「クストリッツァの作品は動物と老人がかかせない」黒猫・白猫 あんゆ~るさんの映画レビュー(感想・評価)
クストリッツァの作品は動物と老人がかかせない
1998年フランス・ドイツ・旧ユーゴスラビア合作映画。130分。今年31本目の作品。旧ユーゴスラビアの監督エミール・クストリッツァが手がけたコメディ映画。
内容は;
1,うだつの上がらない男は石油列車強盗を企み、新興ヤクザに持ちかける。
2,計画は実行されるがヤクザにはめられ失敗に終わる。
3、ヤクザの親分はそれで父親に貸しを作らせ、実妹を男の一人息子と結婚させようと強要する。
この監督さんほど奇想天外なエンディングを作る人はいないと思います。今作も同様、後半に向けて常識を完全に無視した大どんでん返しがあります。常識からの逸脱では済まされない、神様も怒らせてしまうかのようなこのどんでん返しがこの人の作品の魅力です。
しかし、それが小手先のウケを狙ったものではなく、何故か作品全体と調和している所にただならぬ才能を感じます。
クストリッツァの世界観とはカーニバルである。一つの場に偶然にも集った人々がくり成すドタバタ喜劇、はたまたどんちゃん騒ぎ。そこには老若男女だけではなく様々な動物たちも混じって、全編でお祭りをしているかのようにドラマは進行していきます。
そんなクストリッツァはさしずめこの世界を操るピエロのようなものだと思います。そこでは生が死に、死が生に、対極的な事象をいとも簡単に反転させて不可能を可能にさせてしまう。
乱暴なことをする監督さんなのですが、そこには観る人に寄り添う心意気があります。なぜなら、そんな作品を観ててもこちらは憤慨することもなければ、退屈になることもないのです。
奇才という名をほしいままにしているクストリッツァ監督は、深いレベルから世界を描ける人なのだ。だからこそ、彼は映画をつくるにあたって観客のために「笑い」という要素が必要だったのでしょう、と勝手に想像します。
本作全体の感想としては後半やや盛り込みすぎた感がして、冗長に感じられました。
いずれにせよ、素晴らしい監督さんです。