10番街の殺人

劇場公開日:2025年7月18日

解説・あらすじ

「ミクロの決死圏」「絞殺魔」「ソイレント・グリーン」など多彩なジャンルの作品を手がけたリチャード・フライシャー監督が、イギリスで死刑制度が廃止されるきっかけとなった実在の冤罪事件「エヴァンス事件」をモチーフに撮りあげたクライムドラマ。

ロンドンの古いアパートに住むクリスティは温厚な元警察官だが、その正体は自らを医師と偽り女性を殺害する恐ろしい連続殺人鬼だった。新しくアパートに引っ越してきたティモシーの妻もその犠牲となり、しかもクリスティは自らの罪をティモシーにかぶせてしまう。

「ガンジー」などの名匠リチャード・アッテンボローが殺人鬼を強烈なキャラクターで演じ、「エレファント・マン」のジョン・ハートが共演。実際の殺人現場でロケをするなど徹底的にリアリズムにこだわりながら、事件現場のおぞましい体感や淡々と進んでいく裁判の恐怖を描き出す。アメリカを代表する名匠たちの傑作・異色作を上映する特集企画「新宿ハードコア傑作選」(2025年7月18日~9月4日/シネマート新宿)上映作品。

1971年製作/111分/イギリス
原題または英題:10 Rillington Place
配給:コピアポア・フィルム
劇場公開日:2025年7月18日

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映画レビュー

3.5 当時の英国の司法風土が参考に

2025年8月27日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

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ひぐらし2(ひぐらしから引継ぎ)

3.5 淡々と行われる猟奇殺人の恐怖と冤罪の恐怖

2025年7月20日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

イギリスが死刑を廃止するきっかけとなった冤罪事件である「エヴァンス事件」を題材とした作品でした。

舞台は第二次世界大戦直後のロンドン。大衆向けのアパートに暮らすジョン・クリスティ(リチャード・アッテンボロー)の部屋の上階に、ティモシー・エヴァンス(ジョン・ハート)とその妻ベリル(ジュディ・ギーソン)、そして幼い娘ジェラルディンが引っ越してきます。経済的に苦しいエヴァンス一家では日頃から夫婦喧嘩が絶えませんでしたが、ベリルが第二子を妊娠したことで口論が激化。やがて、ティモシーが妻と娘を殺害したとして逮捕され、裁判の結果死刑判決を受け、まもなく刑が執行されてしまいます。

しかしその後、アパートの壁の中から死体が発見されたことをきっかけに、真犯人はジョン・クリスティであることが明らかになります。しかも彼は、ベリルとジェラルディン母子以外にも複数の女性を殺害していた連続殺人犯であることが判明。クリスティもやがて逮捕され、同じく死刑に処されます。この事件を契機に、冤罪の可能性や死刑制度の是非についての議論が高まり、イギリスでは1969年に死刑制度が廃止されました。

物語のあらすじは以上の通りですが、本作の見どころは、ジョン・クリスティが淡々と女性たちを殺害していく描写にありました。ガスを嗅がせて昏倒させた後、絞殺するというのが彼の常套手段でしたが、彼がなぜこのような猟奇殺人に及ぶようになったのかは、作中でも明確には描かれていません。終盤の裁判シーンでは、彼が第一次世界大戦に従軍し、毒ガスの影響で一時的に視力を失っていたことが明かされますが、それが直接的な動機となったかは不明です。

また、彼は自らを「医者」あるいは「医療関係者」と偽り、言葉巧みに女性たちを騙して「治療」や「中絶手術」と称して犯行に及んでいました。つまり彼は、猟奇的な連続殺人犯であると同時に、稀代の詐欺師でもあったのです。見るからに怪しげな人物であれば誰もが警戒するところですが、元警察官(これは事実のようです)という経歴や、物腰柔らかで親しみやすい風貌、そして優しい語り口によって、被害者たちは容易に彼を信用してしまったのでしょう。

殺害の一連の過程が過剰な演出を排して淡々と描かれている点については、スリラー映画として見るとやや物足りなさを感じるかも知れません。しかし、日常に潜む狂気や危険をリアルに描くという点では、むしろその抑制された表現が効果的であったようにも思われました。

いずれにせよ、ひとたび死刑が執行されてしまえば、冤罪で命を奪われた被害を取り戻すことは永遠にできません。日本においても、こうした事例を踏まえて死刑制度を見直す必要があるのではないかと、改めて考えさせられる作品でした。

そんな訳で、本作の評価は★3.6とします。

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鶏

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