「ひたぶるに うら悲し」史上最大の作戦 トビーさんの映画レビュー(感想・評価)
ひたぶるに うら悲し
第二次世界大戦における連合軍の大規模反攻作戦(オーヴァーロード作戦)を描いた戦争映画。各国軍のパートを3人の監督がそれぞれ分担して制作しているからか、この年代の映画にしてはドイツを極端な極悪集団やマヌケな軍隊として描いておらず、プロパガンダ性も薄いので純粋に史伝映画として見やすいものとなっています。
ジョン・ウェイン、ヘンリー・フォンダ、ショーン・コネリーなど豪華大スターが出演しており、またこの映画に出たことで名を広めたという人も数多くいます。1960年代、カラーフィルムでの撮影が主流になってきた当時ですが、あえて白黒フィルムで撮影されているのも特徴で、これが逆に戦時映像のようなリアリティを感じさせており、自然と自分が1944年の西部戦線へと引き込まれるような感覚があります。物語は米英仏・ドイツ軍双方の視点で進行し、全体を俯瞰する構成になっているため、特定のキャラクターの成長やドラマ性よりも、戦争そのものの「全体像」を描くことに重点が置かれています。登場人物の多さに圧倒される部分もあり、「人間ドラマ」という点では『戦場にかける橋』などと比べるとやや物足りなくに感じるでしょう。
正直に言うと、戦闘シーンは後年の戦争映画を知っていると見劣りする部分もありますが、それでも60年前の作品とは思えないほど迫力があってスケールが大きく、編集のテンポも優れているため、3時間の長尺でも退屈する部分はありませんでした。
エンターテインメント性よりも史実と映像美を重視した硬派な大作で、戦争映画ファンなら一度は観ておきたい名作です。
コメントする