「返還前香港の混沌な極彩色豊かな街並みを見事活写、街並みが5人目のメインキャストですね」恋する惑星 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)
返還前香港の混沌な極彩色豊かな街並みを見事活写、街並みが5人目のメインキャストですね
新文芸坐さん「熱烈アンコール 真夏のウォン・カーウァイ」特集にて『恋する惑星』(1994)『天使の涙』(1995)を久々のスクリーン鑑賞。
『恋する惑星』は1994年制作、今年2024年で30周年。
つい数年前の作品と思ってましたが、光陰矢の如し、時の流れの早さに卒倒しそうです。
劇場は両作品とも超満員(264席)。
公開当時は産まれていないだろう若い観客も多く、不朽の名作として新しいファンが常に創出されているようでうれしいですね。
『恋する惑星』(1994)
まずは『重慶森林』という原題を邦題『恋する惑星』に決めた方は凄いですね、原題よりも作品世界にマッチして、作品イメージを膨らませてますね。
ストーリーは金城武さんと金髪女性(ブリジット・リン)の前半とトニー・レオンとフェイ・ウォンの後半の2つの恋愛がシームレスな2部構成になっている点も優れてますが、何といってもクリストファー・ドイルのまるで生き物のような動き回る激しいカメラワークとアングルは返還前の香港の混沌で猥雑、極彩色豊かな街並みを見事に活写してますね。まさに街並みが5人目のメインキャストです。
とにかく当時もそのテンポの速さに驚きましたが、令和の今となっては丁度良いテンポ、本作品が30年経っても全く古臭さを感じさせない一因ですね。
フェイ・ウォンもキュート、トニー・レオンも男前でしたが、特に金城武さんは日本語・北京語・広東語・台湾語・英語が堪能で、当時もアジア各国がエンタメの世界ではグローバル、ボーダレスになる未来を感じさてくれましたね。
そして忘れてはいけないのは挿入曲。
ママス&パパス「夢のカルフォルニア」、デニス・ブラウン「Things in Life」、エンディング曲の「夢中人」は映画史に残るスクリーン・ミュージックですね。