卒業(1967)のレビュー・感想・評価
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レールを外れてはみたものの。。。
アメリカン・ニューシネマの代表的な1作である。アンチヒーローたちの生き様にフォーカスするアメリカン・ニューシネマ。だが、今やアンチヒーローなんてまるで話題に上らない時代だから、この注釈はほぼ意味ないだろう。そこで、ここいう見方はどうだろう?優秀な成績で大学は出たものの、そのまま親の敷いたレールに乗っかりたくない箱入り息子(確かに彼はいわゆるヒーローではない)が、なんと大胆にも、初めて自分の本能のまま行動してしまう破滅型ドラマという解釈は。そう、これはレールに乗っかったまま楽な生き方をチョイスしてしまいがちな(失礼)現代の若者たちに、人生はそんなに甘いもんじゃないということを、半世紀も前にメッセージとして伝えようとした未来予知映画なのである。卒業の先にある膨大な時間の重み。これは、かつて若者だった中高年世代にも再見して欲しい1作だ。
【アメリカンニューシネマを再度見る】連載②
有名大学を特待生として勉強もスポーツにも秀でた実績をあげ卒業し実家に帰ってきたベンジャミン(通称ベン)(ダスティン・ホフマン)。家族や知人・友人にちやほやされますが、彼は憂鬱な感情をいだいていました。「優秀な成績で卒業したのがどうした」「それより今後の展望がまったく描けない」というフラストレーションがたまっているのです。
父親の事業の共同経営者の妻、ロビンソン婦人(アン・バンクロフト)は ベンを誘惑します。ロビンソン婦人も夫とはセックスレスでフラストレーションがたまっていたのです。
人生経験豊富なロビンソン婦人の命令口調の指示にしたがいながら、ついにベンとロビンソン婦人は情事のドロ沼に入り込んでいくのでした。
ここまでの展開であれば、エリート層のボンボン優等生とセレブ年増であるが美しいロビンソン婦人の単なる不倫のお遊びでかたつきます。
ただ二人のお遊びに共通しているのは、払いのけられないほどの「フラストレーション」にさいなまれていたのです。
この「フラストレーション」は既存ルールに縛れていて既定のレールにのっかり生きていくしかない、身動きできない二人の思いが伝わってきます。しかし二人はこの「ルール」を自ら破壊しました。
この破壊は、ベトナム戦争の「フラストレーション」と似ています。。
正義の戦いと思っていた戦争が、そうではないと知ったときのアメリカ国民のフラストレーションと同様なのです。
そうです。「フラストレーション」は破壊をうむのです。
ただこの作品は単なる不倫映画で終わらない恐ろしさをまとっていました。 ベンはあろうことかロビンソン婦人の娘エレイン(キャサリン・ロス)と付合い好きになる。
情事をした女の娘を。母は母、娘は娘と割り切ったのです。この考え方こそが、エリート臭さとボンボンの優待性気質が気持ち悪いほどにじみでています。
エレインはベンと母親の情事を知りベンを拒絶します。しかし、おかしいのは「完全なる拒絶」をしないことです。ベンがエレインの大学の近くに住み毎日のように彼女を口説く。それにたいしてエレインは。ベンとキスをしたり「完全なる拒絶」をしないのです。
エレインは、ベンに心から愛されていると思っているのです。
みなさんは、この映画のラストシーンはハッピーエンドだと思いますか。私は断固として否です。二人の選択は、身の毛もよだつほどの嫌悪感にかられるのです。道徳、倫理というものではなく「生理的に無理」です。
ハッピーエンドと思った方は、二人のあらゆる壁をぶちやぶった純愛にひかれるとか、過去より未来、二人が幸せならいいと思うのでしょう。
すこし過激な記載になりますが、ベンは母と娘を割り切るというずうずうしさ。母も抱いて娘も抱く、本当に?
エレインも自分の母親を抱いた男に抱かれることを受けいれる女性の神経がわからないのです。
二人は、家族も友人も大切な人たちすべてを傷つけ裏切りました。誰からも祝福されない二人です。駆け落ちと思えばいいというかもしれません。しかしです・・・・
ベンとロビンソン婦人は、情事によって「ルール」を破壊しました。
ベンとエレインは、「ルール」も破壊しましたが、それより数段階上の「二人をとりまく世界」を破壊したのです。破壊しながら、二人の「理想」、若いからなんでもできる、二人がいいならいい、二人は愛し合っているから必ず幸せになれる。そう思い込んでいるのでしょう。
ベンとエレインの思い上がりには、弱者ベトコンを力の限り破壊する姿に重なり、「理想」の世界を作るアメリカの思い上がりが見えるのです。
自分たちだけの気持ち、思い、「理想」、それが絶対であるという心が、まるでベトコンを蹂躙するアメリカそのものだからです。それゆえ「生理的に無理」なのです。
この映画はまさにアメリカンニューシネマを体現しています。
次回は、スタンリー・キューブリック監督のSF大作「2001年宇宙の旅」です。ご期待ください。
有名過ぎる不幸
0015 初代愛しの彼女キャサリンロス
1968年公開
まだ一体何から卒業するのかわからんかった時に観ました。
高一でそんなこと言ってるからざまあないわな(笑)
アンバンクロフトは体の関係を持つにはババア過ぎるわ
となんとなく思っていたし、対してキャサリンは
絶対的美人でもないんだけど守ってあげたいカワイ子ちゃん。
当時の「ロードショー」誌、「スクリーン」誌で絶大な人気を
誇っており、グラビアだけでぞっこんになってしまいました。
てことでキャサリンの存在を知ってようやく3年後
リバイバルの機会があり鑑賞した次第。
オープニングはサイモンとガーファンクルの
「サウンドオブサイレンス」
アメリカンニューシネマ前に全盛期を迎えるミュージカルは
蒼い歌「さあ、みんなでシアワセになりましょう」だったが
この曲は監督のマイクニコルズが推薦し、その内容は
「人々は話すことなく語り、聴くことなく耳に入る。沈黙は
心を蝕んでいく」と能天気なハリウッドでは聞けなかった
過激な歌詞。ニコルズはなかなかオリジナル曲が気に入らず
既にオンエアされていたこの曲を主題歌に選ぶ。
ラスト教会での争奪戦のあと、バスに乗り込んだダスティン
ホフマンとキャサリンは大人の社会を打ち破った達成感で
したやったり顔を見せるが、だんだんと現実に戻り無表情に
なっていきバスはいずこへともなく走り去る。
キャサリンは素人っぽく青春そのものを演じたとニコルズは
絶賛した。原作者のチャールズウエップは二人の後日譚
として「卒業2」を書く。勢いで結婚式を抜け出した二人は
家庭を持つものの社会の荒波にもまれて悪戦苦闘する。
少し現実感強すぎてあまり見返す気になりまへん。
95点
1977年5月31日 三番街シネマ2
1977年10月3日『月曜ロードショー』
無軌道に生きてみたい、主人公に共感は持てないが すごい映画だな。 ...
既成権力への反抗
1967年(米)監督マイク・ニコルズ。
ベトナム反戦運動や学園紛争に揺れた60年代の空気を
鮮やかに映し出している
この映画、同年製作の「俺たちに明日はない」
と共にアメリカン・ニューシネマの到来を告げる作品と
なりました。
大学を卒業したベンジャミン(ダスティン・ホフマン)は
自分の将来と境遇に疑問を抱いていた。
そんな彼は中年の女性ロビンソン夫人(アン・バンクロフト)に誘惑され
成り行きのまま密会を重ねる。
しかし夫人の娘エレーナ(キャスリン・ロス)の純真さに胸打たれ、
真実の愛に目覚めて行くのでした。
主人公のベンジャミンはスポーツ、学問ともに優秀な成績を修めて大学を
卒業しますが、この年頃の誰もがそうであるように説明しようのない焦燥や
不安を抱えています。
主体性のない彼は年上のロビンソン夫人に誘惑され簡単に屈してしまう。
しかしエレナが他の男性と結婚することを聞きエレナを深く愛していることに
気づき彼女を結婚式の最中に奪って逃げんるのです。
このあまりにも有名なラストシーンが若い世代の観客たちの
心をつかみました。
十字架を振り回して大人たちに抵抗して、彼らを教会に閉じ込めて
置き去りにするベンジャミンに、1960年代の若者は、
既成の権威、モラルに対する反乱と見てとったのです。
ダスティン・ホフマンのナイーブな演技、
アン・バンクロフトの妖艶な魅力、
キャスリン・ロスの初々しさ、
そして何よりサイモン&ガーファンクルの歌う清々しい主題歌
「サウンド・オブ・サイレンス」は不滅の輝きですし、
「ミセス・ロビンソン」「スカボロ・フェア」の歌詞の新しさ。
音楽も欠かせない要素でした。
今も映画史に輝く名作です。
大学は出たけれど・・・‼️
初見は高校1年生の頃だったでしょうか⁉️とにかくあの有名なラストシーンにものすごく感動しました‼️「アメリカン・グラフィティ」みたいな青春は送れなくても、ひょっとしたら「卒業」は出来るかもしれないと勝手に思い込んだものです‼️人生の目的や計画を自覚できない青年が年上の女性との成り行きの情事の果て、その女性の娘との真実の愛に目覚める・・・まったく主人公に共感できないとの声を多々聞きますが、愛した女性の母親が自分の不倫相手だった状況、もし自分だったらと考えたら、やはりダスティン・ホフマンと同じ行動を取るのではないでしょうか⁉️ラストの花嫁強奪は分かりませんが。私はあまりダスティン・ホフマンは好きではありませんが、このベンジャミンはハマり役だったと思うし、アン・バンクロフトの妖艶な色気はトラウマになりそうだったし、キャサリン・ロスの美しさといったら・・・花嫁強奪もナットク‼️そしてサイモン&ガーファンクルの「サウンド・オブ・サイレンス」の使い方も絶妙で、今でもラジオとかで流れてたりするとダスティン・ホフマンの顔が浮かんでしまう‼️爽やかすぎる花嫁強奪のシーンも、サイレント映画の時代からのアメリカ映画の定番ですよね‼️古くはフランク・キャプラ監督の「或る夜の出来事」から最近の「スパイダーマン2」まで‼️そしてラスト、バスに乗り込んだ二人の表情‼️これから本当の荒波が待っていることを知っているかのような大人の目‼️マイク・ニコルズ監督ってイジワルですね‼️
2012年7月午前十時の映画祭にて
🎦卒業と言う映画を見た。
シュールだ・・とても。なぜか主題歌をすべて歌えてしまう・・・しかも驚くべきことに前半はかなりの部分のこの映画のセリフが口を突いて出てくる。前世の記憶か・・・。生れる前の作品だが、カット割りがメチャクチャ秀逸。すべてのカットが優れたスチールに連続の様あるにもかかわらず、ちゃんとムービーとして成立している。いずれにしてもこの映画の内容は現在なら完全アウトだが、昔はきっと一念岩をも通す・・雨だれ石を穿つ・・・精神一到何事か成らざらん・・全てが今では死語と言っていい概念が、この映画の根幹にあり、それだけにシュールさが際立つのだろう。アン・バンクロフトの演技の迫力に圧倒される一本でもあった。それにダスティン・ホフマンがトム・クルーズに見えてならなかったという点も書き加えておこう。走り方がそっくりなのだ。行動の突飛さ加減も‥これは勿論役どころの問題なのだろうが・・。作品の中でまるでスポットカラーのように動き回るのがスカーレットのアルファロメオ アルファスパイダー(デュエット)。この車がどんどんボロボロになって行く。そして迎えた一見ハッピーエンドの様なエンディングにも二人の行く末もそのアルファロメオの様な結末が用意されてなければ良いがと・・不安に駆られる結末なのだ。でも終止傑作。
S and Gのスカボロー・フェアはメロディ・フェアと並んで、心に残る歌と言える。
真面目にストーリーを追うべき話では無い。ストーリーはファンタジーなラブストーリーとして見るべきだと思う。
もっとも、僕みたいな老人が見る映画では無いが、50年くらい前に見たときは、こんな滑稽なラブストーリーに心が踊った。今、何回目かの視聴で、こんな話だったんだと冷めて見てしまう。
しかし、S and Gの曲を聞くと、我が青春を思い出した。様な気がした。
僕にとって、S and Gのスカボロー・フェアはメロディ・フェアと並んで、心に残る歌と言える。
今回、残念ながらこの演出家に対する評価を落とさざるを得ない作品を見た。故に、伴って再評価する。但し、今回(2024年7月7日)は、当該作品は見ていない。
薄気味悪い奴の映画を見て感動してしまった事を大変に悔やむ。但し、僕がこの映画を評価したのはサイモンとガーファンクルの音楽があったから。
【若さゆえの性の過ちと、真の恋に目覚めた男の姿をサイモン&ガーファンクルの”ミセス・ロビンソン””スカボローフェア””サウンド・オブ・サイレンス”の名曲で彩った作品。】
ー 優秀な成績で大学を卒業したベンジャミン(ダスティン・ホフマン)。
パーティで両親の友人であるロビンソン夫人と出会い、やがてホテルで逢瀬を重ねるようになるが、虚無感は募るばかり。
何も知らない両親はそんな彼を心配し、夫人の娘・エレインとデートをするよう彼に勧めるが…。ー
◆感想
・劇場で初見時には、ロビンソン夫人の、ベンジャミンを有閑マダムの愉しみの様に誘う姿と、それに抗いながらも、ベッドを共にし、”卒業”したベンジャミンの姿に、”駄目じゃない!”と心中、突っ込んだものである。
だが、それを補う、サイモン&ガーファンクルの”ミセス・ロビンソン””スカボローフェア”の美しい音色に
”仕方がないなあ・・、けれど、私が20歳過ぎだったら拒める自信はないなあ・・、”
などと思いながら鑑賞したモノである。
ホント、スイマセン・・。
・そして、運命の悪戯の様に、ロビンソン夫人の娘、エレインと、ベンジャミンとの出会いが訪れて・・。
彼は、エレインにわざと、嫌われるように、粗い運転で、ストリップバーに行くが・・。
涙を流す、エレインの姿を見て、自らの行為を恥じ、ベンジャミンが言った言葉。
”君の事が、好きなんだ。本当に好きだ・・。”
・今作の、ラストの解釈が分かれるのは、分かる気がする。
”結婚式の途中で現れて花嫁を奪うなどとは、新郎のカールや親族の気持ちをどう考えているのだ!”
けれど、エレインはベンジャミンが現れた時に、実に嬉しそうな顔で、彼に従うのである。
花嫁衣装で、バスの中でエレインは、ベンジャミンに幸せそうに寄り添う。
あの表情を見れば、カールには申しわけないが、
”愛の深さで負けたんだよ・・”と言って、慰めたくなってしまうのである。
<きっと、二人の将来は厳しきモノであろう。
けれど、二人はその厳しさを克服するだろうなあ、という想いを持った作品である。>
<2019年7月 4Kデジタル版で伏見ミリオン座にて鑑賞>
<2022年1月11日 別媒体にて再鑑賞>
衝撃だった…自分は何を見ているんだろう
名作と言われているが。
カウンターカルチャーが流行ったのは理解してるが、それでも何故この映画が当時そんなに愛されたのか分からない。
セクハラおばさんに、ストーカー男に、何考えてんだかよくわからない二股女と、全員の行動が異常に見える。
ベンジャミンに関しては前半は生真面目な初心な青年といった感じでリアクションも自然だと思ったが、後半に行くにつれての異常行動はまるで人が変わってしまったよう。
映画の中で登場人物が倫理観のズレた行動を取ったとしても、(それが人殺しであったとしても)大抵はそれも人生に起こり得ることとして受け入れられるのだが、本作に関しては主要キャラ全員が真面目に狂っていて一体何を見させられているんだろうという気持ちになる。
最後の教会のシーンに至ってはもはやこらえきれずに声を上げて笑ってしまったが、この映画はコメディってことでいいのか?泣ける映画ランキングの上位で度々見かけてた気がするのだが、こんなに笑ってしまっても?
カメラワークは面白くてよかったんだけど。
思ってたのと違うけど
名作とは
「ターミネーター」を思い出すラストシーン
子供の頃、故郷の映画館「グリーンハウス」
で観たのが最初。
内容は解らなかったが、まだウブだった私
には随分と刺激的な映画だった。
この作品、最後の花嫁略奪シーンが
有名かと思うか、
私には動く歩道上のベンの描写に流れる
「サウンド・オブ・サイレンス」の
タイトルバックの方が
強く印象に残っている。
そして、初めに観た時の
「サウンド・オブ・サイレンス」
の意味なんて解ろうはずも無く、
ただただ、卒業=サイモンとガーファンクル
との代表的青春映画だった。
しかし、花嫁略奪シーンに痛快さを感じた
若い自分はもういない。
周囲に流されるばかりだった
ベンとエレーン、
後半からは主体性を身に付けつつある二人
ではあったものの、
最後の行動は一時的な感情の高揚が
もたらしたものと、
今後彼らの前に立ちはだかるであろう労苦を
心配するばかりの年齢になってしまった。
最後のバスの中での彼らの表情には、
そのずっと後に制作される
「ターミネーター」のラストで、
ヒロインが向かう暗雲のシーンを
思い出すばかりであった。
気になった点
素晴らしかった
20代の時にレンタルビデオで見て以来2回目。ダスティン・ホフマンが、人妻と最初にやった後に流れる『サウンド・オブ・サイレンス』は射精の後のメランコリックな気分そのものだ。香港の総合格闘技の映画『激戦 ハート・オブ・ファイト』で『サウンド・オブ・サイレンス』の対訳があって、歌詞あまりの暗さに衝撃を受けたので、改めて再生をいったん止めてネットで歌詞を見て、その後また同じ場面を見ると印象がぐっと深まる。『サウンド・オブ・サイレンス』が2回くらい、『スカボロー・フェア』は4回くらい掛かっていた。
ダスティン・ホフマンがめちゃくちゃになっていく様子が超絶に面白い。また、エレインにそんなに好かれている感じもしないのに、結婚式に乗り込んでいって見事奪還するのが意外なのだが、それでもあれだけ好き好き言われたら彼女の方も悪い気はしないのだろう。
大家に散々「出て行け」と言われているのだが、僕も仕事場で借りている1万2千円のアパートが大家と仲悪くしているので、共感を覚える。
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