「鮫の攻撃の恐怖を表現する音楽と演出が上手」ジョーズ Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
鮫の攻撃の恐怖を表現する音楽と演出が上手
総合70点 ( ストーリー:50点|キャスト:70点|演出:80点|ビジュアル:65点|音楽:80点 )
実際の鮫の生態とかけ離れていて、多くの視聴者が鮫のことを誤解することになったと鮫の専門家から批判もあった有名作。完全な悪役を巨大ホホジロザメが完璧に演じる。
この鮫、とにかくここぞという出番を外さない。子供が鮫の背びれを見せるいたずらで海水浴客を驚かせて後で、海水浴客も視聴者も気を抜いた瞬間を見逃さずしっかり本物の攻撃を行う。何故かその後は今までの食事場所だった浜辺のたくさんの人々を無視して、鮫狩りに出かけた漁師と主人公の乗る船だけをわざわざしつこく攻撃する。
「激突」もそうだったが、このころのスピルバーグ監督はほんとに善悪を白黒きっちりと分けて、悪役が善良なものを一方的に攻撃するというようなことを描かないと気が済まない単純思考な単細胞だなと呆れていた。時代のせいか鮫の模型もいかにも作り物で動きも良くない。
その一方で、恐怖映画としてはなかなかの緊張感がある。いったいいつどこから来るのかという怖さがあるし、それを描くスピルバーグの演出力はたいしたもの。動物の襲撃を取り上げた有名作品ということではヒッチコックの「鳥」が先だが、鳥と異なり実際に人が襲われて死んでいる鮫が巨大化して攻撃してくるだけあって実感として怖さが伝わる。
弦楽のゆっくりとした小さな低音から徐々に早く大きくなるウィリアムズの音楽がまた恐怖が迫ってくる雰囲気を盛り上げてくれる。これほど鮫の襲撃を象徴する音楽も他にないだろう。音楽と演出が相まってなかなかの迫力。物語はたいして好きではないが、純粋な娯楽として観れば鮫の攻撃の怖さを楽しめる。