極楽特急

劇場公開日:

解説

「私の殺した男」「君とひととき」に次いでエルンスト・ルビッチが監督した映画で、ラスロ・アラダール作の舞台劇The Honest Finderを、「歓呼の涯」のグローヴァー・ジョーンズが映画化し、「陽気な中尉さん」のサムソン・ラファエルソンが脚色、「私の殺した男」「今晩愛して頂戴ナ」と同じくヴィクター・ミルナーが撮影を担当した。主演者は「ジーキル博士とハイド氏(1932)」「闇に踊る(1932)」のミリアム・ホプキンス、「男子入用」「街のをんな」のケイ・フランシス、および「女秘書の秘密」「ブロンド・ヴィナス」のハーバート・マーシャルの3人で、これを助けて「今晩愛して頂戴ナ」のチャールズ・ラグルズ、「類人猿ターザン」のC・オーブリー・スミス、「月世界征服(1931)」のエドワード・エヴァレット・ホートンが出演する。

1932年製作/アメリカ
原題または英題:Trouble in Paradise
配給:パラマウント支社輸入
劇場公開日:1933年1月

ストーリー

ヴェニス。月光とキャナルは青白く流れ、空気は甘い、甘い音楽で満たされている。その香ぐわしい一夜、ホテルのバルコーでガストンとリリイは恋を囁いている。彼らは紳士と淑女を装ってはいるが実は盗賊なのである。蛇の道は蛇で、2人はすぐにお互いの立場を了解してしまう。ちょうどその時、ホテルの泊まり客の1人パリの金満家フランソアはたった今遭った盗難のいきさつを警官に告げている。その盗賊は医者に化けてきて扁桃腺を見てやるといって、彼の懐中から2万リラの大金を盗んでいったというのである。いつの間にか、つけひげを落とした犯人のガストンは騒ぎを尻目にかけてリリイと手を携えてホテルをドロンしてしまう。2年後。パリでオペラ見物に行ったガストンは、有名な金持ち後家さんマリアンヌのすばらしいハンドバッグに目をつけ、彼女が同伴者の少佐にうるさく口説かれている隙に失敬してしまう。マリアンヌは翌朝の新聞に、この紛失品発見者に賞金を与える旨広告を出す。ガストンは空々しく自分が盗んだハンドバッグをもって彼女を訪れ、言葉巧みにとりいって忽ちその信用を得て秘書に雇われることとなる。その上に彼はリリイを小間使いとして住み込ませることに成功する。そのうちにマリアンヌはガストンに惚れてしまう。リリイは主人に自分の恋人を取られることを恐れ、盗めるだけの物を盗んでベルリンへ高跳びすることをガストンに勧める。その夜少佐邸に晩餐に招かれたマリアンヌは、席上、ヴェニスでガストンに財布を取られたフランソアからあの時の盗賊とあなたの秘書とは同一人物だといって聞かされる。半信半疑で急いで帰宅してみると、ガストンとリリイが金庫破りの現場に行き合わせる。ガストンは悪びれもせず自分の素姓を明かし、驚き嘆くマリアンヌに優しく言う。「今のうちに気がつかれて奥様がこれ以上不幸な目を見ずに済んだことを喜びます。ただし奥様は私が去ってしまったらきっと大切なものをなくしたことに気がつかれるでしょう」マリアンヌは彼女が恋を失うことを意味するのだと思ってうなづく。ところがガストンはマリアンヌの真珠の首飾りを強奪して「これが紛失品です」と言って、リリイとともにベルリン行の急行列車に乗るべくタクシーに飛び乗ったのである。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.0自由でコミカル

2024年1月18日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

軽妙洒脱とはこのこと。色気よ。

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ouosou

3.5今はこんな呑気で優雅な泥棒なんて

2023年6月27日
iPhoneアプリから投稿

なんとも言えない呑気な泥棒の雰囲気が可愛い。
今はこんな呑気で優雅な泥棒なんて描けないだろうなと思うとすごく良い。
モダンでおしゃれで、大人な恋の駆け引き。

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madu

3.5上品なボニー&クライド

2022年11月8日
iPhoneアプリから投稿

華麗な手捌きで上流階級から金品を盗み出す泥棒カップル。ボニー&クライドと形容するにはあまりにも瀟洒な2人が織り成すウイットに富んだ掛け合いが気持ち良い。お互いの私物を盗み合うシーンなどは、キートンの無声アクション映画を彷彿とさせるような外連味に満ちている。

彼らはあるとき巨大化粧品会社の遺産にエイムを合わせるのだが、そこを仕切っている未亡人のなんとも美しいこと。カップルの男ははじめこそ殊勝な振る舞いで会社の重役にまで上り詰めるが、次第に未亡人の美しさに魅惑されていく。未亡人もおいそれと男の手に堕ちるようなヘマはやらず、付かず離れずの距離感で男を焦らす。

しかし二人は泥棒と資本家、いわば現代のロミオとジュリエット。二人がめでたく結ばれるはずもなく、計画の露呈と愛しのハニーの乱入によって恋の情熱は泡沫と消える。男が去り際に未亡人の美しい真珠のネックレスを盗んでいくシーンがちょうどいい塩梅に感傷的で美しい。次のシークエンスでは男は泥棒女とヨリを戻しており、二人の仲睦まじい盗み合いが作品にハッピーエンドのピリオドを刻む。

こんな浮気者をよくもまああっさりと…という疑念が残らないでもないが、そのあたりをバッサリと切り捨てられる軽佻浮薄さが黄金期ハリウッド映画の気持ちよさだ。こういうのはヨーロッパやアジアじゃまずお目にかかれない。

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因果

4.0口説きの心理描写と粋な会話が愉しい大人の映画にしてルビッチ監督の面目躍如

2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

エルンスト・ルビッチ監督の代表作の一本。一組の泥棒カップルが織り成す恋と騙しの大人の遊びを上品に楽しく描いたソフィスティケーションコメディ。サイレント映画「結婚哲学」に通じる、男女間の口説きの心理描写の巧みさ、トーキー映画の利点を生かした会話のお洒落で粋なルビッチタッチが存分に楽しめる。最後の化粧品会社女性オーナー、ケイ・フランシスと主人公の泥棒ミリアム・ホプキンスの恋の駆け引き場面が、特に秀逸だ。大人のユーモアでは唯一無二の巨匠監督ルビッチの面目躍如の名作。

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Gustav

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