黒いオルフェ

劇場公開日:

解説

リオのカーニバルを背景にギリシャ神話のオルフェとユリディスの愛の現代化を試みたもの。監督は「濁流(1957)」のマルセル・カミュ。その第二作。ブラジルの詩人ヴィニシウス・デ・モラエスの戯曲からジャック・ヴィオが脚本を書き、カミュとビオが脚色・台詞を書いた。撮影は「ひと夏の情事」のジャン・ブルゴワン。音楽はアントニオ・カルロス・ジョビンとルイス・ボンファの作曲。出演者はほとんど一般市民から選ばれ、ブレノ・メロ、マルペッサ・ドーン、ルールディス・デ・オリヴェイラ、レア・ガルシア、アデマール・ダ・シルバら。製作サッシャ・ゴルディーヌ。五九年カンヌ映画祭グランプリ、アカデミー最優秀外国映画賞、ゴールデン・グローブ賞を受けた。

1959年製作/フランス
原題または英題:Orfeu Negro
配給:東和
劇場公開日:1960年7月7日

あらすじ

カーニバルを明日にひかえたリオ・デ・ジャネイロにやってきた黒人娘ユリディス(マルペッサ・ドーン)は、市電の運転手である黒人青年オルフェ(ブレノ・メロ)の電車にのった。彼女は、自分を追う謎の男を避けて、田舎から従姉セラフィーナを尋ねてきたのである。電車が終点について仕事を終ったオルフェは、婚約者ミラとともに街に行き、質屋からギターをうけ出した。オルフェの歌とギターは、村の子供たちの敬畏の的だった。丘の従姉の家についたユリディスは、隣りからきこえる美しい歌声にさそわれテラスに出た。こうして、オルフェとユリディスは再会し、愛しあった。夜、明日のカーニバルの練習であるサンバの群舞に二人は酔った。すると、死の仮面をつけた例の男が現れ、ユリディスを追った。失神したユリディスを救ったオルフェは、彼女を自分の部屋のベッドに横たえた。--カーニバルの当日、ユリディスは従姉の仮装を借りてオルフェの指揮する熱狂的な踊りの輪の中に入った。夜になった頃、ミラがそんなユリディスに気づいて、彼女につかみかかった。逃れるユリディスを、死の仮面の男が追っていた。必死に市電の車庫に逃げこんだが、天井においつめられた。ユリディスの手が高圧線にかかった時、かけつけたオルフェが車庫内を明るくしようと電気スイッチを押した。ユリディスは死んだ。死んだ彼女を求めてオルフェは深夜の街を、病院から警察へとさまよった。警察の小使いに連れられて、祈祷所でオルフェはユリディスの呼び声を聞いた。その方をふりむいてしまった彼は、霊媒の老婆を見た。ユリディスの死体は死体置場にあった。夜が明けようとしていた。オルフェは死体を抱いて丘に帰った。嫉妬に狂ったミラが小屋に放火していた。彼女の投げた石でオルフェはユリディスを抱いたまま断崖から落ちた。二人の死体は重なった。彼のギターを鳴らしながら、黒人の子供たちは日の出を迎えた。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第32回 アカデミー賞(1960年)

受賞

外国語映画賞  
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映画レビュー

5.0ユリディスの余韻と残像がもたらす切なさ

2025年2月10日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

笑える

悲しい

怖い

1959(日本は1960)年公開。フランス・ブラジル・イタリア映画。

【監督】:マルセル・カミュ
【脚本】:マルセル・カミュ、ジャック・ヴィオ
【原作】:ヴィニシウス・ヂ・モライス〜戯曲『オルフェウ・ダ・コンセイサゥン』

主な配役
【オルフェ】:ブレノ・メロ
【ユリディス】:マルペッサ・ドーン
【ミラ】:ルールデス・デ・オリベイラ

1.ジャンルは何?

Wikipedia日本語版は、「恋愛映画」という。
Wikipedia英語版は、「ロマンチック悲劇(直訳)」だ。

わたしは、「ファンタジー映画」として捉えている。

試写会に招待された原作者が、
「これは私の作品ではない 」
と語ったらしい。面白いエピソードだ。

それでも、パルム・ドールとアカデミー賞の外国語映画賞を勝ち取った。

勝手な想像だが、本作を高く評価する人と、真逆に評価する人がいるに違いない。
私は前者だが、全くつまらないと感じる人も多数いることは容易に想像がつく。

ジャンル不明だからだと思う。

◆単なる悲恋の物語?
◆リオのカーニバルのPV?
◆ギリシャ神話へのオマージュ?
◆ボサノヴァの魅力を広く知らしめた映画?

いずれも間違ってはおらず、
私がこの作品を何度も繰り返し観たくなるのは、
最初から最後まで、「切なさ」を感じ続けるからだと思う。

2.「切なさ」の正体

「切なさ」の正体は何度観てもハッキリとはわからない。
◆リオのカーニバルの熱狂
◆リオの雑踏
◆オルフェのお気楽ぶり
◆ミラの嫉妬丸出しぶり
どれも、「切なさ」とは、ほど遠い。

ただハッキリしているのは、
アメリカン―フレンチのマルペッサ・ドーンが演じたユリディスのピカイチの存在感だ。

テレビや映画の仕事の傍ら、ナイトクラブで歌手やダンサーとして働いていた彼女は、そこで監督のマルセル・カミュと知り合い、本作のヒロインに抜擢された。
※余談だが、マルセル・カミュとは結婚し、離婚した。

公開当時25歳、監督が魅入られ発掘した才能がオーラを放っているのか、
観客であるはずのわたしは、
理不尽な運命を背負ったユリディスを憐れみ、
そして、作中のオルフェと同じように、
ユリディスを探し続け、
ラストまで、ずっとユリディスの余韻と残像に浸っていることに気づく。

そしてオルフェと同じ道をたどるのだ。
(もちろん、脳内でww)

3.まとめ

撮影技術に特徴があるわけではなく、
ストーリーに取り立てて工夫もなく、
電車や崖から転落するシーンは笑えるくらいに稚拙だ。
だから、「なんでこれがパルム・ドールとれるんや」という人がいてもまったく驚かない。

私の周囲も本作を高く評価する人は少ない。

思うに、

◆ユリディスを探し続けるオルフェに感情移入してしまう人、
◆マルセル・カミュ監督と同様にユリディスの不思議な魅力にやられた人

だけが本作の価値を認めるのではなかろうか?

☆5.0笑

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Haihai

3.0理解及ばず

2023年3月16日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

難しい

元になっているギリシャ神話を知らないので、正直観ていて(なんで?)という疑問が出た。
元を知ってればもっと理解が深く及んだ…のでしょうか…。

作中に登場する歌の良さと、狂乱のカーニバルと裏腹に悲劇へ進んでいく対比が美しい。
光が強いほど影も濃い。

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こまめぞう

3.0コルコバードとポン・ヂ・アスーカルに挟まれた岡がロケ地の様だ

2022年9月11日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
ネタバレ! クリックして本文を読む
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共感した! 2件)
アンドロイド爺さん♥️

4.0名曲揃い

2020年5月2日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 ストーリーはどうでもよくなってくるほどの音楽の美しさ。思わずギターを取り出して弾きたくなってしまう。オルフェが死んでも次のオルフェが誕生するという、ブラジルの庶民の太陽であるかのように・・・リオのカーニバルも素敵だが、ラストシーンの子供たちの歌とダンスとギターが素晴らしい!「オルフェのサンバ」

 フランス語だったけど ポルトガル版もあるの?

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kossy