恋する惑星のレビュー・感想・評価
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記憶と時限
ウォン・カーウァイ監督作品。
映画館でみましたが、人が多くてびっくり。愛されている作品だとよく分かる。
ウォン・カーウァイ作品群に共通する重要概念は、「時限」と「記憶」であると思っている。人々は香港を舞台に出会い、恋に落ちる。恋愛は鮮やかに。しかし高まる愛には、既に終わりの影が落ちており、彼らは永遠の別れを余儀なくされる。期限付きの人間関係。それが一つの特徴である。
だが彼らは、記憶し続ける。かつてあったことを、抱いた感情を。それがあまりにも儚く虚しいからこそ、私たち鑑賞者の胸に響くのである。
このことは香港の政治情勢と共振している。香港は一国二制度によって、高度な自治が認められ、「自由」が許されている。しかしそれはイギリスから香港が返還されてからの50年である2046年までの期限付きの「自由」なのである。
ウォン・カーウァイ作品群は、独特なカメラワークとスタイリッシュさで若者の不安定だけど美しい恋愛、人間関係を描いているとされている。それはもちろん正しい。だがより魅力的なのは、若者の実存に焦点を当てるだけでなく、香港の不安定な未来と重ね合わせながら、期限付きの儚さと美しさや現在ーそれは90年代から00年代ーの香港とそこで生きる人々を記録し、記憶しようとしている点なのではないだろうか。
本作に戻ろう。本作は二部構成である。
一部。
金髪の彼女と警官。彼らは出会い、打ち解け、別れる。それぞれの悲しい記憶を抱えながら。警官は、自分の誕生日である5月1日が賞味期限のパイン缶を開封しながら食べ続ける。期限がきれても、元恋人との復縁もなければ、未練も消え失せない。ただただ元恋人への思いが開封され続けるだけなのである。
彼らの邂逅は一夜で終わり、金髪の彼女の復讐は果たされる。ボスの死体と共に、金髪のかつらが地面に落ちている。金髪の彼女は彼らの記憶の中に、そして彼らは二度と会えないのである。
二部。
店員フェイと警官。彼らもまた出会い、打ち解け、別れる。警官もまた5月1日が賞味期限のパイン缶を開封しながら食べ続ける。それは同じく元恋人への思いの開封なのである。それは部屋にも言えることである。彼女と過ごした記憶を失わないように、部屋は片づけず、物に語りながら記憶し続けているのである。だからこそフェイが警官の部屋に侵入し、模様替えをするのは、重要な出来事である。記憶の刷新。彼を未来へと向かわせるのである。警官はフェイをデートに誘うのだが、フェイは来ない。フェイは元恋人と同様にCAになり、カリフォルニアに行ってしまうのである。二人は別れる。しかし一年という時限が過ぎた後に、二人は再会するのである。変わり果てたお店の前で。ここでも香港の変わりゆく風情と重ね合わせながら、二人の恋愛模様が描かれているのである。
一部と二部どちらも素晴らしい物語である。そして改めて「時限」と「記憶」は、映画と私たち鑑賞者の関係にも言えることだと気づく。
上映時間という有限な時間の中で、彼らの物語をカメラで記録し、私たち鑑賞者が記憶すること。それがまさに映画の営為のような気がするのである。
映画的オマージュに溢れた恋愛映画
ウォン・カーウァイ監督と撮影監督クリストファー・ドイルの名コンビが生み出した映像は、それまでの香港映画だけでなくアジア映画のイメージも一新した。そのスタイリッシュな映像と世界観は、いつ何度見ても新たな発見と感動があり、映画作りの楽しさまで伝わってくるその文法はその後の映画に多大な影響を与えている。
カーウァイ監督はモノローグと即興的な演出を多用し、俳優たちが持っている魅力を生かして、ドイルのヴィヴィッドな色彩とカメラワークによる映像、ウィリアム・チャンの美術、さらにポップな音楽や異国の曲と掛け合わせて物語を描くスタイルで、その語り口はとても新鮮であった。そして新鮮であると同時に、カーウァイ作品は映画的なオマージュに満ち溢れているところも映画ファンの心をくすぐった。
開放的で軟弱で脆くていい時代だった香港。描くことがなにもなかったのだろう。
封切り当時に観た映画をもう一度観る気になったのはその頃この映画を大好きだと言った女が死んだからだった。
男と女は基本違う生き物で、その違うと言うことを分かってさえいれば幸せを呼び込めるものなのだ。しかし、コレがどうにもこうにも上手く行かない。だから人生なのだろう。哲学や政治や観念など全く無に等しいと語るようにこの映画は撮られている。
人が創造的になるのは最も危険な時、暴力を振るったり周りの人間を深く傷つけて満足したりする。混沌が覆面を被って大手を振るって歩いてるこの街のことを辿々しく描いてみせた監督はいま何処でどうしているのだろう。僕はあの頃と変わらず朝焼けを見逃しながら夕暮ればかりを追いかけている。
あの頃と言えば。
音量が大きすぎて厳しいか…
今年333本目(合計1,425本目/今月(2024年9月度)19本目)。
※ (前期)今年237本目(合計1,329本目/今月(2024年6月度)37本目)。
以前に放映されていたものですが、復刻上映されていたので見に行きました。
「惑星」というのは余り意味のある語ではなく、複数の(映画内で主に描かれるのは1~2組のカップルが多いですが)カップルの恋愛模様に論点があたる映画です。日本映画ではないですが隣国でもあるので文化の推定がききやすく、日本から見ても共感できる点が多いのが良かったところです。実際にはもっと前の作品のようですが、2023~24年時点で見ても良かったなといったところです(日本から諸外国にリメイクされる作品もありますが、本作品をはじめとして文化が似ている韓国・台湾ほかの作品は日本に逆リメイクされても良いかも)。
一方で数名の方が書かれている通り、余りにも超爆音放送が過ぎて(映画館トラブルかと思ってスタッフさんに聞いたらそうでもないらしい)、字幕があるので困ることはないですが、インドのいわゆるマサラ上映ほどではないですが、かなり「うるさい」映画であること、また音楽とそのシーンのつり合いが取れていないと思えるシーンもあり(これもトラブルではないらしい)、ちょっとそこが厳しかったかなといったところです。
※ 本作品は現在では各種VODで見ることができるので、わからなかった点はあとで確認したくらいです(その場合でも爆音放送になるのですが、極論音量0にすることもできるので)。
採点に関しては以下まで考慮しています。
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(減点0.3/大音量が過ぎて雰囲気にあっていない)
もちろん大爆音の応援放送があったり、あるいは、インド映画などは一般的にそうですが、恋愛を描くこの映画でそこまで大音量にする意味があまりなく、ちょっとそこがどうかなと思ったところです(これまでシネマート等で中国台湾映画は多くみてきましたが、全体的傾向であるわけではないし、この映画がそこまでの大音量なのは正直謎)。
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オシャレ・ミュージック・ビデオ
とても素敵なセンスある邦題💞🪐
BGMの音量が大きすぎる
エイプリルフールに失恋した識別番号223号の刑事モウは、彼女と再びヨリが戻る事を願い、振られた日から1カ月後の自分の誕生日まで、彼女が好きだったパイナップルの缶詰を毎日買い続けていた。5月1日になり、30缶のパイナップルを食べ、恋人を忘れようとした。そして、偶然入ったバーで出会った金髪にサングラスの女に自分の恋人になってもらおうとした。一方、ハンバーガーショップの店員フェイは、店の常連客の識別番号633号の警官宛の手紙を預かった、と店主から言われ、その手紙を開けてみると、中身は識別番号633号の元恋人からのもので、彼の部屋の鍵が同封されていた。彼に片想いしていたフェイは、その鍵を使って彼の部屋に忍び込み・・・さてどうなる、という話。
刑事や警官はほとんど関係なくて、グダグダな男女の恋愛話みたい。
とにかくBGMの音量が大きすぎてセリフが聴き取りにくく、ストーリーが頭に入ってこない。
狙った演出なんだろうけど、不快だった。
それにブレブレな映像も演出だろうけど、これも観にくくて不快だった。
古い作品だから、当時こんなのが良かったのか、記憶に無いが、今観ると合わなかった。
カルフォルニアの件も、なんのこっちゃかわからなかった。好きな人からデートに誘われたのにすっぽかす、ってどういう心情だったのだろう?何か見落としたのかも。
識別番号223号の刑事役の金城武は台湾語、広東語、北京語、英語、日本語まで話していて、さすがだなぁ、と感心した。
識別番号633号の警官は・・・どこが良かったからフェイに気に入られたのか、それがわからなかった。トニー・レオンを知らないが、イケメン、とも思えなかったし。
何を見せられてるのか、ついていけず、おまけにBGMがずっと不快で、合わなかった。
当時の生きた感覚は
時代…
アジア風の街並み、雰囲気。
ん〜残念、自分には本作の良さは全くわからなかった
この作品は劇場公開時から知ってましたが縁がなく未見だったので、今回フィルマークスのリバイバル企画で鑑賞
正直、作品として何がどう評価に値するか終始疑問でした
たぶん“っぽく”見せているだけで何も意味なんて無くて、雰囲気を作り込んである作品なんだろうな、といったのが全般の感想
キャラクターが止まって背景だけが動く独特の映像表現がスタイリッシュと言いたいのかもしれないけど、自分にはちょっと心地悪い映像だった
でも、雑多な90年代の香港はとても魅力的には映っていて、とても良かったです
刑事223号を演じる金城武さんの演技が酷すぎるし、金城パートは全くもって意味不明なストーリー展開
方や警官633号を演じるトニー・レオンさんはとてもハンサムだし演技もしっかりしていて、メチャクチャかっこ良かった
あと本作の一番の見どころ(魅力)はメインビジュアルにもなっているフェイ・ウォンさんなんだろうけど、全くチャーミングさを感じず、演技も・・・
と、なんか全然ダメでした
返還前香港の混沌な極彩色豊かな街並みを見事活写、街並みが5人目のメインキャストですね
新文芸坐さん「熱烈アンコール 真夏のウォン・カーウァイ」特集にて『恋する惑星』(1994)『天使の涙』(1995)を久々のスクリーン鑑賞。
『恋する惑星』は1994年制作、今年2024年で30周年。
つい数年前の作品と思ってましたが、光陰矢の如し、時の流れの早さに卒倒しそうです。
劇場は両作品とも超満員(264席)。
公開当時は産まれていないだろう若い観客も多く、不朽の名作として新しいファンが常に創出されているようでうれしいですね。
『恋する惑星』(1994)
まずは『重慶森林』という原題を邦題『恋する惑星』に決めた方は凄いですね、原題よりも作品世界にマッチして、作品イメージを膨らませてますね。
ストーリーは金城武さんと金髪女性(ブリジット・リン)の前半とトニー・レオンとフェイ・ウォンの後半の2つの恋愛がシームレスな2部構成になっている点も優れてますが、何といってもクリストファー・ドイルのまるで生き物のような動き回る激しいカメラワークとアングルは返還前の香港の混沌で猥雑、極彩色豊かな街並みを見事に活写してますね。まさに街並みが5人目のメインキャストです。
とにかく当時もそのテンポの速さに驚きましたが、令和の今となっては丁度良いテンポ、本作品が30年経っても全く古臭さを感じさせない一因ですね。
フェイ・ウォンもキュート、トニー・レオンも男前でしたが、特に金城武さんは日本語・北京語・広東語・台湾語・英語が堪能で、当時もアジア各国がエンタメの世界ではグローバル、ボーダレスになる未来を感じさてくれましたね。
そして忘れてはいけないのは挿入曲。
ママス&パパス「夢のカルフォルニア」、デニス・ブラウン「Things in Life」、エンディング曲の「夢中人」は映画史に残るスクリーン・ミュージックですね。
恋っていいね!
作品の奔放さは合わなかったがエネルギーは凄い
世界はこれを恋と呼ぶんだぜ。『スパゲティコード・ラブ』をTIFFで観た時、この作品の名前を出している人がいて、それからずっと気になっていた。なかなか独特だけど、映画館を出た後、妙にカッコつけたくなる自分が余韻に浸っていることを感じさせる。
序盤からセンセーショナル。香港の細い路地をカメラが駆け巡っていく。人と食品の匂いが充満した世界に差し込むレーザーは、2人の出会いを劇的に色付けていく。これだけで行くのかと思ったら、若干オムニバス感覚で進んで行くので、少し掴みにくかった。ストーカーのような恋にドン引きしたり、やたら店にみんな出向いたり。自由さを肯定できないものの、恋することの高揚を存分に引き出していることは分かる。つまり、心が躍ることの表現としては凄く長けている。そこが評価せれているんだろうけど、決して上手い作品とは思えないなぁ…。
帰りにコーラを買った。コートが揺れて、新宿の夜景は華やかに私を彩る。自分を主人公にさせてくれる魔法がそこにはあった。
不思議ちゃん
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