幸福への招待(1956)
劇場公開日:1957年1月12日
解説
「過去をもつ愛情」のアンリ・ヴェルヌイユが監督した抒情篇。脚本はヴェルヌイユと「洪水の前」のシャルル・スパークが共同で書き卸し、台詞もスパークが担当した。撮影は「男の争い」のフィリップ・アゴスティニ、音楽は「外国の陰謀」のポール・デュラン。出演者は「過去をもつ愛情」のフランソワーズ・アルヌール、「パンと恋と夢」の伊男優ロベルト・リッソ、「たそがれの女心」以来のシャルル・ボワイエの三人を中心に、「巴里野郎」のティルダ・タマール、「不良の掟」のジュリアン・カレット、「巴里野郎」のダリー・カウルなど。
1956年製作/105分/フランス
原題または英題:Paris Palace Hotel
劇場公開日:1957年1月12日
ストーリー
クリスマス・イヴを明日に控えた十二月二十三日の巴里。人々はお祭り準備に忙しいが、高級ホテル“パリ・パラス・ホテル”の美容室で働くマニキュア娘フランソワーズ(フランソワーズ・アルヌール)にとって、豪華なクリスマスなど全くの夢だった。その日、閉店も近い夕方七時頃、四一二号室から呼出しがかかる。尻ごみする新入り娘に代りフランソワーズが行ってみると、部屋の主はアンリ・ドロルメル(シャルル・ボワイエ)というスマートな中老紳士。チューリッヒに旅行する夫人マドレーヌ(ティルダ・タマール)の服の選択に大わらわである。仕事を終えての帰途、フランソワーズは折からの雨に、ハンサムな青年(ロベルト・リッソ)の高級車で送って貰うが、彼がジェラール・ブリュニョンという名で、電気冷蔵庫の製造会社を経営していると聞くや、先刻のドロルメル氏の娘になりすまし、パリ・パラス・ホテルに滞在中と話してしまう。この青年に心惹かれたものの、自分のついた嘘を思うと佗しくならざるを得ない。ところがブリュニョン青年の正体は、車をとりにやらされたガレージの機械工。本性を偽ってしまったものの、何とかして今一度あの金持娘に会いたいと想いをめぐらす。一方、神経痛を装い、口うるさい妻を一人で発たせたドロルメル氏は大元気。かねて夢みた通り、一人でパリのクリスマスを楽しもうとフランソワーズをイヴの晩餐に招く。昨夜のナイトに心を惹かれながらも、あてのない彼女は申し出を承諾。ジェラールはやっと彼女と電話で話すことに成功。結局、ドロルメル氏の娘になりすましたフランソワーズが四一二号室にジェラールを招き三人で食事することになる。その夜発つというブリュニョン氏に車をとりあげられたジェラールは、同僚から工面した金で若き富豪よろしく四一二号室にのりこむ。食事の前に街へ踊りに出ることになり、ジェラールはホテル前に停っていたブリュニョン氏の車で二人を夜の街へ御案内。喧騒に渦巻くナイトクラブでドロルメル氏をマイたフランソワーズとジェラールは、乗った人を素晴しい晩餐に招待するという行先不明のバス“びっくり号”に乗りこむ。ドロルメル氏はうさ晴らしに、バルバラという女を誘って車を走らせるが、高級車窃盗現行犯として逮捕され留置場入り。雪の山道でバスは立往生し、最後まで残った若い二人が案内されたのは見知らぬ大邸宅での豪華な晩餐。一方、警察で車の持主ブリュニョン氏と対決したドロルメル氏は、ようやく自分の損な役まわりを悟る。翌日、ブリュニョン氏が夫人と発ったと聞いたフランソワーズは、ジェラールも発ったと思い込み、意気銷沈してしまう。彼女を慰めたドロルメル氏は、今度こそは二人きりの食事をと用意するが、ドロルメル氏に娘はいないと聞き驚き慌ててとびこんできたジェラールに、浮気心もどこへやら。この場は二人に任そうと部屋をとび出す。食事も運び込まれた四一二号室で、誤解もとけた若い二人は幸福な抱擁に酔う。街へ出ようとしたドロルメル氏はチューリッヒは退屈だからすぐ帰るという妻の電報を手渡される。かくてこの物語は、若い二人の結婚と、ドロルメル氏の神経痛再発という次第で幕となった。