「少年時代の衝撃映像体験」スター・ウォーズ Moiさんの映画レビュー(感想・評価)
少年時代の衝撃映像体験
感想
忘れもしない。1978年7月8日テアトル東京1階G19で初鑑賞。
アメリカ本国では1977年5月25日に全米50館で公開され予想外の記録的ヒット。当初FOXは海外配給を考えておらず日本公開は1年遅れることになる。
ジョージ・ルーカス監督は特撮技術を革新させるため、私費でインダストリアル・ライト・アンド・マジック(ILM)を特殊視覚音響効果制作部門として本作のためだけに創設。ILMは後に多数の特殊効果技師を輩出し、デジタル・ドメイン、ピクサーの設立に関わっていく事になる。
撮影秘密主義を徹底して実験的な技術要素を多く含み制作された本作は監督の(内容に自信が無いという)強い意向により異例とも言える広告宣伝を殆ど実施しないという既存の概念を全く無視した体制が取られた。これは本作に対する当時の映画製作会社の期待度の低さも影響していたとされる。リリースされるコンテンツも極限られた数秒のカットと写真のみであった。大ヒットの後、日本では情報量の少なさが話題となり映画の全体像と内容の把握が難しい状況が発生し謎の映画として折からのSFブームと相まって社会現象に近い騒ぎとなったのである。
日本の映画関係者、評論、作家達は待ちきれず、渡米し、(知り得る限りでは、石上三登志、小松左京、石ノ森章太郎、手塚治虫、西崎義展、の各氏、その他、東映、東宝の制作部等) 本作を鑑賞。それぞれが高く評価していた。
この間、日本では、映画製作会社が、前年の劇場用アニメ、『宇宙戦艦ヤマト』の大ヒットを発端として、SFブームの到来を予期、東宝では『惑星大戦争』、東映ではILMが開発した、その当時、世界に2台しかなかったシュノーケルカメラシステムを借り受け、『宇宙からのメッセージ』をそれぞれ制作。ヒットした。
この頃、中高生の間では、第一次アニメブームの真っ只中であり、自分のクラス内でも、ヤマト派が大半(8割)を占め、実写派である、スターウォーズ派は極少数派だった。
アメリカ本国での大ヒットの報を受け日本のマスコミは挙ってこの謎の作品の特集を組み、新たなコンテンツが判明する度、その都度テレビでも特集を組み放送。当時は現在とは比べものにならない程、映画の情報媒体は一部のテレビと雑誌や新聞のみに限られていた。最新技術家電であったビデオデッキはまだ家庭に浸透しておらず、録画の概念もなくタイムリーで視聴したり、首都圏を中心にデパートなどでイベントを開催していたのて今では考えられない程、積極的に参加。またスターログというSF月刊誌を輸入購読して情報収集していた。その他ジョン・ウィリアムズのOSTがロンドン交響楽団演奏という異色のセレクトと共に評判となり全米ミリオンセラー。日本でもヒット。もちろん購入して、素晴らしい楽曲と演奏に大感動し何度も聴き込んでいた。
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1年間待ちに待った、本編を6チャンネル超立体音響、当時最新のドルビーAシステム、スーパーシネラマ方式、日本最高の上映・音響システムを誇る劇場で鑑賞出来た事が、最高の思い出である。
20世紀FOXのファンファーレと共に始まる。魔法の呪文のような、A long time ago...が流れ、心は現実世界から完全に銀河の彼方に飛んでいってしまい、一瞬にして虜になった。
前節が広大な宇宙空間を石版のように進んでいく。ジョン・ウィリアムズの壮大なテーマ曲が流れる。
そこに突然、画面一面にものすごい勢いで砲撃をし合いながら登場する、大宇宙船!奥行き深く、シネラマスクリーン全面に広がり、見えなくなるほどになる。
爆音に近いすごい音、光、そして目眩く、追われていた、ブロッケードランナーのアンテナ部に着弾!轟音と共に画面は船内に移り、ドロイド達の登場、接続ハッチが激しく破壊され、ストームトルーパー対反乱軍のレーザーショットの大銃撃戦が展開される。
ドルビーAの重低音域を増幅させる効果で、発生する、爆破音の地響きの様な音と閃光に身震いして目がくらんだ。
暫くして、ダースベイダーの登場、レイア姫が、R2に3Dフォログラムメッセージをレコード、さらにタトゥイーンに脱出ポットが回転しながら、降下していくポッド内には2体のドロイド達。
惑星には大気が存在するのだという事をこの時、初めて意識した。それは驚異的にリアルな宇宙空間映像であった。
それまで観てきたSF映画とは全く異なる(『2001年宇宙の旅』は除く)、大人になった今でも思うことだか、それまでには考えられなかった程のリアルな異次元映像音響体験であり、頭をハンマーで殴られたような衝撃と感動、興奮は強烈で忘れられない。
話は単純明快。反乱軍対帝国軍の大宇宙戦争が豪快に展開していく。息つく暇もなく、見どころ満載で物語は展開していく。
バラエティに富んだ魅力的な登場人物達。辺境の星に棲む、青年ルーク・スカイウォーカー。フォース、(当時は『理力』と翻訳されていた)という不思議な力を操る、ジェダイを名乗る謎の老人オビワン・(ベン)ケノービ。反乱軍を指揮する惑星オルデラーンのレイア・オガーナ姫、宇宙盗賊でミレニアム・ファルコン号の船長ハン・ソロ、相棒のウーキー族、チューバッカ。そして、悪の権化ダース・ベーダー。帝国軍総督モフ・ターキン。また、物語の狂言回しとなっていく、2体のドロイドC-3POとR2-D2。
ありとあらゆるエンターテイメントの要素を詰め込んだという監督の制作意図の通り、冒険、勇気、友情、善と悪の戦い、そして理力、と夢の宝石箱をかき回した様な物語で、大満足。面白かった。この日以来、自称、SF映画(大好き)少年が、誕生する。
⭐️5
2025.3.22追記
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