タクシードライバーのレビュー・感想・評価
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ベトナム帰還兵がマンハッタンでヒーローを演じる夢想と実行の偶然の産物
「アリスの恋」のマーチン・スコシージ監督の最近作。夫の事故死を切っ掛けに子連れの放浪生活を送る女性を描いた活気ある演出タッチに好印象だったが、今度は何と沈んだムードに落ち着いて、静かに怒り平穏の中で燃えている事か。先ずこのスコシージ演出の個性と吸引力に驚く。
ベトナム戦争の後遺症で不眠症になった若い男トラヴィスが、ニューヨークのタクシー運転手の仕事に就く。映像は夜のニューヨーク、その様々な色彩のネオンサイン、暗く汚れた道路、派手な装飾を施したビルディング、そして自由気儘に生きる夜の群衆を捉え、トラヴィスに何かを起こさせようとする。そう感じさせるくらい、このニューヨークの夜の映像とトラヴィスの孤独が見事に対比されていた。その前に、大統領候補の選挙運動員のベッツィー(シビル・シェパード)に惹かれ、全く紳士的ではない粗野で強引な接近を試み、半ば強制的に交際を始めるところが面白い。その二人のデートにポルノ映画館を選ぶところで、このトラヴィスという男の女性に対する無知を明確に描写している。トラヴィスの生い立ちや戦争で何があったのか、そして何故ニューヨークに住むのかの説明なしでスパッと入って来た未知と謎の魅力。これも確かに映画的だ。
しかし、話が進むほどに謎が増幅し、トラヴィスの行動が解らなくなる。そこに生まれる緊張感がこれまでの映画の語り方とは違う。女性への関心から社会の退廃へ移り、幼いアイリスという売春婦に興味を持ち付き合い、相談相手になり御節介を焼くまでになる。(一つ理解不能だったのが、選挙の路上演説のところへモヒカン刈りのトラヴィスが現れて候補者を暗殺しようとするところ)そして肉体を鍛え上げ、銃を裸の身体に装着する格好に酔うナルシシズム。クライマックスはベトナム帰還兵をマンハッタンの悪の巣窟排除で活躍させ、瀕死の重傷を負いながら現代のヒーローと称える逆転劇にしてしまう。かつて憧れていたベッツィーを袖にするオマケつきだ。この自己満足な結末には驚いた。
ニューヨークの醜い一面を成敗する、ベトナム帰還兵の病的ながら正義感ある想いと、実行に移す衝撃的過激さを描いたスコシージ監督の力作だと思う。孤独な男の姿を強烈に映像に焼き付けた演出は見事と云いたい。ロバート・デ・ニーロの演技も素晴らしい。ただし、予測不可能なストーリーの面白さを最後まで味わっての最後に、作者(脚本・演出)の自惚れも一寸感じる。それを感じなかったらもっと絶賛した思う。
1978年 5月18日 池袋文芸坐
この当時はスコセッシ監督の呼び方は、スコシージだった。今回そのままで敢えて再録しました。淀川長治さんの本の中にも、スターや監督へのインタビュウーで名前の発音を尋ねる場面があります。直接本人に確認すればいいだけの話ですが、昔はある意味いい加減でした。外国の監督にも俳優にも、日本表記が修正されたものが結構あります。
何をやらかすのか目がくぎ付けに
あのR・デ・ニーロが、細く、若いです。普通の人から狂気に変わるベトナム帰還兵を演じます。モヒカン頭に豹変し、拳銃数丁で無言のまま悪党を成敗する場面は、かなり衝撃的です。
大統領候補を狙う意図はなんだったのか、選挙サポータのS・シェパードには当時こんないい役があったのか、J・フォスターはこれでオスカーか、H・カイテルは若い時も相変わらずクセモノか、とか、あちこちにいろいろありますが、何といってもデ・ニーロ氏が、一体次に何をやらかすのか目が釘付けになってしまう映画です。
そんな強烈な演出のM・スコセッシ監督ですが、この映画を観るまでは監督の映画を意識してあまり観ていませんでした。この強烈さにしびれ、これまでの作品を拝見したくなります。
【マーティン・スコセッシ監督がベトナム帰還兵に対する当時のアメリカ政府の処遇及び風潮に対し、強烈な怒りを叩きつけた作品。シニカルな、デ・ニーロスマイルが炸裂した作品でもある。】
ー 若き娼婦アイリス(ジョディ・フォスター)の姿。ベトナム帰りのタクシー運転手・トラヴィス(ロバート・デニーロ)は自身の境遇も踏まえ、”この国はオカシイ”と思って行く様が、彼の狂気性を煽って行く過程と共に、見事に描かれている。-
◆感想
・ベトナム戦争で、命を懸けて戦って来た男、トラヴィスが久方ぶりに戻って来たアメリカ。だが、そこは腐りきった社会であった。
- タクシー運転手になったトラヴィが乗せた数々の乗客の愚かしき姿。
ある日、少女の娼婦・アイリスがトラヴィスのタクシーに逃げ込んでくるが、ポン引きに連れ戻されてしまう。ー
・トラヴィスが精神的に戦争のダメージを受けている事は、バランタイン上院議員の選挙事務所で働くベッツィー(シビル・シェパード)をデートに誘った際に、ポルノ映画館に連れていく事で、垣間見える。
・だが、彼の正義感は狂気性を帯びながらも、着実に遂行される。
- 身体を鍛え、モヒカンになった彼が、バランタイン上院議員の演説会場に現れる姿。
そして、アイリスがいる娼館での発砲シーン。-
<今作での、ヴァイオレンスシーンは観るのはキツイが、私は全面的に肯定する。
何故ならば、トラヴィスの行為はベトナム戦争で多大なる犠牲を払った米国の下層階級及びベトナムの人民への鎮魂歌であると思ったからである。
更に言えば、今作はロバート・デ・ニーロの万民を魅了する不可思議な笑顔(口角は上がっているが、冷たい目は笑っていない・・。)が印象的な作品である。
今作は、マーティン・スコセッシ監督がベトナム帰還兵に対する当時のアメリカ政府の処遇及び堕落し切ったアメリカの風潮に対し、強烈な怒りを叩きつけた作品でもある。>
■その他
・30代後半、仕事で居住区の大都会で飲む機会が良く有った。
終電がない事も多く、良くタクシーを利用させて頂いたが、同乗させた部下の言動でその人物の品性が良く分かった。
特に、年配の運転手さんに対しての言葉遣い・・。
人間の品性は、タクシーの中でも伺い知れる事を学んだモノである。
男気!
アンニュイなカタルシス
ストーカーにも五分の魂ってこと?
ロバート・デ・ニーロは若い頃からすごい
昔に観ていると思うがトム・スコットのサックスしか記憶がなく...。...
名作シリーズ
?あれ?ポスターが変わった?
ロバートデニーロがジャンパーのポケットに手を入れてるポスターがカッコ良かったんですよね?
勉強不足ですみません。古い映画でいつ観たかも覚えてないのにレビューするのも場違いですが、とにかく面白かったカッコよかった記憶があります。かと言って45年前の映画を見る勇気もありません。覚えているのが日本のタクシードライバーがギャンブル、多額の借金を背負ってる、ローンの審査が通らない悪いイメージを一掃してくれました。タクシードライバーと言うロゴまでがカッコ良く聞こえます。この映画の後に次から次から擬似タクシードライバーのオマージュ作品が出て来ます。良い思い出のままにしておきます。
絶対名作のはずです。やっぱり見てみるかな?
単なるバイオレンスではない
海兵隊上がりのタクシー運転手が、街角のガラス越しに見かけた選挙応援の仕事をしている彼女を茶店に誘って口説くシーンが最高。大きなガラス窓のすぐ外を通行人や定期バスが止まったり発車したりするのを見もせずに、パイやフルーツサラダを口に運ながらデカカップのブラックコーヒーを、味も分からぬ気で見つめ合い、しゃべったり合う午後4時の休憩時間。その後映画を見に行ったのはいいがポルノだったのに怒った彼女はタクシーを拾って帰ってしまう。彼の捨て台詞「送ってやったのに」印象的な場面だ。
目がキラキラ光った自信満点なR・デニーロの中に巣食った無鉄砲な言動は、過酷な戦場体験に依るPTSDと容易に理解出来る。単なるバイオレンスではないのだ。
スコセッシ監督の第29回カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作品。
チョイ役のJ・フォスターが、複数の助演女優賞と新人賞をかっさらった貴重な作品でもある。
見本市
面白いけど人が感じてる面白みと違う気が…
ベトナム戦争の帰還兵だとか、
戦争によるPTSDだとかそう言う難しい事は置いといて、
トラビスって中2病じゃん!
と言う面白いさ。
トラビスに中学生の自分を重ねて
恥ずかしくもなり懐かしくもあり、
男はみんな心の中にトラビスを。
みたいな並走する気持ちになった。
好きな女の子と初デートにポルノを見せる
どうかしてるトラビス。
ふられてキレるトラビス。
体を鍛えだすトラビス。
拳を火で炙って熱さに耐えるトラビス。
銃を片手にカッコ付けるトラビス。
正義のヒーロー気取りのトラビス。
恥ずかしくもあるけど、
男はみんなトラビス。
だから愛させれる作品なのかな?と思う。
鍛えてたからなのか、首を撃たれても平気なトラビスな
「良かったな!」と肩を叩いてやりたい気持ちになった。
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