小さな悪の華
劇場公開日:1972年3月4日
解説
ボードレールの『悪の華』に耽溺し、悪の魅惑にとりつかれた十五才の二人の修道院生の数々の悪魔的な所業を描く。監督・脚本は新人ジョエル・セリア、撮影はマルセル・コンブ、音楽はドミニク・ネイが各々担当。出演は「先生」のカトリーヌ・ワグナー、ジャンヌ・グーピル、ベルナール・デランなど。
1970年製作/103分/フランス
原題または英題:Mais Ne Nous Deliverz Pas Du Mal
配給:ヘラルド
劇場公開日:1972年3月4日
ストーリー
修道院・寄宿学校の生徒、アンヌ(J・グーピル)とロール(C・ワグナー)は消燈の時間が来ると二人の秘かな日課を始めた。隠し持った懐中電灯の光で悪の日記を綴るのだ。ふたりは修道院での禁断の書、ボードレール、ランボー、ロートレアモンに耽溺して、悪の快楽を貪る。アンヌはバカンスに行なう“恋魔を祭る儀式”の準備に、聖杯や僧衣を盗む計画を立てた。万端整い、いよいよ待ちうけたバカンスは二人にとって悪魔的想像を実行に移す悦楽の日々だった。太陽の降りそそぐ野原で、その美しい裸身をさらして農夫をからかったり、乾草の放火、小鳥の毒殺と、狂ったように悪戯に耽った二人は、アンヌの家の森の廃屋で、悪魔に仕える儀式をとり行なった。ふたりは頭に花冠を載せ、白の薄物をまとい、知的障害者の庭番を祭司に仕立て修道院から盗んだ僧衣をあてがった。二人は互いの血を嘗め合い、さらに儀式は森の中の沼へと移った。アンヌとロールは目くばせしてとんだ役得で有頂天の庭番を沼へ突き落した。彼はあがきながら舟べりに手をかけ、ふたりを沼の中へひっばりこんだ。岸にたどりついた二人は庭番への強い復讐心をわきたたせた。そんなアンヌにも、時として人間の暖かい心がよみがえることもあった。ある夜には、通りがかりの男を誘惑したアンヌは、獣に変身した男の脳天めがけて太い薪をふりかざして、何度も何度も降落した。バカンスは終り、二人は何喰わぬ顔で修道院に戻った。原因不明の放火や殺人事件の連続を追いつづける警察はようやく事件の核心に近づこうとしていた。アンヌとロールもバカンスの行状を問われた。怜悧なアンヌは、すべてをさとり、警部に修道院で行なわれる学芸会の招待状を贈った。学芸会の幕があがり、舞台にふたりの少女がすっくと立った。詩を朗読しながら、アンヌとロールは自分達の衣服にガソリンをふりかけ、ゆっくりとマッチを擦って点火した。悪魔に加担したアンヌとロールは、生命の本源的な輝きに満ちて充分に美しかった。