地獄の黙示録のレビュー・感想・評価
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ワルキューレの騎行
総合:75点 ( ストーリー:40点|キャスト:70点|演出:90点|ビジュアル:90点|音楽:80点 )
この作品の見せ場は、何と言っても騎兵隊がワーグナーの「ワルキューレの騎行」を大音量で流しながらベトコンの村を襲う場面に尽きる。本物の兵器を取り揃え、本物のナパーム弾を投下して椰子林を焼き払い、大金をかけて作り上げた村をを攻撃し破壊する。ロケット弾になぎ倒されるベトナム兵、怯えてヘリから降りるのを嫌がる兵士、こっそり手榴弾を持って近づく女、みんなが殺し合いをしている中で、波乗りのことで頭がいっぱいの意外に信頼のある隊長が、銃弾の飛び交う中でも早速波乗りを強要する。
映画の売上が順調でもあまりに本物にこだわり個人資産からも大金をつぎ込んだコッポラ監督を破産させてしまったほどだったが、それがゆえに映画史に残る大迫力の戦闘場面となった。この場面だけならば映像と演出は100点です。
その村を過ぎてさらに川を上る船は、だんだんとそのようなアメリカの優勢さを示すものがなくなり、どこにいるかわからないベトナムの勢力の怖さや戦争の持つ狂気的な雰囲気に包まれていく。そしてカーツ大佐と彼の支配する部落がまた狂気に支配されているように思える。牛を切り倒す場面も狂気のように撮影されて印象が強い。
これが戦争のもたらした狂気なのか、それとも脚本が狂気に触れて暴走して収集がつかなくなったのか。途中からの展開は難解で意味不明となる。
このように後半が何なのかわけがわからないのがいただけないのだが、その部分も含めて強い印象を残す作品になった。個人的にコッポラ監督という名を意識させられた最初の作品である。
劇場公開版リバイバル上映
NHK-BSで放送されていたのを見た。劇場公開版だと思ってみていたのだが、特別編を組み合わせたバージョンのようだった。
冒頭の酔拳みたいな型で鏡を割る場面は、特殊部隊で鍛えてカンフーも達人クラスの腕なように思っていたのだが、今見ると酔っぱらってふざけていただけだったようだ。
『サティスファクション』が掛かって若い黒人兵士が「これはオレの歌だぜ」というセリフがなかった。記憶違いかな。
キルゴア中佐の場面やプレイメイトの場面などなど圧倒的な場面がたくさんあった。
カーツ大佐が出てからは眠くて途中で何度も中断して寝てしまい、変な寝方をしたせいで頭痛がした。
牛がスローモーションで叩き斬られる場面で終わると思っていたら、そうじゃなかった。見た当時は「なんだこれ?」と思ったものだが、特別編で盛り上がる戦闘場面でいい感じに終わると、逆に何か普通じゃんみたいな物足りなさを感じた。あの牛の変な場面が心にこびりつく感じがしてよかったのかと思った。
劇場公開版をちゃんと見たい。
(追記)
シネウィンドで劇場公開版をリバイバル上映で見た。すると、牛をスローモーションで切る場面などなく、BSで放映されたのは第3のバージョンではなく、劇場公開版だったのかもしれない。そんな場面はそもそも存在せず、オレが脳内で作り上げた場面だったのかもしれない。牛はあっさり切られていた。
この映画は主人公のウィラードがほぼ何もしない。ボートに乗って他人の戦場をうろうろしているだけだ。特殊部隊の工作員みたいに言われていて、凄腕なのかなと勝手にこっちが思っていたのだが、凄腕かどうかも全然分からなかった。最後にマーロン・ブランドをめった刺しにするだけだった。アル中気味で精神を病んでいた。
そんな何もしない主人公だからこそ何度見ても面白いのかな。すっきり謎が解けるような映画は何度も見れない。それに何よりここまで贅沢で迫力のある映像はそうそう滅多にない。また何年かしたら見よう。
"恐怖"と"狂気"から見えてくる人間の本能
無秩序を生み出す人間の本能的衝動と理性の崩壊を追体験する恐怖と狂気の旅である。
狂気となったカーツ大佐を抹殺する命を受け、ウィラード大尉は、狂気を生み出す根源を辿るように河を遡って行く。
戦争が作り出す無秩序な世界が日常のように繰り返され、狂ったように人を殺す。
其処で出会う場面場面全てに正気な人間など存在しない。
二時間余りの狂気の追体験を終えた私達は、カーツ大佐の元へ辿り着き、彼の口から殺戮は人間の本能的衝動なのだと聞かされる。 妙に納得してしまう。
戦争が"狂気"を生み出すのでは無く、人間の持つ"恐怖心"こそが狂気のまかり通る無秩序な世界を作り上げるのだと映画は語る。 しかし、一方で"恐怖心"は秩序と道徳のある世界を創造するにも必要不可欠であることさえも見えてくる。
道徳や秩序を超越して人間的本能の根源に迫る映画にしか出来ない表現力を持った傑作だ。
こ、こあい。。。
ゴッドファーザーで成功を収めたフランシス・フォード・コッポラ監督が、映画化不可能と言われたジョセフ・コンラッド原作の「闇の奥」を手掛けた。原作はアフリカを舞台に金の採掘会社で働く男の物語だったが、これはその骨格をベトナム戦争に当てはめたもの。ちなみにこの映画の撮影当時は実際にベトナム戦争中だった。
そんな中でフィリピンロケで戦争の狂気を描く。撮影中に主役を降板させたのが不運の始まりか、ロケ地に竜巻は襲うわ、製作費は底をつくわ、しまいには主役代役のマーティン・シーンは心臓発作を起こすわの災難つづき。コッポラさん、かなり神経いってたようで、これのメイキング映画では、銃をこめかみにつけるコッポラ氏の写真まで見れる。(わたくしの解釈では、これはたぶん半分嘘。)
そんな状況下で撮影しただけあってこの映画に流れる戦慄はすさまじいものとなっています。なんていうか、画面から何か出てるんですね、怖いものが。そして締めのマーロン・ブランドがこれまた怖い。「ベトナム戦争映画史上、最高にして最大の失敗作」と言われたらしいが、たしかに解釈的にはコンラッドの原作をベトナムに合わせるのは無理があったのかもしれない。それでも人間の狂気をここまでまざまざとリアルに引き出した本作は、やっぱり映画史上に残る傑作だと思います。
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