”真面目に働いて。”と求めるが、彼は刑務所で目をつけていたチンピラ青年・フランシス(アラン・ドロン)と彼の真面目な義兄ルイを仲間に引き入れ、カンヌのパームビーチにあるカジノでの強盗を計画する。
そして決行の夜。シャルルらは自らの役割に従い、首尾良く任務を遂行するが、フランシスの軽率な行動により、夢は消えるのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今観ると、シャルルが若いフランシスに指示する”メイドにはチップを弾め。””スイートに入っても、浮かれるな。”などと、渋い低音ヴォイスで諭す台詞が、憎いのである。
・だが、粋がっているフランシスは、彼の言う通りにはナカナカ動かずに、ため口をきくのである。
・個人的に印象的だったのは、フランシスの真面目な義兄ルイの言葉である。この言葉がラストのシニカルなシーンに効いていると思ったのである。
”役割は果たす。けれども分け前は要らない。楽をして大金を手にすると、真面目に生きる事が馬鹿らしくなるから・・。”
正に、老ギャング・シャルルの事を差していると思ったのである。
・フランシスが如何に上流階級を装っても、うわべだけと見抜く彼を誘おうとした年配夫人の”私の眼も、落ちたモノね。あんな下品な男。”と言う台詞も又、フランシスの致命的なミスを予測させるのである。
■身軽なフランシスが通気口を伝い、エレベーターの昇降ロープを降りて、金庫室に乗り込み、一週間分の上がりを奪うシーンなどは、後年のクライム映画でよく見る。
この作品から影響を受けたのではないかな、と思ったのである。
・ラストシーンでの、警官がうようよいる為にフランシスがバッグふたつに入った金を、プールサイドのチェアで待つシャルルに渡せずに、焦ってプールに沈めた後に、プールの水の還流で口が開いてしまい、プールの表面に札束が次々に浮いてきて、それを見て項垂れるフランシスと、サングラスを掛けたまま、チェアに憮然とした表情で座るシャルルの表情・・。
<今作は強かな老ギャングを演じたジャン・ギャバンの貫禄ある姿と、チンピラを演じたアラン・ドロンとの対比や、後年クライム映画に影響を与えたと思われるシーンが満載クライム映画である。>