月世界征服(1950)

劇場公開日:

解説

物理学者であり科学小説家であるロバート・ハインラインの原作小説から、原作者とリップ・ヴァン・ロンケル、ジェームズ・オハンロンが共同脚色し、「奇蹟の鐘」のアーヴィング・ピチェルが監督した。動画製作に従事していたジョージ・パル製作の1950年作品で、撮影は「ハリウッド・アルバム」のライオネル・リンドン、音楽はリース・スティーヴンス。ジョン・アーチャー、ワーナー・アンダーソン、トム・パワース、ディック・ウェッソン、エリン・オブライエン・ムーアらが共演する。

1950年製作/92分/アメリカ
原題または英題:Destination Moon
配給:松竹映画
劇場公開日:1951年3月6日

ストーリー

数年間の労苦の後、カーグレイヴス博士とセイヤー将軍は、実業家バーンズの援助を受けて、原子式天体飛行艇を設計した。かくて月世界征服の第一号飛行艇はバーンズ、セイヤー、カーグレイヴスの三人と若い技術家スウィニーをのせて地球を飛立ち、途中さまざまのスリルを体験しつつ、月の北部にあるハーパラス噴火口に到着した。彼らは探検の経過を、ラジオによって地球に伝えつづけたが、いよいよ帰途につくに当り、艇の重量が月の引力を離れるには重すぎることが判明した。一行はあらゆるものを捨て去り、ついに地球との連絡の唯一の手段であるラジオまで残して艇の人となった。艇が次第に接近して行く地球では、全世界の人類が彼らの成果を待ちわびていた。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第23回 アカデミー賞(1951年)

受賞

特殊効果賞  

ノミネート

美術賞(カラー)  

第1回 ベルリン国際映画祭(1951年)

受賞

銅熊賞(スリラー&アドベンチャー映画) アービング・ピシェル
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映画レビュー

4.52001年宇宙の旅の直接の先祖であるだけでなく、社会的影響力すら勝りこそすれ劣ることはない

2019年2月3日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

素晴らしい!
1950年の製作であるがカラー作品
つまり予算と気合いが入った作品ということ
世界初の人工衛星スプートニクはこの7年も後だ
ガガーリンによる初の有人宇宙飛行は11年も後の事になる
であるのに、当時の科学知識を総動員してしっかりと作られており、ほとんどの映像に科学考証の間違いが見られない
原作はSF作家の巨匠ロバート・ハインラインであることによるが、出来うる限り科学考証に忠実であろうという製作態度である
後年のSF映画の方が噴飯もののシーンが多いぐらいだ
現代の作品であってもだ

この科学考証に忠実な製作態度は2001年宇宙の旅に於けるキューブリック監督と同じスタンスであり、本作が2001年宇宙の旅の直接の先祖であると言って良いと思う

宇宙空間に浮かぶ半月状の地球の映像は、当時誰も見たことも無い強烈なセンスオブワンダーな映像だったはずだ

月着陸シーンはアポロ11号の実際のシーンとさして変わらないくらいだ

原子力宇宙船ルナ号はディスカバリー号のように真空の宇宙空間を無音で飛行する
静止しているかのように
無論、慣性飛行中であるから後尾の噴射ノズルから噴射炎もない

そして驚いたのは宇宙服だ
乗組員4人毎に色が違う設定なのだ
2001年のディスカバリー号の宇宙服がカラーバリエーションになっているのは本作が由来ではないか?
何しろ船長の着用する宇宙服はボーマン船長の宇宙服の赤色に似たオレンジ色なのだ

そしてクライマックスにはエアロックから宇宙服を投棄するシーンすらあるのだ

前半のハイライトは、月に向かう途中での慣性飛行中の船外活動シーン
不注意により一人の宇宙飛行士が宇宙空間に流されてしまう

救助シーンは、ほとんどゼログラビティそのままのシーンが展開されるのだ

70年近い昔、まだ人工衛星すら存在していない、人間が宇宙飛行が出来るのかすらもわからない時代に、想像だけでこのような映像を作れたことに驚嘆するほかない

本作はこのように2001年宇宙の旅やその他のSF映画に極めて大きな影響を与えたのは間違いない

いやそれだけでなく、現実のアメリカの宇宙開発政策に影響を与えていたこともあきらかだ
本作の後に米ソの宇宙開発競争が起こり、米国が立ち遅れて、必死の努力で追い越し月への有人着陸飛行を成功させる
それは全く本作が冒頭で述べるそのままの展開となったわけだ

何しろ宇宙基地はテキサスに作るとまで言い切り、アームストロング船長の月着陸のコメントを彷彿とさせるシーンまである
予言あるいは未来シナリオと言うべきくらいだ

そして宇宙を制するものは地球を制するのだとの将軍のセリフに一同が顔色を変えるシーンは、21世紀ではそれが現実化していることがハッキリしている
中国の宇宙の軍事利用に対抗するために、米国は宇宙軍を設立したのだから

つまり本作は2001年宇宙の旅の直接の先祖であるだけでなく、社会的影響力すら勝りこそすれ劣ることはない
それほどの意義をもつ重要な名作だ

エンドマークは、ジスイズエンドとでる
そして一瞬遅れてその下に、ツウザビギニングと続くのだ

この物語は宇宙開発の最初の一歩に過ぎないと
それこそが本作のテーマだったのだ

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あき240

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